Iスペース Research Memo(1):2024年9月期に積極投資を実施、2025年9月期以降の高成長を目指す
■要約
インタースペース<2122>はアフィリエイト広告を中心としたインターネット広告事業と、ママの情報プラットフォーム「ママスタ」を中心としたメディア事業を展開している。また、インドネシアやタイ、マレーシア、ベトナム、シンガポールの東南アジア5ヶ国で子会社や関連会社を通じてアフィリエイトサービスの育成・普及に取り組んでいる。
1. 2023年9月期の業績概要
2023年9月期の連結業績は、売上高で前期比2.3%増の7,284百万円、営業利益で同25.8%減の791百万円と増収減益決算となった。インターネット広告事業は、金融分野、EC分野が低調だったものの人材サービス分野の好調とストアフロントアフィリエイトの成長でカバーし、売上高(社内取引高含む)で同0.9%増と増収を確保した。ただ、販売ミックスの悪化や広告費の増加等により事業利益※は同9.7%減となった。一方、メディア事業は比較・検討型メディアの伸長により売上高(社内取引高含む)で同4.6%増となったものの、収益源である「ママスタ」の広告単価が2023年3月以降、広告プラットフォーマーの表示規制により大きく下落した影響で、事業利益は同34.0%減となった。同社は第3四半期以降、広告表示規制への対策を実施し広告単価の下落に歯止めをかけたものの、引き上げるまでには至らなかったようだ。
※社内共通費用配賦前の利益で、決算短信の事業セグメント利益とは異なる。
2. 2024年9月期の業績見通し
2024年9月期の売上高は前期比5.7%増の7,700百万円、営業利益は同33.1%減の530百万円と増収減益となる見通し。パフォーマンスマーケティング事業(旧インターネット広告事業)、メディア事業ともに増収を見込むが、両事業ともに成長に向けた先行投資を実施することで減益を見込む。パフォーマンスマーケティング事業では、ストアフロントアフィリエイトで2023年10月に提供開始したスマートフォン向けセキュリティ商品「ダレカナブロック」や同年4月に事業譲受したWebサイト改善ツール「賢瓦(けんが)」の拡販に向けた広告費、海外事業拡大に向けた人材投資で242百万円を投下する。一方、メディア事業は広告単価の変動に影響を受けない事業体制を構築すべく、比較・検討型メディアの育成に注力する方針で、メディアコンテンツの拡充を図るための人材投資や売上に連動する変動費の増加で182百万円の費用増加を見込んでいる。一方、「ママスタ」の広告単価については対策実施の効果により上向きつつあるようで、下期に向けて収益も回復に向かう見通しである。
3. 中期経営計画
同社は3ヶ年の中期経営計画(2024年9月期~2026年9月期)を発表した。最終年度となる2026年9月期の業績目標として、売上高85億円、営業利益15億円、ROE15%以上を掲げた。また、配当方針についても継続的かつ安定的な株主還元を実施すべく、DOE(株主資本配当率)で3%以上を目安にする方針を新たに発表した。同方針に基づき、2024年9月期の1株当たり配当金は前期比5.0円増配の30.0円(DOE3.2%)とする予定だ。同社は中期ビジョンとして「Global市場に向け、パフォーマンスマーケティング領域でAsiaトップのポジションを目指す」ことを掲げ、既存事業の安定化と成長事業への投資を進める考えだ。パフォーマンスマーケティング事業ではストアフロントアフィリエイトにおけるストック収益の積み上げを図りながら、高成長が期待できる東南アジアで人材投資を行い、収益化を実現していく。メディア事業では、学習塾ポータルサイト「塾シル」の収益化に向けて、オーガニック(自然検索)による集客を図るべくリソースを投下していくほか、M&Aの活用による成長も視野に入れている。この3年間でこれら成長事業の収益基盤を構築し、2027年9月期以降のさらなる飛躍につなげていく考えだ。ここ数年は同社の企業価値も伸び悩んでいたが、これら投資の成果が顕在化してくれば成長期待が高まり、企業価値も向上していくものと期待される。
■Key Points
・2023年9月期はストアフロントアフィリエイトと比較・検討型メディアは順調に成長
・2024年9月期は成長事業への先行投資を実施、半期ベースでは下期から2ケタ増収増益に転じる見通し
・2026年9月期に売上高85億円、営業利益15億円、ROE15%以上を目指す中期経営計画を発表
・DOE3%以上を目安に継続かつ安定的に配当を実施する方針を発表
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SI》
提供:フィスコ