データアプリ Research Memo(7):市場環境は良好
■成長戦略
1. 市場環境
データ・アプリケーション<3848>を取り巻く市場環境については、いわゆる「2025年の崖」問題(2018年9月に経済産業省が発表した「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」)で、既存システムの老朽化・肥大化・複雑化・ブラックボックス化などによって企業の競争力が低下し、2025年以降に最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が発生する可能性が指摘されている。このため今後は、あらゆる産業で新たなビジネスモデルが求められ、DXの流れが加速すると想定されている。
同社が展開する企業間電子データ交換分野のほか、企業間電子データ交換を含めた企業内外のシステムの全体最適化を目指して、オンプレミス・クラウド環境など分散化する企業内外のシステム間におけるデータ連携・変換・加工・活用といったデータに関する様々なビジネスの拡大が予想されている。これらの状況を勘案すれば同社が属する市場環境は良好だと言えるだろう。
2. 中期ビジョン「変革への挑戦」
同社は、ありたい姿を「データと一緒にワクワクする未来へ!」と定義し、中期ビジョンとして「変革への挑戦」を掲げている。また経営戦略の基本方針として、(1) 研究開発や技術探求に加えて、他社との協業等を実行しつつ、DXをはじめとした新たな市場開拓を行い、企業成長の方向性を広げる、(2) 継続的な製品機能のエンハンスや提供サービスの拡充等により、既存事業の周辺市場への展開を含め、事業領域の拡大深耕を目指す、(3) サポートサービス品質を上げ、解約率の低減と顧客満足度の向上を図りつつ、リカーリングビジネスを推進し、収益安定性の向上を目指す、(4) 教育・労働環境を整備し、優秀な人材の採用・育成に努め、企業としての持続的成長の実現を図る、の4つを掲げている。
この中期ビジョン及び基本方針に基づき、中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)では、最終年度の目標値として2024年3月期の売上高2,500百万円(サブスクリプション売上高は2021年3月期比3倍)、営業利益350百万円を掲げている。株主還元方針については、DOE(株主資本配当率)3.5%を目安に、長期的・安定的な配当の維持を目指すとしている。
(1) 成長イメージ
定性的な成長イメージとしては、EDIミドルウェア市場でのマーケットリーダーのポジションを足掛かりに、既存パートナーとの協業も深化させつつ、AI・BI・RPAをはじめとした様々なテクノロジーと新たな協業を模索し、ビジネスの変化に適応し成長し続けることを目指す。具体的には、市場規模420億円(同社推定)のデータ・インテグレーションマーケットへ事業拡大することで、データ・インテグレーション領域でマーケットリーダーを目指すとともに、同社の戦略製品を活用することで顧客のDX促進を目指すとしている。
(2) アクションプラン
計画達成に向け、「新市場」「既存市場」「顧客・販売」「組織・人材」をキーワードとしてアクションプランを掲げている。特に「顧客・販売」において、ストックビジネスの強化、M&A・アライアンスの強化、製品品質の向上、顧客単価・案件単価の向上、顧客満足度の向上、サービスレベルの向上のほか、顧客のDX支援、パートナーとの協業深化、営業効率化、サービス提供の迅速化なども順調に進捗している。さらに「新市場」では製品・サービスの適用分野拡大や戦略製品による課題解決力強化、「既存市場」では主力製品による課題解決力強化や製品の付加価値向上による既存顧客維持、「組織・人材」では長期的視点に立った人材育成、各種学習機会の提供、開発効率化、多様な働き方の提供、技術探求室(2022年4月にNP開発室に改編)新設、コスト最適化、社内におけるDX推進、ブランドイメージ向上などが順調に進捗している。
(3) 中期経営計画の進捗状況
中期経営計画3年目の2024年3月期は本社移転に係る一時的費用の発生などで営業・経常減益予想としているものの、中期経営計画の目標値である売上高2,500百万円(サブスクリプション売上高は2021年3月期比3倍)、営業利益350百万円を超過達成する見込みとしている。
計画の進捗は順調であり、さらに2024年3月期の重点施策として、上述のように前期までの成果に積み上げる形で、「新規ビジネス:DX実現への挑戦」「既存ビジネス:収益の最大化」「人材の獲得と育成」「企業力強化の取り組み」の4つの重点施策を深化させ、実施する方針としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《SI》
提供:フィスコ