明日の株式相場に向けて=M&A関連の静かな炎を追う
きょう(27日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比5円高の3万9239円と小幅ながら3日続伸。前日の欧米株市場が冴えない動きとなり、34年ぶりの青空圏を満喫する日経平均もきょうは立ち止まってよい場面だったが、個別株物色意欲は旺盛で、結局わずかながら前日終値を上回り連日最高値を塗り替える形となっている。 半導体関連は途中売りに押されるも下値ではセーフティネットのように買い注文が這わされており、きょうも下落した後に踵(きびす)を返し上値指向に転じる銘柄が多数を占めた。
朝方取引開始前に発表された1月の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合指数が前年同月比で2.0%の上昇。伸び率は鈍化傾向を続けこれで3カ月連続の縮小となったが、事前コンセンサスは1.8%もしくは1.9%というところで、それよりは上振れる形となった。この発表を受けて市場関係者の間では「足もとで4月の日銀金融政策決定会合でのマイナス金利解除の確度が高まった。サービス価格の伸び率も鈍化しているとはいえ、粘着質なインフレへの警戒感は根強い」という声が聞かれる。
ただし、問題はマイナス金利解除後の日銀のスタンスである。「マイナス金利は異常な状態であることには違いなく、日銀はとりあえずこれを何とかしたいという気持ちが強いようだ。しかし、解除後は段階的な利上げを実施することに慎重な姿勢であることに変わりはない」(生保系エコノミスト)という。ちなみに、国内GDPは昨年7~9月期、10~12月期と2四半期連続のマイナス成長であり、テクニカル的にはリセッション(景気後退)局面にある。しかも、「今年1~3月期のGDPもマイナス成長が続く可能性が高そう」(同)という見方が示されている。マイナス金利は解除しても、景気が足もと大きくふらついている以上、引き締め政策への転換は現実問題かなり困難を伴う。したがって株式市場にとっても金利上昇を過度に警戒する必要はないということになる。
もっとも、きょうはこの全国CPI発表を受けて、微妙に相場の波紋が変わった。前場はハイテク系の銘柄が利食われる展開。一方、TOPIXの方は前場から高く、後場も概ね前日終値を上回る水準で推移。これはリターンリバーサルを狙ったバリューシフトの動きで、銀行や鉄鋼などいわゆる低PBR銘柄に資金を振り向ける動きが活発化したためだ。一方、半導体関連に利食い急ぎの動きが出ているわけではないものの、国内金利上昇への警戒ムードも若干は漂う。これについては1月の全国CPIが予想より強かったというよりは、今週29日(日本時間夜)に発表される1月の米PCEデフレーターを意識したものかもしれない。「1月のPCEデフレーターも強めの数字が出る可能性が高い」(前出の生保系エコノミスト)と指摘され、その場合は米金利上昇につられる形で国内10年債利回りが水準を切り上げるというケースも考えられる。一部資金をバリューシフトする口実にはなる。
おそらく半導体やAI関連の物色は波状的かつ中長期タームで続く。特に後者は出遅れ株の宝庫で、折に触れ急動意する銘柄が今後も相次ぐ公算が大きい。ただ、29日の米PCEデフレーターの開示を前に割安株へのリターンリバーサルへの対応もある程度は準備しておく必要はある。きょうは銀行や鉄鋼株などが買われたのはその前兆でもあるが、ここは投資指標面から割安株の有力な鉱脈となっている自動車部品セクターに着目。フタバ産業<7241>の1000円トビ台や、ジーテクト<5970>の2000円トビ台は仕掛けどころに見える。更に、自動車向け切削油剤などを手掛けるユシロ化学工業<5013>の強力な上昇トレンドにも目を奪われる。依然PER10倍未満でPBRは0.7倍台に過ぎない。
このほか、今のマーケットで静かな人気テーマとなっているのがM&A関連だ。親子上場の解消や中小企業において承継問題が多方面で取り沙汰されるなど、ひとつの社会現象といってよく、M&A仲介企業の商機もかつてなく高まっている。関連銘柄は押しなべて業績好調だが、そのなかチャート妙味のある青山財産ネットワークス<8929>、新値圏を走るストライク<6196>などをマークしてみたい。
あすのスケジュールでは、12月の景気動向指数の改定値が発表されるほか、東証グロース市場(及び名証ネクスト市場)に光フードサービス<138A>、東証グロース市場にCocolive<137A>が新規上場する。海外では1月の豪消費者物価指数(CPI)、ニュージーランド中銀の政策金利発表、米10~12月期GDPの改定値など。(銀)
出所:MINKABU PRESS
朝方取引開始前に発表された1月の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合指数が前年同月比で2.0%の上昇。伸び率は鈍化傾向を続けこれで3カ月連続の縮小となったが、事前コンセンサスは1.8%もしくは1.9%というところで、それよりは上振れる形となった。この発表を受けて市場関係者の間では「足もとで4月の日銀金融政策決定会合でのマイナス金利解除の確度が高まった。サービス価格の伸び率も鈍化しているとはいえ、粘着質なインフレへの警戒感は根強い」という声が聞かれる。
ただし、問題はマイナス金利解除後の日銀のスタンスである。「マイナス金利は異常な状態であることには違いなく、日銀はとりあえずこれを何とかしたいという気持ちが強いようだ。しかし、解除後は段階的な利上げを実施することに慎重な姿勢であることに変わりはない」(生保系エコノミスト)という。ちなみに、国内GDPは昨年7~9月期、10~12月期と2四半期連続のマイナス成長であり、テクニカル的にはリセッション(景気後退)局面にある。しかも、「今年1~3月期のGDPもマイナス成長が続く可能性が高そう」(同)という見方が示されている。マイナス金利は解除しても、景気が足もと大きくふらついている以上、引き締め政策への転換は現実問題かなり困難を伴う。したがって株式市場にとっても金利上昇を過度に警戒する必要はないということになる。
もっとも、きょうはこの全国CPI発表を受けて、微妙に相場の波紋が変わった。前場はハイテク系の銘柄が利食われる展開。一方、TOPIXの方は前場から高く、後場も概ね前日終値を上回る水準で推移。これはリターンリバーサルを狙ったバリューシフトの動きで、銀行や鉄鋼などいわゆる低PBR銘柄に資金を振り向ける動きが活発化したためだ。一方、半導体関連に利食い急ぎの動きが出ているわけではないものの、国内金利上昇への警戒ムードも若干は漂う。これについては1月の全国CPIが予想より強かったというよりは、今週29日(日本時間夜)に発表される1月の米PCEデフレーターを意識したものかもしれない。「1月のPCEデフレーターも強めの数字が出る可能性が高い」(前出の生保系エコノミスト)と指摘され、その場合は米金利上昇につられる形で国内10年債利回りが水準を切り上げるというケースも考えられる。一部資金をバリューシフトする口実にはなる。
おそらく半導体やAI関連の物色は波状的かつ中長期タームで続く。特に後者は出遅れ株の宝庫で、折に触れ急動意する銘柄が今後も相次ぐ公算が大きい。ただ、29日の米PCEデフレーターの開示を前に割安株へのリターンリバーサルへの対応もある程度は準備しておく必要はある。きょうは銀行や鉄鋼株などが買われたのはその前兆でもあるが、ここは投資指標面から割安株の有力な鉱脈となっている自動車部品セクターに着目。フタバ産業<7241>の1000円トビ台や、ジーテクト<5970>の2000円トビ台は仕掛けどころに見える。更に、自動車向け切削油剤などを手掛けるユシロ化学工業<5013>の強力な上昇トレンドにも目を奪われる。依然PER10倍未満でPBRは0.7倍台に過ぎない。
このほか、今のマーケットで静かな人気テーマとなっているのがM&A関連だ。親子上場の解消や中小企業において承継問題が多方面で取り沙汰されるなど、ひとつの社会現象といってよく、M&A仲介企業の商機もかつてなく高まっている。関連銘柄は押しなべて業績好調だが、そのなかチャート妙味のある青山財産ネットワークス<8929>、新値圏を走るストライク<6196>などをマークしてみたい。
あすのスケジュールでは、12月の景気動向指数の改定値が発表されるほか、東証グロース市場(及び名証ネクスト市場)に光フードサービス<138A>、東証グロース市場にCocolive<137A>が新規上場する。海外では1月の豪消費者物価指数(CPI)、ニュージーランド中銀の政策金利発表、米10~12月期GDPの改定値など。(銀)
出所:MINKABU PRESS