【北浜流一郎のズバリ株先見!】 ─ 手札に加えたい収益力アップの円高メリット株!
「手札に加えたい収益力アップの円高メリット株!」
●市場の動揺は一時的ながら、趨勢はドル安・円高基調へ
「円安をなんとかしろ」
「財務省、日銀は何をしているんだ」
「このままでは円は1ドル=170円台まで下げてしまう。今のうちになんとかしなくては」
「円安で日本が叩き売られている。一刻も早く円安を止めろ」
こんな金切り声が上がっていたのは、11月初め頃のことだ。それからまだ1カ月ほどしか経っていないが、ドル円は一時141円台に急騰。この原稿を書いている時点では143円台半ばの水準だ。
それに対する株式市場の反応は、日経平均株価の大幅下落である。待ちに待ったはずの円高であるのに、歓迎どころか12月7日は587円安、そして8日も550円安と2日で1100円超も下げてしまった。
もちろん、これは日本全体では円高待望であったとしても、株式市場では円安歓迎となっているためだ。その背景にあるのは、 自動車や設備投資関連など製造業のほとんどがこれまで恩恵に浴していた巨額の円安メリットを享受できなくなるからだ。
大企業を中心に賃上げが実現しつつあるのも、その原資の大部分は円安メリットによる収益となる。この点を考えると、ここにきての円高は株に投資する立場からは、残念ながら売り要因となってしまう。
しかし、急激な値動きは通常、為替であっても長続きしない。今回の円急騰と株式市場の急落は、植田日銀総裁が7日の国会答弁において金融政策の運営に関して「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言したことによるもの。金融政策を語る場合には通常使われることのない「チャレンジングな状況」という言葉にインパクトがあったうえ、マイナス金利政策の解除にポジィティブな姿勢であることを匂わせるものであったため、為替市場、株式市場ともに大きく反応したのだ。
前述したように動きが極端だったことを考えると、目先の円相場は修正安も想定される。ここは慌てて自動車株などを売ったりする必要はないが、一方で円高メリット株への投資も考えておきたい。
このまま円がどんどん上がってしまうことは考えにくいが、今後のドル円は円高基調で推移する可能性が高いと見られるからだ。
米国の金利上昇は2024年前半にはピークアウトする可能性が高く、植田日銀総裁の発言とは関わりなく、ドル安・円高基調で推移する。こう見るのが自然だ。
●活躍期待の円高メリット株を仕込む
そこで、まださほど株価が上がっているわけではない、円高メリット株に注目したい。具体的には、まずは私の大好きな銘柄の一つである山崎製パン <2212> [東証P]になる(私はこの会社の串だんごを頻繁に購入している)。同社は製パン国内最大手であり、これまで幾度も値上げをしているが、小麦など原材料価格の上昇が止まりつつあるところに、円高が加わるのだ。当然、収益力は高まることになる。高値圏にある株価もそれを好感するだろう。上値余地ありと見る。
株価が10月末から11月13日にかけて急騰した反動で、現在調整しているキッコーマン <2801> [東証P]も、主要原材料が大豆であることを考えると円高メリットを受けると見てよい。株価は回復の兆しを見せ始めたところであり、ここからは下落するよりも反発する可能性が高いと見る。ただ、回復のスピードは緩やかだろう。
肉より魚派の私としては、マルハニチロ <1333> [東証P]も魅力的だ。今年の年末はカニが安く買えそうとのこと(それでも手は届きにくいが……)。マルハニチロにとって海産物輸入価格の下落は収益増の要因となる。株価は高値圏ながら騰勢をキープし続ける可能性が高い。
輸入品価格の下落が収益に大きく寄与するのは、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス <7532> [東証P]も同様だ。円安でも収益増を続けているが、円高となるとそれは当然加速する。ただ、円高でインバウンド(訪日外国人)が減速したり、客単価が低下するのではといった懸念も聞かれるが、同社が運営する「ドン・キホーテ」は訪れると衝動買いをしてしまうのが普通であり、多少のインバウンド減速はあっても問題にするほどではないといえる。
最後に、円高メリット関連株を離れて、JBCCホールディングス <9889> [東証P]を。クラウド、セキュリティなどに強いITサービス大手ながら市場での人気は高いとはいえず、プライム市場の平均PERが15倍近辺であるのに対して、この会社は16倍程度だ。平均レベルの銘柄と見なされているのは、私に言わせると評価不足過ぎる。
2023年12月8日 記
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