巴川紙 Research Memo(3):半導体・ディスプレイ関連事業は半導体実装用テープに強み、新製品投入に期待
■巴川製紙所<3878>の会社概要
(2) 半導体・ディスプレイ関連事業
半導体・ディスプレイ関連事業は、半導体実装用テープ、半導体製造装置向け製品、FPD向け光学フィルムを3本柱に事業を営んでいる。電子部品材料半導体実装用テープ、半導体製造装置向け製品はICメーカーやリードフレームメーカー、FPD向け光学フィルムはフィルムメーカー等へ販売している。
この事業は1981年に半導体メーカーから半導体の高集積化で放射線によるICソフトエラーの発生を防止するための半導体チップ保護接着テープ開発から始まった。
同事業の中心事業はICチップ搭載用リードフレーム固定接着テープを核とする半導体実装用テープである。これはリードフレームの中心部においたICチップとリードフレームのピンの先端を金線でワイヤボンディングする際に、リードフレームが振れることを防止し、平坦に維持するためのものだ。1984年に「エレファンR-7」として発売を開始、国内だけでなく米国・韓国・東南アジアでも使用された。1989年に入り、ノートPCなどの拡大による多ピン化ニーズからQFP(Quad Flat Package;半導体パッケージの1種で、リードが4側面に伸びているタイプのもの)が成長し、急速に生産量が伸びた。またTAB(Tape Automated Bonding)テープを開発、1986年に「エレファンFC」として上市、1988年には受注が急増した。電子材料事業は1989年にはクリーン工場を建設するまでの事業に拡大した。当時の電子部品材料部門の売上高は1988年3月期を基準として1992年3月期には4.6倍、1996年3月期には10.4倍規模に拡大、2001年3月期には電子部品材料売上が全体売上の30%にまで高まり、同社収益に大きく寄与した。しかし、その後はテープをチップ面積分打ち抜き周辺部を廃棄する方式から、必要面積分のみ利用するセグメント貼り方式に日系企業が移行し伸び悩みが続いた。さらに半導体需要がノートPCからタブレットさらにはスマートフォンに移り、BGA(Ball Grid Array;リードの代わりに底面にはんだボールが格子状に配列されたもの)を中心とするFC-BGA基板が中心となるなど民生用向けの伸び悩みも影響した。その後、QFPパッケージの成長とともに伸びが復活し、最近は信頼性の要求度が高い車載半導体などでQFPパッケージが増加し利益の柱となっている。
半導体製造装置向け部品については、現在の売上規模は小さいものの、成長性が高いと同社では見ている。この中心は静電チャックと金属繊維不織布シートを組み込んだ製造装置用部材である。静電チャックは事業自体の歴史は古く、1987年に半導体製造装置メーカーからの開発依頼を受けて、1991年に同社、東芝<6502>、東京エレクトロン<8035>で共同開発し、「エレファンTAD」として上市した。静電チャックシートは静電気の吸着力でシリコンウエハを固定するシートで、プラズマエッチング加工で用いられる。生産数量は1995年当時月産数百台程度であったが、2000年には月産千台を超える規模にまで拡大し、同市場ではトップシェアの地位を築いた。ただしウエハ市場において12インチに主戦場が移り、耐熱性、耐摩耗性、化学的安定性などからセラミック静電チャックが採用となり、同社は出遅れ、その後は伸び悩んでいた。しかし最近は、レガシー半導体の活況を受けて8インチ以下対応装置の稼働率が向上し、一定の売上高を確保している。なお、開発中の金属繊維不織布シートを組み込んだ製造装置用部材は、試作品の納入が開始された状況にある。
FPD向け光学フィルムは、1975年に粘着加工技術を生かしLCD偏光板粘着加工の事業を開始したことに始まる。1981年には電子ゲーム用なども受注し、車載用には耐熱性に優れた粘着加工なども増え事業拡大した。また2000年手前では大型FPDとしてPDPに期待がかかり、2001年にPDP用の電磁波シールド材を上市し、PDPTVの拡大に伴い急拡大した。しかし光学フィルムは日本のFPDメーカーが退潮し、PDPも退場するなかで縮小、大型設備投資で停滞しコストの重荷を背負う時期が続いた。現在は構造改革を行い、利益を確保できる態勢にあるものの、受注変動で収益のぶれがあり収益が安定しない事業となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
《SI》
提供:フィスコ