オーケストラ Research Memo(4):2023年12月期は一過性費用も影響して減益
■業績動向
1. 2023年12月期連結業績の概要
Orchestra Holdings<6533>の2023年12月期の連結業績は、売上高が2022年12月期比(以下同)16.7%増の12,109百万円、営業利益が43.3%減の765百万円、経常利益が44.5%減の776百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が44.5%減の474百万円、EBITDAは24.1%減の1,212百万円と、各利益は前回予想(2023年8月14日付で下方修正)を下回る減益で着地した。売上面はM&A(2022年12月期中に子会社化した3社の通期連結、及び2023年12月期中に子会社化した4社の新規連結)も寄与して前回予想を上回る大幅増収となり、売上総利益も過去最高だったが、利益面は積極的な戦略投資(M&A、新規事業投資、人材投資など)に伴う費用の増加、のれん償却費の増加、DX事業におけるヴェスのPMIに係る一過性費用(50百万円)の計上、DM事業における一部主要顧客の広告予算縮小などが影響した。期末の連結役職員数は165名増加の955名となった。売上総利益率は48.5%で0.7ポイント低下、販管費比率は42.2%で6.0ポイント上昇、EBITDAマージンは10.0%で5.4ポイント低下した。
2. セグメント別の動向
(1) DX事業
DX事業は売上高が15.6%増の5,556百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が16.2%減の267百万円だった。新規連結も寄与して増収となったが、戦略投資やヴェスのPMIに係る一過性費用の計上などにより減益となった。なお過去2期の四半期別の営業利益を見ると、2022年12月期第1四半期が204百万円、第2四半期が67百万円、第3四半期が1百万円の損失、第4四半期が48百万円、2023年12月期第1四半期が60百万円、第2四半期が61百万円、第3四半期が92百万円、第4四半期が53百万円(PMI関連の一過性費用を控除した実態事業利益は約1億円)だった。Sharing Innovationsにおける構造改革やヴェスとのクロスセルなどの効果で回復基調となっている。
(2) DM事業
DM事業は売上高が19.3%増の5,603百万円、セグメント利益が8.5%減の1,965百万円だった。インターネット広告市場の拡大や新規連結効果などで増収となったが、利益面は戦略投資や一部主要顧客の広告予算縮小などの影響で減益となった。なお過去2期の四半期別の営業利益を見ると、2022年12月期第1四半期が572百万円、第2四半期が484百万円、第3四半期が530百万円、第4四半期が559百万円、2023年12月期第1四半期が540百万円、第2四半期が479百万円、第3四半期が396百万円、第4四半期が548百万円だった。主に2023年12月期第3四半期に一部主要顧客の広告予算縮小の影響を受けたが、第4四半期には新規顧客獲得体制強化などにより前年同期並みに回復した。
(3) その他
その他は売上高が8.3%増の1,108百万円、セグメント利益が85百万円の損失(2022年12月期は69百万円の損失)だった。積極的な戦略投資を継続しているため損失拡大の形だが、売上面は「スキルナビ」を中心に成長を継続している。なお「スキルナビ」への戦略投資額は約236百万円だった。
3. 財務の状況
財務面で見ると、2023年12月期末の資産合計は2022年12月期末比1,302百万円増加して12,712百万円、負債合計は1,001百万円増加して6,676百万円、純資産は301百万円増加して6,036百万円となった。主に積極的なM&Aにより、無形固定資産でのれんが1,602百万円増加して3,566百万円、負債で有利子負債残高(長短借入金合計)が1,300百万円増加して3,008百万円となった。また当期純利益の積み上げにより純資産で利益剰余金が385百万円増加して3,276百万円となった。この結果、自己資本比率は2.3ポイント低下して43.1%となった。有利子負債残高が増加して自己資本比率が若干低下したが特に懸念材料となる水準ではなく、同社の積極的なM&Aを含めた成長戦略の過程であることを勘案すれば、財務の健全性は維持されていると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《HH》
提供:フィスコ