窪田朋一郎氏【上昇続く日経平均、3万3000円は通過点か】(1) <相場観特集>
―8月の夏枯れ相場返上で思惑募る9月相場の展望は―
4日の東京株式市場は買いが優勢、日経平均株価は6日続伸と気を吐いた。注目された8月の米雇用統計は労働需給の緩和を示す内容で、FRBの追加利上げに対する警戒感が和らいだ。ただ、NYダウは上昇したものの朝高後に値を消す場面もあり、ナスダック総合株価指数は小幅ながら終値でマイナスとなった。9月相場の見通しは分かれるところだが、ここからの全体相場の動向をどう読むか、第一線で活躍する市場関係者2人に見解を聞いた。
●「下値リスク高まるも銀行株は強さ発揮へ」
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
東京市場は目先強調展開が続いているが、9月相場では下値リスクが意識されやすい地合いとなることが予想される。株式市場でも注目度が高かった前週末の8月の米雇用統計は無難に通過する形となった。雇用統計発表を受け労働需給の逼迫感が薄れ、インフレ懸念が収まりつつある一方、米景気も減速傾向にはあるがクラッシュするような局面に陥る可能性は低く、ソフトランディングの公算が大きい。しかし、米金利の上昇傾向が続くなかハイテク株などには厳しい環境で、中国経済の減速に対する警戒感も根強く、ここからの上値は限られそうだ。
向こう1ヵ月でみた日経平均のレンジは上値が3万3500円どころで、下値は3万1000円近辺とみている。9月は3月期決算や9月期決算銘柄の配当権利取りの動きが出やすく、その点では月末にかけて日経平均など全体指数にも浮揚力が働きやすくなるが、それでも本格上昇トレンドへの移行は難しそうだ。7月と8月の月初につけた高値水準である3万3000円台半ばを明確に上抜いていく形は想定しにくい。
全体相場はここから警戒モードに入る可能性があるが、個別でみるとメガバンクをはじめとする銀行セクターや生保株などに追い風局面となりそうだ。米長期金利の上昇だけでなく国内でも金利上昇圧力が意識されている。日銀の田村審議委員は前週30日の記者会見で、春闘の見通しが立つ来年の1~3月にかけてインフレ見通しの精度が高まるとしながらも、その前の政策変更もやぶさかではないと発言している。今月11月~年末にかけてマイナス金利の解除が行われるケースも考えられ、この場合、運用環境が改善する銀行など金融株にポジティブ材料となる。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「マザーズ信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」「アクティビスト追跡ツール」など、これまでにない独自の投資指標を開発。
株探ニュース