三機工業 Research Memo(1):2023年3月期は40.6%減益も、受注高、次期繰越高は高水準を維持
■要約
三機工業<1961>の主要事業は、オフィスビル、学校、病院、ショッピングセンター、工場、研究施設などの建築設備(主に空調設備)及びプラント設備(上下水道処理施設等)の企画・設計・製作・監理・施工・販売・コンサルティングなどである。同社の強みは、多岐にわたる事業を横断的に融合させる総合エンジニアリングと100年近い実績から培われた高い技術力や信用力である。
1. 2023年3月期:上期の工事工程の遅れ等で営業減益だが受注高及び次期繰越高は高水準
2023年3月期の業績は、売上高190,865百万円(前期比1.2%減)、営業利益5,409百万円(同40.6%減)、経常利益6,247百万円(同36.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益4,750百万円(同26.8%減)となった。売上高は、一部工事の工程見直しが生じたことの遅れを十分に取り戻せなかったことや機械システムでの前期からの繰越工事が少なかったことから減収となった。営業利益は、2023年3月期末までに完成となる物件が計画より少なかったことなどから売上総利益率が低下し、減益となった。受注高は前期比13.0%増と好調に推移した。特に同社が得意とする産業空調の受注高は前期比23.7%増となった。この結果、期末の次期繰越高は188,426百万円(前期末比25.0%増)と高水準を維持した。
2. 2024年3月期の業績見通し:営業利益は38.6%増と回復予想
2024年3月期については、受注高190,000百万円(前期比16.9%減)、売上高210,000百万円(同10.0%増)、営業利益7,500百万円(同38.6%増)、経常利益8,000百万円(同28.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,300百万円(同11.6%増)と予想している。売上総利益率は14.3%(同0.1ポイント上昇)の見込みで、販管費は前期比4.2%増を予想している。2023年3月期の売上総利益率が低下した要因は、顧客による工程見直しや資材の納期遅れなどによる工事の遅延という一時的な要因によるものであることから、売上総利益率の予想はかなり控え目であると弊社では見ている。そのため完成工事が予定どおり計上されれば、現在の売上高・各利益の予想が上方修正される可能性は高いと思われる。
3. 中期経営計画“Century 2025”はPhase3へ
同社は創立100周年の2026年3月期に向けて、2017年3月期から10年間の長期ビジョン“Century 2025”を発表した。その目標達成のために10年間を3つのPhaseに分け、中期経営計画に基づく事業戦略を推進してきた。この長期ビジョンの最終目標(Phase3の目標)は、ステークホルダーからもっと「選ばれる」会社と定めている。定量目標は、最終年度である2026年3月期に売上高2,200億円、売上総利益率16.5%、経常利益120億円、配当性向50%以上、ROE8.0%以上としている。定量目標は容易に達成できる数値ではないが、重要な点は、単に定量的な目標を達成することだけでなく、施工品質・生産性の向上、働き方改革、成長投資など目に見えないところで同社が質的にもどのように変わっていくかであると弊社は考えている。今後の同社のさらなる変化に注目したい。
4. 株主還元にも前向き:2024年3月期の配当性向は71.9%を予定
同社は、これまでの安定配当や近年の増配に加え、自社株買いなど積極的な株主還元を実施している。年間配当については、2021年3月期80円(特別配当を含む)、2022年3月期85円(同)、2023年3月期75円(同)を行った。自己株式については、2022年3月期に1,000千株を取得したことに続き、2023年3月期も1,500千株を取得した。この結果、2023年3月期の配当性向は87.4%、総還元性向は136.4%となった。過去10年間(2014年3月期から2023年3月期まで)の総還元性向(加重平均)は91.6%に達した。2024年3月期は普通配当70円(配当性向71.9%)を予定している。単に業績の向上を目指すだけでなく、株主還元策においても積極的な同社の姿勢は大いに評価すべきだろう。
■Key Points
・三井系の国内トップクラスの建築設備会社。利益率改善策を実行中
・2023年3月期は前期比40.6%の営業減益となったが、2024年3月期は38.6%増益予想。中期経営計画の目標は変えず
・株主還元にも前向き。2024年3月期の配当性向は71.9%を予定
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《SI》
提供:フィスコ