明日の株式相場に向けて=SQ前の仕掛けが炸裂
きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比743円高の3万6863円と急反騰をみせた。唖然とするほど強い相場といってよい。材料不在とはいわないが、ほとんど理屈では説明のつかない強力な上昇波が形成されている。この日の日経平均は先物主導で上げ足を強め、つむじ風に巻かれるように3万6000円台後半へと一気に水準を切り上げた。上げ幅は一時800円を超え、手を伸ばせば3万7000円台に届く位置まで急浮上、これには複数のマーケット関係者からも驚きの声が上がっていた。
日経平均に上昇加速スイッチが入ったのは前場の後半で、内田日銀副総裁の奈良県金融経済懇談会での講演内容が材料視されたという解釈がなされていた。マイナス金利解除にマーケットの関心が向かうなか、内田氏は、きょうの講演で解除後は利上げに慎重なスタンスで緩和的な金融環境を維持していくべきという主旨の発言を行った。これが、株式市場にとって心地良く響いたという見方だ。いうまでもなく、マイナス金利解除イコール金融引き締めスタンスへの転換を意味するものではない。しかし、マーケット側はそれを薄々分かってはいても、当局関係者からその趣旨の情報発信があるかないかでは大きな違いがある。
したがって今回の内田発言がポジティブ視されるのは十分に理解できるが、誰もこの日の奈良県で行われた金融懇談会を事前に重要スケジュールとして認知しておらず、これが強烈な先物買いにつながるインパクトはない。むしろ取ってつけたような後講釈に近い要素があるといってもよい。ポイントは、あすがオプションSQ算出日に当たっていること。つまり、材料云々ではなく先物で仕掛けて日経平均を担ぎ上げた勢力がいるという株式需給面の現実のみを理解しておくところだ。
いずれにせよ、きょうの相場でショートポジションを積み上げた向きはまたもや全面撤退を余儀なくされる格好となった。米国では商業用不動産市況の悪化が顕著で、ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ<NYCB>の株価は崩落、地銀株にはアンタッチャブルなムードが蔓延している。ここは売りから入りたくなるのが人情だ。ところが少なくとも今のタイミングではそれは罠で、踏み上げ相場の肥やしとなる。日経平均が800円超の上昇をみせている時でも、個別株に目を向けると値上がり銘柄数を値下がり数が大きく上回っていた。ここにも指数売買のみで押し上げた形跡が如実に残されている。
ただ、繰り返しになるが日経平均がここから仮に2000円上昇して3万8915円の頂点をクリアしたとしても、それは企業のEPSなどから判断してバブルとはいえない。あまりにも上昇ピッチが速いことに警戒感は拭えないが、時間の概念を閉ざした静止画像で株価水準をとらえれば、肯定されない要素はない。したがって、空売りを考えるのはリスクが大きい。もちろん、だからと言って焦って買わなければいけないということではない。考え方としては全体指数を別次元のものとみなす。ここは全体相場に対する強気あるいは弱気という概念から離れて、あくまで個別株に照準を合わせて物色対象を絞り込んでいく方が好結果につながりやすい。日経平均の値動きをノイズというのは憚(はばか)られるが、今だからこそ「森を見ずに木を見る」スタンスで株式市場と対峙することを心掛ければ、個別株への投資も行いやすくなる。
現状は決算発表が佳境に入っていることで、どうしても決算トレードが主流となるため、鉄火場を求めないのであれば「休むも相場」を決め込むのも一法である。テーマ買いの動きとしては半導体を含む生成AI周辺にしばらくは投資マネーが集中しそうだ。今は、決算発表が終わったものから順に対象を絞り込んでいく時間帯にある。
あすは、株価指数オプション2月物の特別清算指数(オプションSQ)の算出日にあたる。このほか、1月のマネーストックが朝方取引開始前に発表されるほか、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札と5年物国債の入札が行われる。午後取引時間中には12月の特定サービス産業動態統計など。国内主要企業の決算発表では東京エレクトロン<8035>、三井物産<8031>、三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、リクルートホールディングス<6098>、ゼンショーホールディングス<7550>、資生堂<4911>などが予定されている。なお、中国市場は春節のため16日まで休場。また、この日は台湾、韓国、インドネシア、ベトナムの各市場も休場となる。香港株市場は午後休場となる。(銀)
出所:MINKABU PRESS
日経平均に上昇加速スイッチが入ったのは前場の後半で、内田日銀副総裁の奈良県金融経済懇談会での講演内容が材料視されたという解釈がなされていた。マイナス金利解除にマーケットの関心が向かうなか、内田氏は、きょうの講演で解除後は利上げに慎重なスタンスで緩和的な金融環境を維持していくべきという主旨の発言を行った。これが、株式市場にとって心地良く響いたという見方だ。いうまでもなく、マイナス金利解除イコール金融引き締めスタンスへの転換を意味するものではない。しかし、マーケット側はそれを薄々分かってはいても、当局関係者からその趣旨の情報発信があるかないかでは大きな違いがある。
したがって今回の内田発言がポジティブ視されるのは十分に理解できるが、誰もこの日の奈良県で行われた金融懇談会を事前に重要スケジュールとして認知しておらず、これが強烈な先物買いにつながるインパクトはない。むしろ取ってつけたような後講釈に近い要素があるといってもよい。ポイントは、あすがオプションSQ算出日に当たっていること。つまり、材料云々ではなく先物で仕掛けて日経平均を担ぎ上げた勢力がいるという株式需給面の現実のみを理解しておくところだ。
いずれにせよ、きょうの相場でショートポジションを積み上げた向きはまたもや全面撤退を余儀なくされる格好となった。米国では商業用不動産市況の悪化が顕著で、ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ<NYCB>の株価は崩落、地銀株にはアンタッチャブルなムードが蔓延している。ここは売りから入りたくなるのが人情だ。ところが少なくとも今のタイミングではそれは罠で、踏み上げ相場の肥やしとなる。日経平均が800円超の上昇をみせている時でも、個別株に目を向けると値上がり銘柄数を値下がり数が大きく上回っていた。ここにも指数売買のみで押し上げた形跡が如実に残されている。
ただ、繰り返しになるが日経平均がここから仮に2000円上昇して3万8915円の頂点をクリアしたとしても、それは企業のEPSなどから判断してバブルとはいえない。あまりにも上昇ピッチが速いことに警戒感は拭えないが、時間の概念を閉ざした静止画像で株価水準をとらえれば、肯定されない要素はない。したがって、空売りを考えるのはリスクが大きい。もちろん、だからと言って焦って買わなければいけないということではない。考え方としては全体指数を別次元のものとみなす。ここは全体相場に対する強気あるいは弱気という概念から離れて、あくまで個別株に照準を合わせて物色対象を絞り込んでいく方が好結果につながりやすい。日経平均の値動きをノイズというのは憚(はばか)られるが、今だからこそ「森を見ずに木を見る」スタンスで株式市場と対峙することを心掛ければ、個別株への投資も行いやすくなる。
現状は決算発表が佳境に入っていることで、どうしても決算トレードが主流となるため、鉄火場を求めないのであれば「休むも相場」を決め込むのも一法である。テーマ買いの動きとしては半導体を含む生成AI周辺にしばらくは投資マネーが集中しそうだ。今は、決算発表が終わったものから順に対象を絞り込んでいく時間帯にある。
あすは、株価指数オプション2月物の特別清算指数(オプションSQ)の算出日にあたる。このほか、1月のマネーストックが朝方取引開始前に発表されるほか、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札と5年物国債の入札が行われる。午後取引時間中には12月の特定サービス産業動態統計など。国内主要企業の決算発表では東京エレクトロン<8035>、三井物産<8031>、三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、リクルートホールディングス<6098>、ゼンショーホールディングス<7550>、資生堂<4911>などが予定されている。なお、中国市場は春節のため16日まで休場。また、この日は台湾、韓国、インドネシア、ベトナムの各市場も休場となる。香港株市場は午後休場となる。(銀)
出所:MINKABU PRESS