田部井美彦氏【軟調地合い続く7月相場、株高戦線異状あり?】(2) <相場観特集>
―日経平均3万2000円台で下値模索、外国人買いの行方は―
週明け10日の東京株式市場は日経平均株価が5日続落となった。7月相場入り初日となった3日に日経平均は560円あまりの急伸をみせ年初来高値を更新したが、その後は変調で一貫して下値を探る展開に変わった。これまで上昇相場の牽引役となっていた外国人投資家の買いの矛先も鈍っているようだ。ここからの相場展望と物色の方向性について経験豊富なベテラン市場関係者2人に意見を聞いた。
●「当面は下値固めの展開も、中小型株などに再評価余地」
田部井美彦氏(内藤証券 投資調査部 リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト)
当面の東京株式市場は下値固めが続く展開を予想している。6月の日銀短観は、大企業製造業業況判断指数(DI)は改善したものの、売上・収益計画の経常利益などは下方修正され、4~6月期決算への警戒感も出ている。また、日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を継続するかを確認したいとの見方も強まっている。
過去のアベノミクス相場では、連結PERは日経平均ベースで15~16倍程度まで買われた。これを今回の相場に当てはめてみると、一部の銘柄の影響が比較的小さいTOPIXベースの1株当たり利益に、TOPIXと日経平均との比率であるNT倍率を掛け、更に15~16倍を掛け合わせると3万3000~3万5000円という数字が弾きだされる。この水準を当面の上値とすると、株価の一段の上昇には業績の上方修正などが必要となる。それだけに、しばらくは27~28日の日銀金融政策決定会合の結果や今月下旬から本格化する決算発表を確かめたいところだ。
こうしたなか、今後1ヵ月程度の日経平均の予想レンジは、下値は3万1500円、上値は3万3500円前後とみている。4~6月期決算では、ポジティブサプライズは期待しにくいとみており、当面の株式市場は上値が追いにくく下値固めの展開を予想する。その一方、足もとでは個人投資家などの見直し買いで中小型株が堅調な値動きとなっていることは見逃せない。
個別銘柄では、扶桑化学工業 <4368> [東証P]やメック <4971> [東証P]のような半導体材料などに絡む中小型株に注目している。また、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]や積水ハウス <1928> [東証P]、それに日東工業 <6651> [東証P]や淺沼組 <1852> [東証P]などのような高配当利回り株の活躍にも期待したい。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース