日本電技 Research Memo(7):人員のボトルネックはあるが、ピーク利益更新も射程圏
■業績動向
3. 2024年3月期の業績見通し
日本電技<1723>は2024年3月期の業績見通しについて、受注高32,500百万円(前期比16.8%減)、売上高35,000百万円(同2.0%増)、営業利益4,550百万円(同1.0%増)、経常利益4,650百万円(同0.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,200百万円(同1.0%増)を見込んでいる。受注減ながら、中期経営計画の目標値に達した前期実績を上回り、直近ピーク利益(2021年3月期営業利益4,584百万円)に迫る予想となっている。
空調計装関連事業において、2023年3月期に引き続き首都圏など都市再開発案件や工場など、新設工事を中心に大型案件が完成・出件される見通しである。一方、手持ち工事高が過去最高にまで積み上がっており、同社は施工余力を勘案した選別受注活動になることも想定している。このため受注高が前期比で大幅に減少する計画になっているが、新設工事で「全社最適」をキーワードに経営資源の選択と集中を図るとともに、既設工事ではエネルギー課題に則した提案を着実に進め、収益をしっかり確保できる事業体制の構築を目指す。産業システム関連事業においては、主力顧客である食品工場を中心に設備投資の回復を見込み、完成・出件とも増加傾向となることを想定している。しかし、施工要員の一部を一時的に空調計装関連事業の支援に充てたことから、受注高について前提より伸びが鈍化するリスクも想定しているようだ。したがって、プラントメーカー向け事業の収益基盤確立、ジュピターアドバンスシステムズと連携した製造現場でのソリューション提供などを通じて、業容の拡大と事業の効率化を推進する考えである。
空調計装関連事業について、2023年3月期の受注高・受注残高はともに過去最高となったが、「建設業の2024年問題」や足もとの施工余力を考慮して新設工事を中心に大幅な受注減を見込む一方、首都圏再開発など新設工事案件の完工が続くことから売上高は増加を予想している。産業システム関連事業については、2023年3月期の完工が非常に多かった反動による減収を見込んでいる。利益面では、選別受注による採算改善の一方、多くの施工人員確保が必要な大型工事のシェア上昇や、人件費の増加、経費支出の平常化を背景に、売上の伸びに若干届かない予想となっている。
確かに産業システム関連事業は、食品工場を中心に設備投資が回復しているため本来ならば注力したいところではあるが、足もと人員が逼迫する空調計装関連事業へ人員支援を行っていること、事業部制になって生じている施工管理や業務プロセスなど課題解消に相応の時間がかかることなどから、同社の予想するように売上・利益ともに2023年3月期実績に届かない可能性がある。しかし空調計装関連事業において、新設の大型工事は本社でバランスをとって受注していることや選別受注が進み既設工事につながるうえ損失が発生しない新設工事が増えていること、市場環境が良好であることなどを考慮すると、前提が従来以上に慎重なものになっているように思われる。このため、完工のタイミング次第ではあるが、直近ピークの2021年3月期営業利益4,584百万円を上回って着地する可能性も少なからずあると弊社では考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《SI》
提供:フィスコ