アルファ Research Memo(3):2023年3月期はセキュリティ機器事業が伸長
■業績動向
1. 2023年3月期の業績概要
アルファ<3434>の2023年3月期の連結業績は、売上高62,882百万円(前期比17.0%増)、営業利益601百万円(同2.4%増)、経常利益1,348百万円(同30.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益524百万円(同12.7%減)となった。自動車部品事業は、前期のコロナ禍による大幅減産からは持ち直したものの、半導体供給不足等による主要得意先の減産、加えて原材料高騰等の影響を受け、営業損失を余儀なくされた。セキュリティ機器事業は住設機器部門が電気錠の好調を持続、ロッカーシステム部門の回復を受けて大幅増収増益となった。なお、2022年11月に公表した減額修正予想に対しては、為替前提が1米ドル=135円、1ユーロ=135円としていたこともあり、売上高で2,882百万円上振れしたものの、営業利益では99百万円未達成、経常利益は48百万円上振れ、親会社株主に帰属する当期純利益は減損が響き176百万円下振れで着地した。
2. 事業セグメント別動向
(1) 自動車部品事業
自動車部品事業の売上高は47,302百万円(前期比12.0%増)、営業損失895百万円(前期は285百万円の損失)となった。地域別では北米が主要得意先生産調整の影響を受けたものの為替換算などにより売上高は12,133百万円(前期比16.8%増)となったが、営業利益は原燃料高、インフレによるコスト増などで543百万円(前期比419百万円損失増)の営業損失となった。アジアはASEANでの生産調整は軽微も、中国での主要顧客の生産調整やロックダウンの影響を受け、円安ながら売上高は17,072百万円(同4.6%増)に留まり、利益は営業損失2百万円(前期比249百万円損失増)となった。欧州も半導体不足で得意先の減産の影響を受けたものの、こちらも為替換算の影響で売上高は11,101百万円(同12.2%増)を確保も、利益は原燃料高の影響を大きく受け、営業損失345百万円(同162百万円損失増)となった。日本は主要顧客の生産が回復し、売上高が6,996百万円(同24.6%増)となり、営業損失が5百万円(同220百万円損失減)に留まり、営業黒字化が射程に入った。
全体を通じ、為替が円安に振れたため見かけ上の売上高は嵩上げされたものの、為替影響を除くと実質的な売上高は1ケタ前半の伸びに留まり、利益は原材料高、エネルギーコスト、人件費増などのコスト増を賄えず営業損失拡大を余儀なくされた。
(2) セキュリティ機器事業
セキュリティ機器事業の売上高は15,579百万円(前期比35.0%増)、営業利益は2,375百万円(同49.5%増)となった。このうち日本の売上高は13,318百万円(同31.9%増)、営業利益は1,837百万円(同56.7%増)となった。住設機器部門では下期に入り戸建て新設住宅着工の減少が見られたものの、電気錠の認知が高まり需要拡大が加速、さらには生産面で電子部品調達難の緩和で生産増が図られ、計画を大きく上回り37%増と順調な拡大を続けた。ロッカーシステム部門はコロナ禍が峠を越え国内観光需要が回復、コインロッカーのオペレーション収益が改善、さらに省人化対応でコインロッカーへの投資が高まり、大型投資の受注獲得にも成功した。
利益面では安定した収益性を誇る住設機器の増収効果、コロナ禍からの回復でオペレーション収入増から営業黒字転換となったことも寄与し大幅増益となった。なお、電気錠については従来の戸建て新設向けに加え、既設向けの需要も拡大している。また従来のYKKAP(株)向けが7,249百万円(同23.6%増)だったのに対し、それ以外が5,976百万円(同44.1%増)となっており、他社への納入が拡大基調にある。海外セキュリティ機器は売上高2,261百万円(同56.3.%増)、営業利益538百万円(同29.0%増)であった。ASEAN地域への成形部品が好調に推移したことが寄与し、増収となった。なお、海外セキュリティ機器の売上の4分の3は日本へのセキュリティ機器の内部供給売上であり、内部取引売上高は6,054百万円(同49.7%増)と、日本向け生産増も利益に大きく貢献していると見られる。
3. 財務状況
2023年3月期の資産合計は前期比5,456百万円増の61,639百万円となった。流動資産は同4,844百万円増の35,371百万円となった。主な要因は、原材料及び貯蔵品の増加1,682百万円、売掛金1,107百万円増などによる。固定資産は同613百万円増の26,262百万円となった。流動負債は同3,840百万円増の21,076百万円と、短期借入金増1,978百万円などが大きい。固定負債は同1,127百万円減の9,894百万円となった。主な要因は、長期借入金が380百万円減少したことなどによる。純資産合計は同2,744百万円増の30,669百万円となった結果、自己資本比率は前期末の47.6%から同0.4ポイント改善し48.0%となった。
連結キャッシュ・フローについては、利益が伸びないなかで棚卸資産の増加などが影響し、投資活動では設備投資を引き続き増加させたこともあり、営業活動によるキャッシュ・フローが2,911百万円の収入となったものの、投資活動によるキャッシュの支出が2,784百万円発生し、フリーキャッシュ・フローは127百万円の支出となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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提供:フィスコ