SI Research Memo(1):需要旺盛なERP事業をけん引役に、2026年2月期以降は成長軌道に復帰する見通し
■要約
システムインテグレータ<3826>は独立系のソフトウェア開発会社で、「時間を奪うのではなく、時間を与えるソフトウェアを創り続ける」をコーポレート・スローガンに掲げ、企業の生産性向上に寄与するソフトウェアの開発・販売を行っている。データベース開発支援ツール「SI Object Browser」や統合型プロジェクト管理ツール「SI Object Browser PM(以下、OBPM Neo)」などのObject Browser事業のほか、ERP事業、AI事業などを展開している。2024年1月にE-Commerce事業の分割によって新設した(株)DGコマースの株式の60.0%を売却し、持分法適用関連会社としている。
1. 2024年2月期の業績概要
2024年2月期の業績は、売上高で前期比7.8%増の4,835百万円、営業利益で同19.3%減の328百万円となった。売上高はE-Commerce事業の減収分をERP事業やObject Browser事業の増収でカバーし、2期ぶりに過去最高を更新した。一方、営業利益及び経常利益はE-Commerce事業の減益に加えて、人件費や研究開発費の増加もあって2期連続の減益となった。なお、当期純利益はE-Commerce事業の合弁会社化に伴う関係会社株式売却益868百万円を特別利益として計上したことにより同237.2%増の944百万円となり、5期ぶりに過去最高を更新した。期末従業員数は216名と前期末から17名減少したが、E-Commerce事業の合弁会社化に伴い32名が転籍したためで、同要因を除けば15名増とおおむね計画どおりの増員となった。
2. 2025年2月期の業績見通し
2025年2月期の業績は、売上高で前期比6.8%減の4,508百万円、営業利益で同51.3%減の160百万円と減収減益を見込む。既存事業ベースでは売上高で同9.4%増、営業利益で同2.5%増と増収増益になる見通しだ。ERP事業の体制強化を目的とした大阪支社の増床及び福岡支社の移転増床による関連費用約60百万円を計上するほか、新規事業などの研究開発費も約120百万円と前期から67百万円積み増すなど成長投資を積極的に実施するが増収効果で吸収する。ERP事業では新たにSAP<SAP>が提供する「SAP S/4HANA(R) Cloud Public Edition(以下、SAP S/4HANA)」の導入支援を2024年4月より開始した。SAPは大企業向けERP製品でトップシェアを持つ。現在は既存システムから「SAP S/4HANA」への移行案件が目白押しとなっており、こうした需要を取り込んでいく。当初は二次請けからスタートし、認定技術者の採用・育成を国内及びベトナムの開発子会社で進め、3年後に売上高5億円を目指す。なお、2025年2月期から連結決算を開始する予定で、ベトナム子会社の利益とDGコマースの持分法投資利益を計上することになる。
3. 2年経営計画について
同社は2年経営計画を発表しており、2026年2月期の業績目標として売上高5,000百万円、営業利益336百万円と2024年2月期を上回る水準を目指すことを明らかにした。基本方針として、ERPやAI、開発支援ツール領域にリソースを集中し、各事業で継続的な売上成長と収益性向上を図るとともに、将来を担う新規事業の育成に取り組む。目標達成のため、2024年3月より組織体制を従来の事業別から機能別(開発と営業に分離)に再編成したほか、人事評価についても業務実績やコンピテンシーを重視する評価体系に変更し、モチベーションアップを図る。これら取り組みの成果については、2025年2月期の後半から顕在化するものと期待される。株主還元方針としては、TSR(株主総利回り:株価上昇+配当金)の向上を目指しており、配当金は配当性向30%を基準に実施する意向だ。2025年2月期の1株当たり配当金は設立30期目の記念配当2.0円を含めて5.0円(配当性向50.1%)を予定している。また、株主優待として毎年2月末及び8月末時点の株主名簿に同一株主番号で記載のある株主(200株以上保有)を対象に、減農薬・減化学肥料で栽培された新潟産の新米コシヒカリを贈呈している。
■Key Points
・2024年2月期はERP事業が好調に推移し、売上高は2期ぶりに過去最高を更新
・2025年2月期はE-Commerce事業を除いた既存事業ベースで増収増益見込み
・ERP、AI、開発支援ツールにリソースを集中、新規事業の育成にも取り組みながら持続的な売上成長と収益性向上を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ