ウェーブロックHD Research Memo(1):新規事業育成とアライアンス戦略によるシナジー創出で収益成長を目指す
■要約
ウェーブロックホールディングス<7940>は、防虫網や農業用、建設資材用各種シート等のマテリアルソリューション事業と、金属調加飾フィルムを中心としたアドバンストテクノロジー事業を展開する樹脂加工メーカーである。環境関連ビジネスの取り組みを強化すべく、地中熱ビジネスの育成にも取り組んでいる。2023年6月には既存事業の基盤強化を目的に、同業のアァルピィ東プラ(株)(以下、RP東プラ)の株式の20.32%を取得し、持分法適用関連会社とした。
1. 2024年3月期第2四半期累計業績の概要
2024年3月期第2四半期累計(2023年4月~9月)の連結業績は、売上高で前年同期比3.0%増の11,774百万円、営業利益で同6.2%増の476百万円となった。売上高は、注力製品である金属調加飾フィルムの拡大が続いたほか、原材料価格上昇に伴う売価転嫁が進んだこと、液晶テレビモニター導光板の仕入販売が増加したことなどにより増収となった。営業利益は、金属調加飾フィルムの増産投資に伴う減価償却費の増加や新工場立ち上げロスがあったものの、値上げ効果等によるマテリアルソリューション事業の収益性改善により増益となった。
2. 2024年3月期の業績見通し
2024年3月期の連結業績は、売上高で前期比1.0%増の22,800百万円、営業利益で同15.5%増の400百万円となる見通し。売上高はマテリアルソリューション事業が同3.2%減と落ち込むものの、金属調加飾フィルムや仕入販売品の増加によりアドバンストテクノロジー事業が同16.6%増と伸長することで増収を確保する。営業利益は減価償却負担増によりアドバンストテクノロジー事業が減益となるものの、マテリアルソリューション事業の収益改善効果により4期ぶりの増益に転じる見通しだ。なお、期初計画で700百万円の売上を見込んでいた地中熱ビジネスについては、リソース不足により130百万円に計画を見直した。2024年3月期は小規模案件を積み重ねることでノウハウを蓄積し、2025年3月期以降に中~大規模案件を手掛ける方針だ。
3. 今後の成長戦略
マテリアルソリューション事業では、収益基盤の強化施策として生産性向上を目的とした生産体制の再構築や流通チャネルの最適化による販売効率の向上に加えて、競合優位性があり差別化が可能な製品・サービスを育成することによって、原材料価格の動向に左右されにくい強固な事業基盤の構築を目指している。また、新規分野として環境関連ビジネス(地中熱ビジネス、環境対応素材製品)の育成と海外市場の開拓を進める方針で、これらを早期に実現するための手段としてアライアンスやM&A戦略なども積極的に推進する。一方、アドバンストテクノロジー事業については注力製品である金属調加飾フィルムで技術的競合優位性を確保するための開発投資を継続しつつ、多様な顧客ニーズに対する提案力の強化と小ロット多品種生産でも収益力を維持・向上していくための生産体制を構築することで高成長を目指す。金属調加飾フィルムは、電波透過性並びに光透過性、意匠性の高さに加えて、環境にも優しいという長所を持ち、自動車業界では環境負荷の高いメッキ加工品の代替として採用するケースが広がりつつあり、同社にとって事業拡大の好機となる。積極投資に伴う減価償却費負担はあるものの、短中期的には利益ベースでも成長軌道に乗るものと期待される。高透明多層フィルムなども含めて同事業の売上高は2023年3月期実績の45億円から数年後には100億円規模に成長し、業績のけん引役になるものと弊社では予想している。
■Key Points
・2024年3月期第2四半期累計業績はマテリアルソリューション事業の収益改善により増収営業増益に
・2024年3月期業績はインテリア事業売却後、初の営業増益となる見通し
・RP東プラと5つのタスクについて協議を進行中、提携効果を見極め将来的に追加出資も検討
・金属調加飾フィルムは自動車への採用相次ぎ高成長が続く
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SI》
提供:フィスコ