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【特集】脱炭素の救世主、EV普及で需要急拡大の「グリーンアルミ」関連に刮目せよ <株探トップ特集>

EVの車両軽量化に向け需要急拡大が予想されるアルミニウムだが、同時に生産時のCO2排出が問題視される。そこで再生可能エネを活用した「グリーンアルミ」が注目されている。

―車体軽量化でアルミ需要伸びる、再生可能エネ活用の生産を本格推進へ―

 我々の生活に欠かせない素材である「アルミニウム」。1825年にデンマークの物理学者が、アルミニウム工業化への道を開いてからもうすぐ200年が経過する。軽量で耐腐食性に優れるなどの特長を持つアルミは、我々の身の回りに深く浸透しており、特に近年では電気自動車(EV)向けなどに需要が急拡大している。しかし、アルミは製造の際に排出される二酸化炭素(CO2)の削減が課題となっている。その弱点を克服する 再生可能エネルギーにより発電した電力を用いて生産される「グリーンアルミニウム」が市場の関心を集めている。

●重要素材のアルミは生産時のCO2が課題に

 家庭用品や飲料缶、自動車や航空機部品、建築材料、包装資材、電子機器など、私たちの身の回りから目に見えないところまで、多岐にわたって用いられている重要素材の一つがアルミだ。アルミは1900年代半ばから世界的に生産量が爆発的に増加したため、素材界の主力としての地位を確立したのは、多くの人々が思っているよりも意外と新しい。当初は航空機または軍需用途が多かったとされるが、同素材は軽量・丈夫・耐腐食性などの魅力的な特性を多数持っていることから、用途が広がり現在に至る。

 特に、アルミはEVの軽量化などに使われ、今後も需要急拡大が続くと予想されている。その一方、精錬時に大量の電力を使い、CO2排出量は1トン当たりで鉄の生産時の4.5倍あるとも言われている。環境に優しいとされるEV向け需要が増加する一方で、その生産では多くのCO2が排出される側面を持つというわけだ。そこで環境面での持続可能性に焦点を当てたグリーンアルミに近年脚光が当たり始めている。

●日立はグリーンアルミに全面切り替えとの報道も

 グリーンアルミは低炭素アルミとも呼ばれ、水力や太陽光、風力などの再生可能エネルギーによって発電した電力を用いて生産されたアルミのことを指す。また、アルミは優れたリサイクル性もその特徴の一つであり、再生地金を作る場合の電力消費は新地金生産時と比較して30分の1程度とされる。グリーンアルミや再生アルミで需要増に対応していくような仕組みが構築されれば、環境対策がまた一歩、大きな前進を遂げることになる。環境悪化によって引き起こされる異常気象や災害の激甚化が進むなか、将来的には必須となる取り組みといえそうだ。

 国内大手企業の動向をみてみると、例えば今年2月には丸紅 <8002> [東証P]が、英豪資源大手のリオティント<RIO>との持続可能で責任あるアルミ製品を安定的に供給するための戦略的業務提携に基づき、日本の大手輸送機メーカーと初めての販売契約を締結したと発表。11月には日立製作所 <6501> [東証P]は、今年度中に国内でつくる製品に使用する全アルミをCO2の排出量が少ない製法で作られたグリーンアルミに切り替えると報じられている。また、日立は輸入したアルミを国内企業に加工を委託することになるとみられ、新たな需要も期待されそうである。

 以下では、グリーンアルミ関連の銘柄に焦点を当てた。非鉄系企業などが中心になるが、それぞれCO2排出量を削減した製品の製造を積極化させている。

●UACJやレゾナック、洋缶HDなど注目

 神戸製鋼所 <5406> [東証P]~今年1月から、高炉工程におけるCO2排出量を大幅に削減した低CO2高炉鋼材である「Kobenable Steel」と、グリーンアルミ原料を用いたアルミ板材を、日産自動車 <7201> [東証P]の生産車へ順次提供している。

 UACJ <5741> [東証P]~原料としてグリーン電力に由来するアルミ新地金やクローズドループで回収された端材などを利用し、GHG(温室効果ガス)排出量を証明した「UACJ SMARTマスバランス」を提供している。また、日立がグリーンアルミに切り替えることで、同社や神戸鋼などに加工を委託するようだ。

 レゾナック・ホールディングス <4004> [東証P]~1934年に水力発電による電気でアルミの電気精錬に成功している。アルミ合金の棒や塊のような素材製品だけでなく、押出品・鍛造品などのアルミ部材としても製品を販売している。特にパワー半導体用冷却器はハイブリッドカーやEVなどに用いられ、次世代熱マネジメントの中核を担う製品である。

 アーレスティ <5852> [東証P]~軽量でリサイクルしやすいアルミを材料としたアルミダイカストは、燃費・電費向上を目的とした車体軽量化、CO2排出量削減などに貢献する。また、鋼板とダイカストを機械的に接合する技術としてレーザー熱処理技術を開発。これによりCO2排出量は10分の1に低減できるようだ。

 東洋製罐グループホールディングス <5901> [東証P]~UACJなどと共同で世界初のリサイクルアルミ100%使用飲料缶を開発しており、1缶当たりのCO2排出量を60%削減している。また、総額100億円のグリーンボンドを10月に発行し、アルミ飲料缶の軽量化に寄与する設備投資など4プロジェクトに対して資金を用いる。

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