ネクスグループ Research Memo(7):黒字化を維持しながら、IoT関連事業の収益拡大と新事業の拡大に注力
■今後の見通し
1. 2023年11月期の業績見通し
ネクスグループ<6634>の2023年11月期の連結業績については、売上高が1,467百万円(前期比46.8%減)、営業利益が146百万円(同65.7%減)、経常利益が165百万円(同68.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が142百万円(同82.3%減)を見込んでいる。インターネット旅行事業及びブランドリテールプラットフォーム事業から撤退したことで、連結売上高は大幅に減少するものの、黒字化を維持しながら、IoT関連事業の収益拡大と、新たな収益の柱となる新事業の拡大に注力する方針だ。
2021年11月に公表した事業構造改革では、「慢性的な営業赤字の解消」と「財務基盤の強化」を目的としている。このうち「慢性的な営業赤字の解消」については、経営資源の選択と集中のため、損失を計上しており早期の業績回復が見込めないと判断したインターネット旅行事業及びブランドリテールプラットフォーム事業について、事業から撤退した。また、当該事業から撤退することにより連結売上高も大幅に減少するため、今後の収益の柱となる新事業への進出も進めている。具体的には、IoT市場のなかでも今後の成長率が高い「デジタルコンテンツ分野」への取り組みとして、同社株主の(株)實業之日本社の電子書籍事業をサポートする実業之日本デジタルを2022年2月に子会社化したことで事業参入した。實業之日本社は既に作家との委託契約等により複数作品の取り扱いがあるため、実業之日本デジタルには創業時から既に一定程度の売上高が確約されており、リスクを減らした形での新規事業参入が可能となった。また、デジタルコンテンツ事業の今後の展開を見通すうえで注目されている「メタバース分野」への進出のため、同年2月にポリゴンテーラー及びポリゴンテーラーコンサルティングに資本参加、同年3月にはワイルドマンを持分法適用関連会社とした。このようにM&Aを活用することで、リスク低減を図ったうえで参入し、事業開始時から安定した売上の確保を実現した。既存事業である「IoT×新技術」を活用した新サービスの提供とともに事業構造改革も推進することで、安定的な収益・財務基盤の構築は順調に進むと弊社では見ている。
2. セグメント別見通し
(1) IoT関連事業
コロナ禍を発端とする世界的な部品調達の大幅な遅れなど、先行きは依然として不透明であることから、M2M分野における設備投資の抑制などの動向については、引き続き状況を注視しながら製造委託先の継続的な管理・監督を行うとともに、信頼できる新規製造委託先の開拓を進め、市場のニーズに対応した製品群のさらなる拡充に取り組んでいく。
今後の動向としては、「IoT×ブロックチェーン技術」「IoT×AI技術」など、「IoT×新技術」を活用した新たなサービスの提供を目指す。IoTについては、国内外の市場に向けて今後普及が見込まれるLPWAや第5世代移動通信システム「5G」、画像認識などのAI技術といった、同社が培ってきた自動車テレマティクスソリューションをはじめとする様々な分野に対するIoT技術をベースにする考えであり、これらの独自性や強みが競争力のある製品の創出につながるものと弊社では考えている。
エッジAI端末のNCXX AI BOX「AIX-01NX」は、国際的評価の高い(株)サイバーコアの「Re-ID(Re-Identification 再認識)」※技術を搭載しており、人流解析やOD調査、物体追跡における精度、リアルタイム性、通信費、個人情報問題などの課題を解決するソリューションに導入されつつある。同製品は、NVIDIA Corporationが提供するGPUを利用したリアルタイム画像認識技術と、マルチキャリア対応の高速モバイル通信技術を搭載している。今後も、ユースケース別のAIソフトウェア群を持つAI活用プラットフォームサービスのエッジデバイス認定の取得を進めるとともに、AIによって解決したい課題を持つ顧客にスムーズな導入・活用を支援し、様々な業種業態におけるビジネス機会を創出していく。リアルタイム画像認識技術は、顔認証システムや監視カメラの映像分析などのセキュリティ分野、工場ラインでの不良品検出、介護分野での見守り、河川水位監視などの防災、自動車の自動運転や運転アシストなど様々な分野に展開が期待される技術であることから、将来的な収益拡大に貢献する材料の1つになる可能性が高いと弊社では見ている。
※複数カメラによるビデオ映像群からカメラ間を移動する車両や人物を検出後、それぞれにIDを付与し、カメラ間を移動する車両・人物の動線管理やトレースを可能とする技術。
データ通信端末については、第5世代移動通信システムである5Gに対応した「UNX-05G」を2023年初めに販売する予定だ。2023年11月期以降は、既存のLTE製品の販売が継続するとともに、新たな5G製品の販売に加え、旧LTE製品から5G製品への切り替え需要を見込んでいる。5Gインフラの整備はスマートフォン向けが優先されており、IoT用の製品は出揃っていない。同様の端末が少ないなかで一定の競争優位性を有しており、同事業の今後の売上増強に大きく寄与するものと弊社では見ている。
(2) メタバース・デジタルコンテンツ事業
デジタルコンテンツ分野については、實業之日本社の新規及び過去コンテンツの電子化、独自の営業ルートでの新規コンテンツの電子化を行うことにより、高い成長を見込んでいる。またフランス、台湾など海外の電子書籍事業者との取引が好調であることから、2023年からは米国、韓国、タイでの販売を予定している。メタバース分野については、ワイルドマンで、メタバースに必要なVRワールドやVRコンテンツの受託開発の案件受注と、VRゲームコンテンツの開発、ユーザーがメタバースを楽しむためのモーショントラッキングデバイスの開発などに注力する。
同社は、同事業を通じてWeb3.0分野へ積極的な投資を行う方針であり、新たなM&Aについても継続的に検討している。既存事業であるIoT関連事業とのシナジー創出を見込めることから、第2の収益軸としてさらなる成長が期待できると弊社では見ている。
(3) 暗号資産・ブロックチェーン事業
引き続きNCXCを利用したトークンエコノミーの形成と価値向上に取り組む。価値向上に向けた取り組みとしては、GameFi分野での活用を推進する。第1弾として、2023年1月にスマートフォンゲームアプリ「SIX POKER」の大幅アップデートを実施し、将来的にはブロックチェーンゲームに特化したゲーム配信プラットフォーム「NCXC GameFiプラットフォーム」の構築を目指している。同プラットフォームでは、自社ゲームタイトルだけでなく、アライアンスを組んだ他社のゲームタイトルなど複数のゲームでNCXCを利用できる仕組みを提供し、一部のNFTは他のゲームでも利用可能とすることを予定している。今後は、「NCXC GameFiプラットフォーム」の開発と並行して、プラットフォーム上でゲームタイトルを提供するアライアンス先の開拓にも注力していく。暗号資産の価値向上にはユースケースを増やし流通を促進することが課題となることから、これらの取り組みは利用機会拡大に寄与すると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)
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提供:フィスコ