「新NISA」で変身する株、「金鉱脈先取り10銘柄」大選抜 <株探トップ特集>
―個人投資家に強力なフォローウインド、新たなるバリュー系出世株が爆誕へ!―
来年1月からいよいよ「新NISA」がスタートする。改めて言うまでもないが、 NISAとは少額投資非課税制度のこと。決められた口座で毎年一定金額の範囲内で購入した個別株式や投資信託などの金融商品から得られる利益に対し、税金がかからないという制度だ。政府が掲げる「貯蓄から投資」を実現するうえで、個人投資家の呼び水として期待されている。ちなみに現行のNISAは2014年1月に開始されたものだが、それから10年の時を経て、個人投資家にとってより有利な条件で新たなNISAがスタートする。
●個人投資家のニューマネーを強力に誘引
年間の投資上限は現行では「つみたてNISA」が40万円、「一般NISA」が120万円だが、新制度では前者が120万円、後者の一般NISAに相当する成長投資枠(個別株投資に使える枠)が240万円へと大幅アップする。また、非課税期間が無期限となる点も見逃せない(現行では非課税期間がつみたてNISAが20年、一般NISAが5年)。
更に生涯投資上限についても、現行はつみたてNISAが800万円、一般NISAが600万円だが、新制度では合計で1800万円で、うち一般枠にあたる成長投資枠が1200万円と大きく上乗せされる。そして、もうひとつ大きな変化としては、これまでは税金を免除してもらうにせよ2つの制度のどちらかを選ぶ必要があったが、新制度では併用が可能となることだ。ともすれば長期のつみたて投資に偏重しそうな個人投資家のニューマネーを個別株に引き寄せる効果が見込まれ、株式市場の活性化に一役買いそうだ。新NISAは個人投資家のニューマネーを呼び込むうえで十分に魅力ある制度として進化したことは間違いないところで、これを来年の日本株を強気にみる根拠のひとつに挙げる市場関係者もいるほどだ。
●バリュー株への資金還流を促す新NISA
では年明け以降、新NISAのスタートによって個別株物色の流れにどういう変化が生じるのか。来年1年間だけで個別株投資の軍資金として投資家1人当たり240万円までの非課税枠が使えることになるため、その効果は小さくない。個人のニューマネーが好む銘柄は当然株価も上がりやすくなる理屈であり、そうした銘柄は年内から強さを発揮しやすいという面もある。新規参戦の個人投資家について、市場関係者によると「(アンケートなどでは)投資資金の性質上、物色の矛先は高配当でPBRが低いバリュー系銘柄が好まれる傾向が強い」(中堅証券マーケットアナリスト)という。
足もとで米長期金利は低下傾向を示し、日米の株式市場ではこれがグロース株への資金シフトを促すセクターローテーションの動きにつながっている。しかし、米長期金利はこのまま低下傾向を続けるとも考えにくい。日本時間10日の早朝に行われたパウエルFRB議長の講演では、金融引き締めの最終局面にあるという確信は持っていないことを強調、長期金利は再び上昇に転じるなど依然として不安定な値動きを示している。くしくもパウエル氏の講演前に行われた米30年債の入札結果は「驚くほど低調だった」(ネット証券アナリスト)というように、米国債の需給懸念はくすぶったままだ。長期金利が再び浮上に転じる可能性はそれなりに高く、グロース株の上値を追うよりは、ここはバリュー株の押し目を狙う方が投資作戦的にも有効な場面といえそうだ。
●「1月効果」前に有望株を仕込むのが戦略
来年1月まで待てば新規の個別株投資に際し、個人投資家は成長投資枠で最大1200万円までの投資が無期限非課税対象となる。であれば、税金のかかる年内に動くのは得策ではないという考え方も確かにできるが、株式投資家は皆が一斉に動き出してから歩調を合わせるのではポジション的な優位を確保することはできない。
「ハロウィン後は投資のチャンス」というのが過去のデータが示す鉄壁アノマリーで、今月に入ってからの日経平均株価の急騰劇は文字通りそのアノマリーをなぞるような展開となった。11月は月間騰落で9勝1敗というのが過去10年間の実績だ。もちろん、11月もこれから中旬を迎えるわけで、現状で遅過ぎるということはない。新NISAスタートに加え、機関投資家がロング(買い)から入る「1月効果」も考慮すると、年明けを待たず目先バリュー株が押し目を形成している場面で、有望銘柄をよく吟味し拾っておくのが実践的である。年末までの向こう1カ月半がバリュー株セクターに眠る金鉱脈を探すチャンスであり、投資家の腕の見せどころである。
●新NISAで要注目の選りすぐり10銘柄
今回のトップ特集では新NISA導入を目前にして、個人投資家のニューマネーを誘引する魅力を内包する銘柄群に焦点を当てた。個別企業だけでなく機動的に売買できるETFも候補として挙げている。配当重視で安定性を求めるのであれば時価総額の大きい銘柄がニーズに見合うが、キャピタルゲインを追求するのが株の醍醐味でもあり、その点では流通株式が相対的に少ない中小型バリュー株に照準を合わせる方がよい場合もある。バリュー株で値幅取りを重視するというのは、投資戦略的に決して矛盾するものではない。今回は全体指数に振り回されない投資家のスタンスに幅広く対応した10銘柄を抜粋、新NISAの前哨戦であるオータム・ラリーを堪能したい。
◎ソフトバンク <9434> [東証P]
ソフトバンクは通信メガキャリアの一角を担い、モバイルを主体にブロードバンドサービスを手掛けるが、LINEヤフーやペイペイといったメディア・ECなどの非通信分野も積極的に開拓している。直近発表の23年4~9月期決算は最終利益が前年同期比約3割増で3000億円台に乗せ、通期予想の4200億円(前期比21%減)も上振れる可能性がある。株価は9月27日に1778円の上場来高値をつけ、時価も最高値近辺で頑強な値動きを示すが、5%近辺の高配当利回りは魅力だ。主力大型株ならではの安定感に加え、ビジネス展開力も豊富で買い妙味がある。
◎PBR1倍割れ解消推進ETF <2080> [東証E]
PBR1解消は特定の指数に連動しない形のアクティブETFの一角であり、PBR1倍未満の銘柄の中から対象を選出して組成したもので、メガバンクが組み入れ上位銘柄となっている。バリュー株投資の流れは、値動きは地味でも下値抵抗力が発揮されやすいのが特長で、投資の初心者にも受け入れられやすい面がある。そのなか、今年春先に出された東証による低PBR企業への経営改善要請が注目されており、個別企業が選びきれない投資家にとっては、同ETFは東証の大号令を追い風とする分かりやすい投資対象となる。
◎グローバルX S&P500配当貴族ETF <2236> [東証E]
GXUS配当は米国の高配当株に照準を合わせたユニークなETFだ。具体的にはキャタピラー<CAT>やエクソン・モービル<XOM>などをはじめ25年以上連続増配を実施している米国株市場に上場する大型株に着目し、これらで構成されるS&P500配当貴族指数に連動する仕組みで組成されている。長く増配を続けている企業は、当然ながら業績の拡大がベースとなっており、インカムゲインの魅力だけでなく、そのビジネスモデルの成長性も代弁している。米国の主力どころの優良株に投資している感覚で安心感も伴う。
◎丸文 <7537> [東証P]
丸文はエレクトロニクス商社としてグローバルに展開、半導体・電子部品のほか、医療用機器やレーザーなどシステム機器も取り扱う。足もとで民生機器向け及び自動車向けに半導体や電子デバイスが好調に推移、システム機器では産業用組み込みコンピューターや分析機器が増勢で業績を押し上げている。24年3月期上期営業利益は前年同期比4割増と急伸、通期業績予想も従来計画から大幅に増額し125億円(前期比14%増)を見込んでおり、連続最高利益更新へ。PBR0.6倍台で配当利回りは4%前後と高く、1200円台は見直し買いの序章に過ぎない。
◎ユタカ技研 <7229> [東証S]
ユタカ技研は排気システムや駆動系部品を生産する自動車部品メーカーで、ホンダ <7267> [東証P]が同社株式の約7割を保有する親会社だ。納入も大部分がホンダ向けで2輪用部品にも注力している。また、電動車対応のモーターコアは戦略商品として中期的な収益貢献が見込まれる。海外売上比率が高いことも特徴。24年3月期は国内やアジアで受注が大きく伸びており、円安効果も追い風に営業利益は従来予想の60億円から82億円(前期比2.1倍)に大幅増額した。PER5倍台、PBR0.3倍台、配当利回り4%超とバリュー株としての素地が際立つ。
◎三社電機製作所 <6882> [東証S]
三社電機は半導体モジュールや電源機器を製造し、表面処理用電源では国内トップシェアを有する。また、半導体はパワーデバイスに特化し、その高い商品競争力が同社最大の強みとなっている。業績は絶好調に推移しており、24年3月期営業利益は従来計画の20億円から25億円(前期比54%増)に大幅増額、これは過去最高だった08年3月期以来16年ぶりの高水準となる。来期は17年ぶりにピーク更新が視野に入るが、時価1200円台はPERが10倍未満でPBR0.7倍台という割安圏にあり、成長力を考慮すると水準訂正の伸びしろは大きい。
◎住友理工 <5191> [東証P]
住友理工は自動車用防振ゴムの大手メーカーで世界でも屈指の競争力を有し、トヨタ自動車 <7203> [東証P]を主要顧客としている点はポイントとなる。高分子材料技術で強みを持つほか、自動車電動化に対応した熱制御部品でも需要を獲得している。半導体不足解消による自動車生産の本格回復は同社にとっても追い風となっており、24年3月期営業利益は期中2度の上方修正を経て前期比60%増の265億円を見込む。PER9倍前後、PBR0.6倍弱の時価近辺は見直し余地大。4ケタ大台ラインを通過点とする中期的な戻り相場が期待できる。
◎タマホーム <1419> [東証P]
タマホームはローコスト系の住宅メーカーで自由設計の木造注文住宅を主力としており、戸建て分譲住宅やリフォーム工事なども手掛けている。首都圏郊外や地方を軸に営業展開を図っているが、業容拡大に積極的で2030年までに売上高1兆円の目標を掲げ成長事業分野の拡大に重点を置く。業績は17年5月期以降、増収増益路線を継続中で、24年5月期は営業利益段階で前期比6%増の141億円と6期連続の過去最高更新を見込む。株主還元に前向きで毎期増配を繰り返し、今期予想ベースで配当利回りは5%を超える。
◎バイタルケーエスケー・ホールディングス <3151> [東証P]
バイタルKSは医療用医薬品卸を主要業務とする医薬品商社で、東北に営業基盤を持つバイタルネットと関西地盤のケーエスケーを傘下に置く。今年4月の薬価改定による医療費削減は向かい風となっているものの、合理化努力で24年3月期最終利益は前期比8%増の52億円と増益基調を維持する見通し。今期から新たな長期ビジョンを立ち上げ、自立と連携による医薬品などの流通体制構築及び健康寿命の延伸といったテーマに取り組み、医療周辺ビジネスを展開していく構えだ。PBR0.5倍台で3.6%台の配当利回りは評価材料に。
◎ユシロ化学工業 <5013> [東証S]
ユシロは自動車向けを中心に金属を加工する際に使われる切削油剤を製造しており、同分野では業界トップシェアを有する。自動車の生産台数回復の恩恵が顕在化しており、23年4~9月期は営業利益段階で前年同期比4.8倍化した。24年3月期営業利益は前期比2.8倍の28億9000万円を計画するが、進捗率から一段の上振れが視野に入る。同社株もPBR0.5倍台で配当利回りは3.3%前後と“お買い得”感がある。株価は75日移動平均線がサポートする形で下値切り上げ波動を継続。目先75日線とのカイ離縮小場面は仕込み場に。
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