日プロ Research Memo(1):社会インフラ分野の制御・組込システムに強みを持つ独立系ITサービス企業
■要約
日本プロセス<9651>は独立系のシステム開発・ITサービス企業である。1967年の創業以来、安全・安心が重視される難易度の高い社会インフラ分野の制御システム、及び社会インフラを支える機器の組込システムの開発で培った高い品質と信頼性を強みとしている。
1. システム開発・ITサービス業界で独自のポジションを確立
事業セグメントは制御システム、自動車システム、特定情報システム、組込システム、産業・ICTソリューションの5分野である。エネルギー関連、交通関連、車載制御・車載情報関連、防災関連、危機管理関連、航空・宇宙関連、情報家電関連、建設機械関連、医療機器関連などの分野に幅広く展開し、それぞれの分野で大手優良顧客と強固な信頼関係を構築しているため受注競合が少なく、顧客からの直接受注(元請け)比率がほぼ100%であることが安定収益につながっている。システム開発・ITサービス業界において「規模は小粒ながら独自のポジション」を確立していることが特長だ。
2. 2023年5月期は計画を上回る大幅増収増益で着地
2023年5月期の連結業績は、売上高が前期比12.3%増の8,923百万円、営業利益が同17.1%増の908百万円、経常利益が同19.7%増の967百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同28.1%増の682百万円だった。前回予想(2023年3月31日付上方修正値)を上回る大幅増収増益で着地し、売上高、営業利益ともに上場来最高を更新した。売上面は全セグメントが好調に推移した。利益面は、制御システムが新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響で業績が悪化したJR各社の設備投資抑制の影響などで減益だったものの、他のセグメントは好調に推移し、特に自動車システムの大幅伸長が牽引した。サービス価値向上による採算性改善やプロジェクト管理強化による不採算プロジェクトの最小化なども寄与した。そして中期的な目標としていた営業利益率10%を達成した。
3. 2024年5月期は小幅増収増益予想だが上振れ余地あり
2024年5月期の連結業績予想は、売上高が前期比1.9%増の9,090百万円、営業利益が同0.8%増の915百万円、経常利益が同0.3%増の970百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同1.1%増の690百万円としている。上期の連結業績予想は売上高が同4.4%増の4,490百万円、営業利益が同0.6%増の450百万円、経常利益が同2.6%増の480百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同10.0%増の340百万円としている。受注が高水準に推移して増収増益予想としている。会社予想は、前期の高成長の反動に加えて、持続的成長に向けた先行投資を考慮して小幅な伸びにとどまる見込みとしている。ただし弊社では、会社予想は保守的であり、生産性向上やサービス価値向上の効果による利益率改善の進展などを勘案すれば、会社予想に上振れ余地があるだろうと考えている。
4. 社員への還元と持続的成長投資、業績向上、企業価値向上の好循環を目指す
同社は、社員への還元(成果主義による評価)と持続的成長投資(人材、働きやすい環境・制度・設備)が業績向上につながり、さらに企業価値の向上(株主還元)につながる好循環を目指している。そして第6次中期経営計画では、持続的成長に向けた基盤構築のステージと位置付けて、人材育成のための大規模案件請負や、T-SES(トータル・ソフトウェア・エンジニアリング・サービス)のトータル度向上に取り組んでいる。大規模案件請負を推進して人材育成につなげる方針だ。株主還元については安定的な配当の継続と配当性向概ね50%以上を目標としている。
5. 人材育成による着実な収益力向上に注目
同社はシステム開発・ITサービス業界において「規模は小粒ながら独自のポジション」を確立し、堅実な経営によって比較的安定した収益を維持してきたが、株式市場においては地味な印象が強かった感が否めない。ただし2010年代後半より利益率向上に向けた施策を展開し、概ね8%前後で推移していた売上高営業利益率は2020年5月期に9%台、さらに2023年5月期に中期目標としていた10%以上を達成するなど、収益力は着実に向上している。そして第6次中期経営計画では、持続的成長に向けた基盤構築のステージと位置付けて人材育成を推進している。次期の中期経営計画でも基本方針に大きな変化はないと考えられるが、今後も着実に収益力を向上させることで、安定的な投資対象として投資家の関心が高まる可能性があるだろうと弊社では注目している。
■Key Points
・社会インフラ分野の制御・組込システムに強みを持つ独立系ITサービス企業
・2023年5月期は計画を上回る大幅増収増益で着地
・2024年5月期は小幅増収増益予想だが上振れ余地あり
・社員への還元と持続的成長投資、業績向上、企業価値向上の好循環を目指す
・人材育成による着実な収益力向上に注目
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《AS》
提供:フィスコ