来週の相場で注目すべき3つのポイント:日銀短観、米ISM景気指数、米雇用統計
■株式相場見通し
予想レンジ:上限33900円-下限32500円
来週の来週の東京株式市場は上値の重い展開か。四半期末に伴う持ち高調整の売りは一巡したが、決算を迎える上場投資信託(ETF)運用会社による分配金捻出のための換金売り需要が7月7、10日に現物・先物の合計で1兆1000~3000億円超発生すると予想されている。これが目先は需給面での重荷として意識される。
また、東京証券取引所が公表する裁定取引に係る現物ポジションによると、23日時点の裁定残高はネットベースで1兆4391.52億円の買い越しとなり、直近4年間における最高水準を記録。裁定買い残の解消売り圧力が一段と高まっており、これも需給面での重荷となろう。さらに、23日時点での市場全体の信用取引残高(東京・名古屋2市場、制度・一般合計)は買い残が前週比2212億円増の3兆4688億円と5週連続で増加し、2021年12月以来の高水準となった。日米ともに株高基調が一服していることもあり、今後は個人投資家の利益確定売りも重荷として働いてきそうだ。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は少なくとも年内2回の追加利上げを再三にわたって主張しており、今週の米経済指標の上振れも相まって、さすがに市場も2回目の追加利上げを織り込みはじめた。米10年債利回りは29日、3.84%と3月上旬以来の高値を記録している。こうした中、来週は週末に米雇用統計が発表される。強い結果となった場合、米金利が一段と上昇する可能性があるため、週末まで様子見ムードが株式の上値を抑えやすいだろう。
ほか、米供給管理協会(ISM)の製造業景気指数(3日)および非製造業景気指数(6日)、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(6月開催分)(5日)など注目材料が多い。欧米の6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)はともに市場予想を大きく下回り、景況感の拡大・縮小の境界値である50を大幅に割れている。ISM製造業景気指数が下振れた場合、今後の企業業績の悪化を示唆するものとして素直に嫌気されそうだ。
ISM非製造業景気指数は5月に予想外に縮小して50割れ目前まで低下した。非製造業景気指数は、6月は51.2と5月(50.3)より改善する見込みだが、仮に50割れとなれば米経済のソフトランディング(軟着陸)期待は剥落するだろう。一方、上振れれば一段の米長期金利の上昇につながり、いずれにせよ株式の上値を抑制する展開となりそうだ。FOMC議事録もタカ派な内容が予想され、相場の支援材料にはなりにくいだろう。
国内では週初に日本銀行の全国企業短期経済観測調査(短観)が発表される。製造業および非製造業ともに前回からの改善が見込まれており、予想以上の改善となれば日本株のサポート要因となりそうだ。また、3-5月期決算の発表が多くなり、週末には主力製造業の4-6月期決算の前哨戦に当たる安川電機<6506>の決算も発表される。地域別の受注動向などが注目され、週末はETF分配金捻出売りや米雇用統計などと合わせて注目材料・イベントが集中するため、模様眺めムードが相場の上値を抑えることが想定される。
トヨタ自動車<7203>は29日、5月のグループ世界生産台数が前年同月比35%増加の94万7874台だったと発表。半導体不足の緩和に伴い生産が回復傾向にあり、同月としては過去最高水準を記録した。ドル円は30日に一時1ドル=145円に乗せてからはドル高・円安に一服感が出ており、この先は財務省による為替介入なども意識されやすいだろう。ただ、トヨタ自動車をはじめ、トヨタ系列各社の今期想定為替レートは1ドル=125円~130円に設定されているため、生産回復に加えて為替差益も見込みやすい状況だ。来週は米金利に影響を与えそうな重要指標が多いこともあり、ハイテク・グロース(成長)株は手掛けづらいと考えられ、目先は輸送用機器のなかでもトヨタ系列各社に注目したい。
■為替市場見通し
来週のドル・円は上げ渋りか。欧州中央銀行(ECB)主催の国際金融会議に参加した欧米中央銀行総裁はインフレ抑止に向け金融引き締め長期化の方針を提示した。対照的に、日本銀行の植田和男総裁は金融緩和政策継続の重要性を主張し、金融政策の方向性の違いが顕著になった。来週発表される6月ISM製造業景況指数や6月雇用統計が市場予想に沿った内容だった場合、米国の利上げ再開を期待したドル買い・円売りは続く可能性がある。
ただ、日本政府の円安けん制姿勢が引き続き意識され、リスク選好的なドル買い・円売りは短期的に抑制されるとみられる。日本政府はドル・円が143円台に浮上後に円安けん制を強め、閣僚や財務省幹部の発言が円売りを抑制した。円買い・米ドル売りの市場介入がただちに実施されるとの見方は少ないようだが、円安けん制発言(口先介入)は短期的にドル・円相場を下押しする効果がありそうだ。
■来週の注目スケジュール
7月3日(月):日・日銀短観(大企業製造業DI)(4-6月)、中・財新製造業PMI(6月)、米・ISM製造業景況指数(6月)、米・株式市場は短縮取引、など
7月4日(火):日・AeroEdgeが東証グロースに新規上場、豪・オーストラリア準備銀行(中央銀行)が政策金利発表、米・株式市場は祝日のため休場(独立記念日)、など
7月5日(水):日・需給ギャップと潜在成長率(日本銀行)、日・ブリーチが東証グロースに新規上場、中・財新サービス業PMI(6月)、欧・ユーロ圏生産者物価指数(5月)、米・製造業受注(5月)、米・連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(6月13日-14日会合分)、米・ニューヨーク連銀総裁が座談会に参加、など
7月6日(木):日・東京オフィス空室率(6月)、米・ADP全米雇用報告(6月)、米・ISM非製造業景況指数(6月)、米・JOLT求人件数(5月)、米・ダラス連銀総裁がパネル討論会に参加、など
7月7日(金):日・実質賃金総額(5月)、日・実質賃金総額(5月)、日・グリッドが東証グロースに新規上場、日・決算発表 安川電、米・雇用統計(6月)、欧・ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁がパネル討論会に参加、韓・決算発表 サムスン電子(暫定集計)、など
《YN》
提供:フィスコ