【市況】【杉村富生の短期相場観測】 ─バフェット効果に加え、ブラックロックが参戦!
経済評論家 杉村富生
「バフェット効果に加え、ブラックロックが参戦!」
●6月末はGPIFなどのリバランスに警戒を!
この見方は短期的な視点である。長期的な上昇トレンドは変わっていない。ただ、6月下旬から7月中旬の相場は波乱含みとなろう。これには警戒を要する。まあ、「転ばぬ先の杖」といった感覚だ。くれぐれもご用心を。
荒れ模様の展開を予想する背景には以下の要因がある。まず、5月末と同様に、国内の年金のリバランス(ポートフォリオの修正)が行われること。5月31日の東証プライム市場は大引け前の数分間に、約3兆円の売買代金を記録し、この日の売買代金は6兆9552億円と、通常の2倍に膨らんだ。何が起こったのだろうか。
それはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの“利益確定売り”が有力だ。運用資産約200兆円のGPIFは資産構成比率を内外の株式、債券について各25%と定めている。年初以来、日本市場の独歩高を受け、日本株のウェイトが25%を超えたのだろう。ウェイトの許容幅はあるものの、今回はこの修正(株式売りの債券買い)を行ったものと思われる。
6月末にはこのスケールがもっと大きくなる? その可能性はあろう。急騰を続けてきた半導体関連、人工知能(AI)、生成AI、ChatGPTなどの人気セクターが値を消しているが、先回り的な玉外しの動きがあるのではないか。
次に、主力企業の株主総会終了後、マスコミを賑わせていた株価刺激材料が途切れる傾向がある。経営者、IR担当者は「やれやれ」と、株価を意識しなくなる。すなわち、虚脱感に襲われる。これが株価に反映されるのだろう。
それに、急騰(日経平均株価は大発会の2万5661円を安値に8111円幅、31.6%の値上がり)の結果、日経平均株価の予想PERは15.3倍と、極端な出遅れ感は薄れている。世界平均(MSCIワールド)は16.4倍だ。一段高に進むには1株利益(2200円)の増加が不可欠である。
●メガバンクが買われるタイミング!
もちろん、先行きについては何の不安もない。日本再興戦略、企業統治改革の効果が顕在化するとともに、ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイ<BRK.B>が三菱商事 <8058> [東証P]、三井物産 <8031> [東証P]などの大手商社株を買っている。大手商社株、コマツ <6301> [東証P]はウクライナ復興の本命となろう。
さらに、世界最大の資産運用会社(運用資産1280兆円)のブラックロック<BLK>のラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)が「(世界中の運用者が)日本株に資金を戻そうとしている」と明言している。実際、外国人は12週連続の買い越し(現物株)だ。先物を含めると、年初以来の買い越し額は8兆円に迫っている。
物色面はどうか。出遅れが著しいホンダ <7267> [東証P]グループのエフ・シー・シー <7296> [東証P]、武蔵精密工業 <7220> [東証P]はジリ高が期待できる。武蔵精密工業はEV(電気自動車)部品、AI分野に注力中である。話題のABEJA <5574> [東証G]とは資本・業務提携を行っている。
このほか、ダイコク電機 <6430> [東証P]が出直りの構えを示し、ウッドワン <7898> [東証S]は底入れの兆し。ウッドワンはPBR0.25倍だ。PBR1倍は遠い。しかし、何とかする必要があろう。レカム <3323> [東証S]は株価水準(92~94円)がネックだが、面白くなりそうなムードである。
主軸株ではアメリカでのストレス(不況に対する耐久性)テストが完了、経験則的に銀行株の出番が近い。三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]の1000円前後は仕込みのチャンスと判断する。
2023年6月23日 記
株探ニュース