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復活する「音楽フェス」関連株、4年ぶりフル開催・規模拡大で熱視線 <株探トップ特集>


―フジロック・サマソニだけではない、経済再生の切り札としての潜在力に注目度高まる―

 国内で音楽フェスの開催がいよいよ本格化する。経済社会活動が正常化に向かうなか、観客が大声を出せるようになった2023年の野外フェスは、前年よりも多くの観客が集まると見込まれ、エンターテインメント業界に光明をもたらしている。地域経済の再生にフェスを活用する取り組みも広がっており、関連企業の業績と株価に上昇圧力を掛けそうだ。

●オンラインからリアルへ「逆回転」のエンタメ業界

 リアルなステージを目の前にして感動を共有したいという人間の根源的な欲求は、消えてなくなりそうにはない。チケット販売などを手掛けるぴあ <4337> [東証P]グループのぴあ総研によると、22年のライブ・エンターテインメント市場の規模(速報ベース)は前年比84%増の5652億円だった。コロナ禍前の9割の水準まで回復したという。

 一方、オンラインライブ市場は前年比9%減の466億円と成長は鈍化した。コロナ禍では多くのオンラインライブが開催され、メタバース(仮想空間)市場が勃興したものの、ここにきてオンラインからリアルへの逆回転が起きている。

 日本では規模の大小は抜きにして、すでに数々の音楽フェスが開催されている。6月だけでみても日比谷音楽祭は4年ぶりのフル開催となる。埼玉と横浜ではレゲエ音楽のフェスが開かれる予定だ。

 そして7~8月には4大フェスとされる「フジロックフェスティバル」、「サマーソニック(サマソニ)」、「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル(ロッキン)」、「ライジング・サン・ロック・フェスティバル」が控えており、多くの音楽ファンを魅了すると期待されている。

●フェスの客層は拡大、開催地には宿泊需要の恩恵

 フェスが持つコンテンツとしてのパワーは、音楽だけにとどまらない。

 昨年、「ロッキン」の会場が茨城県の国営ひたち海浜公園から、千葉市の蘇我スポーツ公園に移ったことが話題となった。再開に向けた調整がつかなかったことが背景にあるとされているが、これを受けて急遽、ひたち海浜公園では、ラジオ局の茨城放送が主催する「Lucky Fes(ラッキーフェス)」の開催が決まった。

 茨城放送を傘下に持つビジネススクール運営のグロービス(東京都千代田区)はラッキーフェスを通じ、地方創生につながる新たなビジネスモデルの構築を目指している。前年は茨城の食材などが楽しめるフードエリアなどを用意したが、今年も「茨城」の魅力度向上と地元経済の活性化につながるフェスとするもようだ。

 世代によっては、野外フェスに参加するのは若者が中心というイメージを持つ人は多いだろう。だが、会社の仲間や家族を連れて観光も兼ねて参加する観客も増えており、客層にも広がりが出ているようだ。更に、一般的なコンサートやライブと比べて観客の滞在時間は長く、近隣の宿泊施設や商業施設の売り上げ増にもつながると期待されている。ラッキーフェスをはじめとした新たなフェスの姿が今後、日本全国に広がる可能性が高まっている。

●米フェス運営株にも浮揚力

 米国の株式市場でも、フェスが持つ潜在的な成長性に熱い視線が注がれている。米国3大フェスの「ボナルー・フェスティバル」は6月に開かれる予定だが、運営するライブ・ネイション・エンターテインメント<LYV>の株価は5月に入り2割の上昇と堅調だ。米国のチケット販売で7割近いシェアを持つとされている同社は、業績回復が鮮明となっている。

 3月22日には香港拠点のイベント運営会社の株式について過半数の取得を発表するなど、同社は北米以外での事業拡大に注力する。ライブネイションは日本法人も持ち、東京都にある有明アリーナの管理運営のための特別目的会社に、電通グループ <4324> [東証P]やアミューズ <4301> [東証P]などとともに出資している。

 毎年4月に米カリフォルニア州で開かれる世界最大級のフェス「コーチェラ・フェスティバル」を運営する米興行大手のアンシュッツ・エンターテインメント・グループ(AEG)も、日本での成長基盤の構築に努めている。21年には大阪府が、同社と三菱商事 <8058> [東証P]系の三菱商事都市開発、関西電力 <9503> [東証P]系の関電不動産開発の3社による共同企業体を、西日本最大級のアリーナとして整備が計画されている通称「吹田アリーナ」の優先交渉権者に選定している。

 外資系イベント運営会社のノウハウをもとに、新たな大規模フェスが相次いで企画されるシナリオが横たわっている状況にある。

●音響・映像制作関連に追い風

 フェス文化の盛り上がりで恩恵を受ける企業の筆頭格として挙がるのは、まずは音響・映像関連企業だろう。

 映像制作のIMAGICA GROUP <6879> [東証P]は、音楽ライブ向けの演出も手掛けている。高臨場感ライブビューイングなどの新たな映像体験の提供にも取り組んでおり、先端分野での技術力をもとにエンタメ業界をサポートしている。25年度には「ライブエンタテインメント事業」の売上高を100億円(22年度実績は41億円)に伸ばす計画を掲げている。フェスの拡大は同社の成長に一段と寄与しそうだ。

 映像・音響設備を提供するヒビノ <2469> [東証S]は、24年3月期の売上高が前期比10.9%増の465億円、最終利益が同64.6%増の10億円となる見通しだ。今期は大型案件が寄与し、売上高は2期ぶりに過去最高を更新する計画で、コンサート市場についても中期的にはコロナ禍前を上回る規模に拡大すると予想する。株価はコロナ禍前の19年の高値2907円と比べて約半値の水準にとどまっており、割安感も意識される。

 ノーリツ鋼機 <7744> [東証P]は、パイオニアから独立したDJ機器メーカーのAlphaTheta(アルファシータ、横浜市西区)の買収を20年に発表した。23年12月期第1四半期(1-3月)の音響機器関連事業とアルファシータ事業はともに増収増益で、業績の下支え要因となっている。ティアック <6803> [東証S]はプロ用の音響機器で高いブランド力を持つ。

●楽器・レンタル需要も拡大か

 フェスで演奏されるのはロックやクラブミュージックだけではない。ジャズやラテン音楽など、さまざまなジャンルを融合して演奏するアーティストもステージに立つ。全国各地でフェスの開催が増え、演奏者の裾野が広がれば、楽器の購入ニーズが高まりそうだ。

 楽器関連では、電子ピアノなどでヤマハ <7951> [東証P]やローランド <7944> [東証P]、河合楽器製作所 <7952> [東証P]が知られているが、ホンダ <7267> [東証P]の自動車販売を手掛けるバナーズ <3011> [東証S]は、オーボエやファゴットの販売・メンテナンス事業を展開する企業を傘下に持つ。

 ニシオホールディングス <9699> [東証P]子会社の西尾レントオールはイベント用テントや会場設営用品などのレンタルを行っており、フェスの開催拡大の恩恵を受けそうだ。音楽アーティストのファンサイト運営のSKIYAKI <3995> [東証G]にも、チケット販売などの追い風となる公算が大きい。

●韓流も要マーク、放送・人材派遣にも波及か

 前述の「コーチェラ」では、今年度のヘッドライナー(主役に相当)に韓国の人気女性グループの「BLACKPINK」が抜擢された。今や、K-POPを抜きにしてエンターテインメント業界の今後を語るのは難しい状況だ。

 Birdman <7063> [東証G]は、韓国発の大型音楽フェスで、観客が水鉄砲を使ったバトルなどを楽しむ「WATERBOMB」を、今年7月に日本で初めて開催すると発表。東京と大阪、名古屋の3大都市圏で開く予定で、エンターテインメント事業の更なる成長につなげる構えだ。日韓関係の改善による両国の文化的交流の活発化が見込まれるなか、韓流コンテンツの配信と所属アーティストの日本でのマネジメント業務を手掛けるストリームメディアコーポレーション <4772> [東証G]も要マークだろう。

 このほか、グループ企業が米AEGの音楽興行部門と共同事業を展開するエイベックス <7860> [東証P]や、「乃木坂46」のKeyHolder <4712> [東証S]、放送事業のWOWOW <4839> [東証P]やスペースシャワーネットワーク <4838> [東証S]、映像関連の人材派遣を手掛けるクリーク・アンド・リバー社 <4763> [東証P]なども関連銘柄として位置づけられそうだ。

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