ティア Research Memo(5):葬祭事業、FC事業ともに増収増益を達成
■ティア<2485>の業績動向
2. 事業セグメント別動向
(1) 葬祭事業
葬祭事業の売上高は前年同期比5.8%増の7,079百万円、営業利益は同3.4%増の1,374百万円と2期連続の増収増益となり、売上高は過去最高を更新した。新店稼働効果もあって直営の葬儀件数が同4.0%増の7,663件と堅調に推移したほか、葬儀単価も同0.7%上昇の823千円と若干ながら上昇したことに加えて、TLD事業が順調に立ち上がったことが増収要因となった。利益面では、人件費を中心に販管費が増加したものの原価率の改善によって吸収し増益を確保した。なお、既存店ベースの売上高は同2.3%増となり、葬儀件数で同1.4%増、葬儀単価で同0.8%上昇した。
地域別の葬儀件数の伸びを見ると、名古屋市内が1.5%増、愛知県(名古屋市除く)が5.7%増、関西が6.8%増、関東が10.2%増となり、名古屋市内が伸び悩んだもののその他の地域については新店稼働効果もあって順調に拡大した。2022年9月に出店した千葉県下の1号店となる「ティア野田」をはじめ、2023年9月期に出店した各店舗についてはほぼ想定通りの立ち上がりとなっているようだ。
葬儀単価上昇の内訳を見ると、低価格の「祭壇無し」プランの件数構成比が前年同期の23.2%から25.3%と2.1ポイント上昇した影響で、祭壇単価が1.2%、供花単価が0.3%それぞれ低下したが、参列者の増加等により葬儀付帯品単価が2.2%上昇したことが押し上げ要因となった。「祭壇有り」プランの葬儀単価だけで見ると前年同期の989千円から1,018千円と2.9%の上昇となっている。
また前期から取り組み始めているTLD事業は、売上高で1.7億円を計上した。現在、複数のサービスを展開しているが、そのうち生活の困り事などを解決する生活関連サービスは、子会社のティアサービスが2022年11月に(株)ベンリーコーポレーション※にFC加盟して事業をスタートしている。当初は、ティア葬儀会館の営繕からスタートし、2023年4月から「ティアの会」会員12万世帯を対象に営業を開始した(当面は名古屋市内で展開)。まだ売上高は僅少で当面は名古屋市内のみとなるが、将来的に対象エリアを広げていく予定となっている。また、名古屋市内の寺院に同社が開発した樹木葬を2023年2月に販売開始し、告知から2日間で51区画を完売した(売上高約25百万円)。現在、第2弾の発売に向けて開発を進めている。
※生活に関する様々な困り事(掃除、水まわりメンテナンス、害虫駆除、営繕作業等)を解決する生活支援サービスを全国にチェーン展開している企業。
葬儀段階のサービスとしては、2022年8月より葬儀の際に宗教者紹介を希望する遺族に対して、宗教者を紹介するサービスの提供を開始した。110法人と提携し、紹介時に手数料を受領するビジネスモデルとなり、2023年3月までの8ヶ月間で1,500件を紹介した。同期間における葬儀件数はFC含めて1.4万件程度と見られるため、1割強のユーザーが同サービスを利用していることになる。コストはほとんど掛からないため、安定収益源として寄与するものと期待される。また、エンバーミングや防臭等の特殊処置もTLD事業の一つとして位置付けており、2023年9月期第2四半期累計の実施件数は前年同期比2.5倍の1,141件となった。さらに、葬儀後のサービスとして相続・不動産支援サービスに注力している。遺産相続や不動産の処分等のニーズのある遺族に対して、関連する事業者を紹介するサービスで、2023年9月期第2四半期累計の紹介手数料売上は前年同期比2倍増の45百万円となった。
(2) FC事業
FC事業の売上高は前年同期比16.1%増の241百万円、営業利益は同2.8%増の34百万円となった。FC店舗が前年同期比3店舗増加したことにより、ロイヤリティ売上や物品販売が増加し、売上高は4期ぶりに過去最高を更新した。一方、営業利益はFC本部の強化を図るべく人員体制を強化したため、若干の増益にとどまった。
自己資本比率は50%台で財務の健全性は維持
3. 財務状況と経営指標
2023年9月期第2四半期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比669百万円増加の14,836百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では現金及び預金が277百万円増加し、固定資産では新規出店に伴い有形固定資産が388百万円増加した。
一方、負債合計は前期末比312百万円増加の6,978百万円となった。有利子負債が418百万円増加し、その他の流動負債が減少した。有利子負債の増額は、2023年9月に本社隣接地に開設予定の「ティア・デザイン・ラボ(以下、TDL)」の設備投資資金(約4億円)確保が主な目的となっている。2023年9月期の設備投資額は全体で1,571百万円(前期実績909百万円)と過去最大規模を計画している。
設備投資額1,571百万円の内訳は、新規出店費用で780百万円、TDL建設費用で402百万円、その他で389百万円(遺体一時保管用大型冷蔵施設(収容能力50人程度)の建設費用含む)
純資産は前期末比357百万円増加の7,858百万円となった。親会社株主に帰属する四半期純利益543百万円を計上した一方で、剰余金の配当224百万円を支出したことによる。
経営指標を見ると、自己資本比率は前期末の52.9%から53.0%とほぼ横ばい水準となった。有利子負債の増加により有利子負債比率は30.9%と前期比4.1ポイント上昇したが、ネットキャッシュ(現金及び預金-有利子負債)は932百万円と一定水準を維持しており、財務の健全性は維持していると判断される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《AS》
提供:フィスコ