【杉村富生の短期相場観測】 ─良い経済指標が悪い株価材料になる現象?
「良い経済指標が悪い株価材料になる現象?」
●壮大な上昇トレンド(潮流)を見落とすな!
欧米市場は「Good news is bad news」(良い経済指標は利下げのタイミングを遅らせ、結果的に株価には悪い材料になる)の状態が続いている。ECB(欧州中央銀行)は6月6日に定例理事会を開催する。ラガルド総裁は利下げに前向きだが、「6月開始、年内3回のコンセンサス」の確率は低下気味である。
ヨーロッパは明らかに、景気後退局面に入っている。3月のスイス、5月のスウェーデンの利下げは不動産不況に配慮したものだ。ECBが慎重なのは賃金上昇圧力が止まらないことによる。ドイツ、フランス、イギリス、オランダなど株式市場は軒並み高だが、金融緩和を先食いしている面があろう。
アメリカはどうか。やはり、労働市場の強さ、活発な企業活動があって、FRB(米連邦準備制度理事会)は「利下げを急がない」との見方が高まっている。10年物国債利回りは4.479%に上昇した。5月23日のNYダウは605ドル(-1.53%)安の急落だ。エヌビディア<NVDA>効果は限定的だった、といえる。
半面、23日の東京市場ではエヌビディアの好決算、株式分割(6月に1対10)を好感、レーザーテック <6920> [東証P]、ディスコ <6146> [東証P]、ソシオネクスト <6526> [東証P]、東京エレクトロン <8035> [東証P]、TOWA <6315> [東証P]など半導体関連株が軒並み高となった。フィーバーである。
この日の日経平均株価は486円(+1.26%)高だった。しかし、TOPIXの上昇率は+0.64%にとどまっていたし、新高値銘柄が108だったのに対し、新安値銘柄が294あった(全市場ベース)。全面高ではない。いや、日経平均株価採用の値がさ株だけが乱舞した、ということだ。こんな状態は持続性に欠ける。
●セオリーに従って、逆行高銘柄を攻める!
実際、24日の東京市場はショック安並みの急落に見舞われた。腰が弱い。しかし、これはここ数カ月ずっとそうだ。欧米は基調的に金融緩和傾向である。日本は金融引き締めに動いている。この違いは大きい。国際マネーは欧米市場に向かっている。ただ、再三指摘しているように、壮大な上昇トレンド(潮流)を見落としてはいけない、と思う。
すなわち、新東西冷戦構造(フレンド・ショアリングの流れ)、AI(人工知能)を核とした新産業革命の進展を背景とする日本株の復活劇である。企業経営者の意識は変わった。国民のリスク資産シフトが始まっている。いよいよ、個人金融資産のうち、53%を占める現金・預金が動き出すのだ。アメリカは個人金融資産の56%が株式・投信となっている。
物色面では逆行高の人工知覚技術を搭載した自動搬送ロボット開発のKudan <4425> [東証G]、業績が立ち直ってきた資生堂 <4911> [東証P]、値動き抜群の北海道電力 <9509> [東証P]、ダイヘン <6622> [東証P]、三越伊勢丹ホールディングス <3099> [東証P]、イーソル <4420> [東証S]などが狙い目となろう。
このほか、アクティビスト(物言う株主)が関心を示している小林製薬 <4967> [東証P]、トランス・コスモス <9715> [東証P]は思惑人気が盛り上がるだろう。さらに、YE DIGITAL <2354> [東証S]は倉庫自動化システムを開発、豊田自動織機 <6201> [東証P]と協業している。ペプチドリーム <4587> [東証P]は出直り態勢にある。
FIG <4392> [東証P]は物流、タクシー業界向けの無線・管理システム(クラウドサービス)を得意とする。他に、大型ドローン、搬送ロボットを手掛けている。搬送ロボットは1号機をトヨタ自動車 <7203> [東証P]に納入済み。株価は4月23日の406円を高値に調整中だ。5月24日には323円の安値があった。PERは9倍台と出遅れている。
2024年5月24日 記
株探ニュース