【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─経済正常化に支えられ、年末にかけて高値を目指す <GW特集>
「経済正常化に支えられ、年末にかけて高値を目指す」
●改善する国内景況感、中国の回復も追い風に
2023年後半の東京株式市場は、途中調整を挟みながらも上昇基調を続けることが想定される。国内では経済再開や好調な企業業績などが株価の後押し要因となる。また、米国については金融政策やそれに伴う景気の動向がリスク要因だが、急減速は避けられると予想する。
年末までの日経平均株価の予想レンジは2万7500円~3万0500円。年末にかけて高値を目指すことを想定する。21年9月の高値3万0795円をうかがう場面もありそうだ。
当面の注目ポイントは、5月上旬にピークを迎える23年3月期の決算発表だ。4月3日に公表された日銀短観では、大企業製造業の23年度の経常利益計画は前年比2.7%減となっている。内訳では素材業種が同5.4%減、加工業種が同1.5%減との計画。非製造業も同3.5%減で、短観でのアンケートによる調査では経営者は慎重な見通しだ。上場企業の24年3月期業績予想もガイダンスでは減益になる可能性が大きい。
ただ、新型コロナ禍からの経済正常化で国内の景況感は改善してきている。5月8日には新型コロナの感染法上の扱いが2類相当から季節性インフルエンザと同等の5類へ移行される。また、現在は認められていない中国からの団体旅行もいずれ解禁になるなど、消費はさらに喚起される公算が大きい。九州や北海道で半導体工場の建設が進むほか、円安を背景に製造業の国内回帰の動きもある。日銀短観で23年度の大企業製造業の設備投資は前年比5.8%増と、投資意欲は強い。
中国ではロックダウンからの経済正常化を急ぐ動きがある。今年のGDP成長率目標は5%だが、昨年7~9月期が3.9%、10~12月は2.9%と減速しており、成長のためには加速させる必要がある。最大の貿易相手国の回復はメリットになる。
米国では金融政策が転換点を迎える。5月2日~3日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.25%の利上げがコンセンサスだが、これで利上げが打ち止めになる可能性が指摘されている(本稿執筆は4月26日)。インフレを意識していたものが、先行きの減速を見込んだ舵取りに変わる公算が浮上してきている。予断は許さないものの、ソフトランディングへの期待感が高まりつつある。
●企業業績は期を追うごとに増額へ、株主還元の強化も下支え
24年3月期の企業業績の環境は良好で、期初に慎重予想だとしても期を追うごとに上方修正される展開が想定される。また、PBR1倍割れ企業に対して東京証券取引所などからプレッシャーがかかっている。24年1月には新NISA(少額投資非課税制度)が始まることもあり、増配など株主還元を積極化させる企業も増えそうだ。これも株価の下支え要因となる。
決算関連では、24年3月期に 半導体不足の影響やサプライチェーン(供給網)、資源高の影響が一巡するトヨタ自動車 <7203> [東証P]、ホンダ <7267> [東証P]など自動車メーカーのほか、デンソー <6902> [東証P]、アイシン <7259> [東証P]などの部品メーカーも「挽回生産」が進むとみる。また、中国の設備投資ではファナック <6954> [東証P]、SMC <6273> [東証P]、ダイフク <6383> [東証P]などの主力株には業績改善が見込まれ、押し目買いが有効となろう。
半導体市況について前半は低迷し、年度後半からの回復がコンセンサス。株価は回復を先取りする動きが見られる。製造装置ではテスターのアドバンテスト <6857> [東証P]、パワー半導体にも強いディスコ <6146> [東証P]のほか、テスト工程の東京精密 <7729> [東証P]、先端化学品のトリケミカル研究所 <4369> [東証P]、超純水装置の野村マイクロ・サイエンス <6254> [東証P]などにも関心を払っておきたい。
内需関連で業績に安心感があるのは、引き続き経済再開やインバウンドの拡大に関する企業となる。4月以降は中国からの入国者に対する水際対策も緩和されており、訪日外客数はさらに増加することが見込まれる。
経済再開関連ではANAホールディングス <9202> [東証P]、JR東海 <9022> [東証P]、高島屋 <8233> [東証P]などの主力銘柄のほか、土産用限定菓子の寿スピリッツ <2222> [東証P]、鉄道やホテル、遊園地などの西武ホールディングス <9024> [東証P]、外食、ホテルなどを展開するロイヤルホールディングス <8179> [東証P]など。花王 <4452> [東証P]、資生堂 <4911> [東証P]、ロート製薬 <4527> [東証P]などヘルスケア関連にも妙味がありそうだ。
(4月26日 記/次回は5月28日配信予定)
■和島英樹(Hideki Wajima)
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
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