DDグループ Research Memo(9):ニューノーマルを見据えた新中期経営計画を公表
■新中期経営計画の公表
1. 新たな中期経営計画の方向性
DDグループ<3073>は、2023年4月に2024年2月期を初年度とする3ヶ年の新中期経営計画を公表した。コロナ禍をきっかけとした消費者行動やニーズをはじめとする環境変化を捉え、中長期的なパラダイムシフトを意識した戦略的な方向性を掲げている。また、「お客様歓喜~付加価値のある顧客価値の実現~」というグループ指針の下、経営ビジョンを「消費者が求める『フードサービス企業』」から、「創造的であり革新的であるブランドを創造する『ブランドカンパニー』へ」と変更し、ブランド強化ポートフォリオの再構築や事業領域の拡大などを通じて、重点施策である(1)グループ経営力の強化、(2)LTVの最大化を推進していく戦略を描いている。
2. これまでの振り返り
同社は、外食業界を取り巻く環境変化などを踏まえ、2020 年2 月期に3ヶ年の中期経営計画「SUPER 7 PROJECT」をスタートした。既存事業の強化・拡大に加え、ブランドポートフォリオの拡充、スケールメリットの追求などにより、高収益体質への転換や将来利益の創造などに取り組んだ。特に業界の枠を超えたイノベーション(新たな価値の創出)の推進により、環境変化に柔軟に対応し、持続的な成長を実現していく方向性を掲げてきた。しかしながら、想定外のコロナ禍の影響を受け、この3年間は事業基盤及び財務基盤の安定化に専念してきたため、業績面はもちろん、変革という視点からも十分な成果をあげることはできなかった。ただ、図らずもコロナ禍の影響が環境変化に拍車をかけるなかで、足元では経済活動の正常化や人の流れの戻りとともに同社業績には回復の目処が立ち、不採算店舗の整理も進んだことから、変革に向けた新たなスタートを切るうえで絶好のタイミング(転機)を迎えている。したがって、今回の新中期経営計画については、3年前の課題認識を継承しつつ、コロナ禍によるパラダイム変化を加味し、さらにブラッシュアップしたものとして捉えることができる。
3. 重点施策のポイント
(1) グループ経営力の強化
具体的なテーマとして、1.コア事業の強化、2.展開チャネルの拡張、3.事業領域の拡大、4.財務基盤の強化をあげており、グループ連携を含めて、様々な施策に取り組む計画である。これまでとの大きな違いで言えば、ショッピングセンターやフードコートへの出店、各自治体との連携、オンライン(EC)への展開といった新たな販売チャネルの開拓や、ホテル・不動産事業の販売商品の拡充、IPコンテンツの強化といった外食以外の領域において、M&Aやパートナーとの連携を含めた取り組みを推進していくところにある。
(2) LTVの最大化
コア事業(外食領域)でのさらなるブランド強化を推進し、圧倒的な顧客接点を追求したうえで、外食領域以外(サービス領域)でのブランド展開により、世代ごと、ライフステージごとに顧客接点を持つブランドポートフォリオの構築を目指していく考えである。すなわち、1) 「ブランド(業態)」(事業領域の強化)×2) 「チャネル(エリア)」(展開領域の拡大)×3) 「ライフスタイル(ステージ)」(拡張領域の推進)の3軸により顧客接点(アクセスポイント)を増やし、LTVの最大化を図る「ブランドカンパニー」を目指すとともに、社会課題の解決を通じたブランド価値の創出にも取り組んでいく価値創造モデルと言える。
4. 計数目標
(1) 財務目標
最終年度(2026年2月期)の財務目標として、連結売上高400億円(年平均成長率7.5%)、連結営業利益28億円(営業利益率7.0%)、ROE 20%以上を掲げている。特徴的なのは、投資の選択と集中による財務体質の強化を図りつつ、利益率15%以上の事業セグメント創出(例えば、空間活用ノウハウやIPコンテンツを生かしたサービス領域等)やストックビジネスの拡充(例えば、貸コンテナやシェアハウスなど不動産ビジネスなど)により、収益構造の変革に取り組むところであり、これまでの外食を中心とする利益率10%未満のビジネスモデルやフロービジネスからの脱却を目指している。
(2) キャッシュ・アローケションの考え方
3年間の営業CFは合計約80億円を見込むとともに、手元資金(運転資金を除く)約100億円と合わせると約180億円の原資を想定しており、そこから持続的な成長に向けた投資をはじめ、経営体質強化のための有利子負債の弁済にバランスよく配分するほか、本中期経営計画の実現とともに株主還元も並行して検討していく考えである。
(3) 非財務目標
女性管理職比率は現状水準(24.2%)を維持していく計画である。また、気候変動対応については、引き続きCO2排出削減に取り組むとともに、今期中に「CO2排出削減方針」を策定し、具体的な目標設定や活動計画などの開示も検討中である。
5. 中長期的な注目点
そもそも外食業界は、市場の伸びが期待できないうえ、競争の激化や消費者嗜好の変化などに直面し、将来に向けた変革をどう進めていくのかが重要なテーマになってきたが、そこにコロナ禍の影響が重なり、まさに正念場を迎えている。したがって、この難局を乗り越えることこそが、今後の持続的成長に向けて最大のアドバンテージになるものと見ることができる。中長期的な視点からは、同社ならではのイノベーションを生み出し、環境変化をいかにプラスに転じていくのか、その道筋が同社の将来を見据えるうえで重要なポイントになると考えている。特に「利益率15%以上の事業セグメントの創出」に向けた具体的な動きが気になるところである。その意味では、他社保有IP コンテンツの活用にノウハウを有するエスエルディーや、湘南エリアで独自のホテル・不動産サービスを展開する湘南レーベルといった、特徴的な連結子会社との連携を含めた、新たな空間価値、付加価値の創出に期待したい。また、新中期経営計画で掲げられた3軸のうち、新たなドライバーとなり得る「チャネル(エリア)」(展開領域の拡大)と「ライフスタイル(ステージ)」(拡張領域の推進)については、地方創生を目的とした各自治体や共創パートナーといった外部リソースとの連携がカギを握ると考えられる。具体的な進展や成果が形となってくれば、これまでとは違ったドライバーとしてスケールするポテンシャルを十分秘めており、そういった視点から今後の動向をフォローしていきたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
《SI》
提供:フィスコ