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【特集】春の米企業決算スタート、「金融システム不安」後退からの本格反騰なるか <株探トップ特集>

3月に市場を襲った金融システム不安を受け、米国では大手銀行や地銀の決算に対する関心が高まっている。銀行の融資姿勢が厳格化すれば、景気後退に向けた懸念も膨らみそうだ。

―銀行決算への注目度高まる、景気後退懸念でディフェンシブ株が優勢の展開も―

 波乱に揺れた米国株式市場は、落ち着きを取り戻しつつある。金融システム不安を背景に下落したNYダウは、足もとではその下落分を回復し一段の上昇をうかがう展開となっている。市場関係者の視線は、再び米金融政策に向かいつつあるが、依然として米地銀に対する警戒感は残る。そんななか、今週末から米企業決算が本格化する。焦点となっている米金融機関に加え、ハイテク企業の業績はどうなのか。その内容次第で、相場の物色の方向が変わる可能性もある。

●銀行危機への警戒感は後退も依然不透明感は残る

 “春の嵐”とも評された、米国を中心とした金融システム不安は足もとでは後退している。3月10日の米シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻に端を発した銀行危機は、欧州に飛び火しクレディ・スイス・グループ<CS>が同業のUBSグループ<UBS>に救済買収されるに至った。この金融不安を背景に、NYダウは一時、約5ヵ月ぶりの安値水準に下落した。しかし、3月下旬にSVBを米地銀のファースト・シチズンズ・バンクシェアーズ<FCNCA>が買収することを発表。これを機に、金融不安は後退した。足もとでNYダウは3万3500ドル台と3月上旬の水準まで値を戻し、金融不安による下落分を埋めた。「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数も、危険水域と呼ばれる20を割り込み平常状態を取り戻している。

 ただし、金融不安の先行きにはなお不透明感は残る。それだけに、米決算シーズンの先陣を切る14日のJPモルガン・チェース<JPM>やシティグループ<C>、18日のバンク・オブ・アメリカ<BAC>といった銀行決算への注目度は高いものとなっている。

●米金融業界ではCMBSの状況に関心高まる

 米大手銀行の場合、経営不安が高まった地銀から流出した預金の受け入れ先となったとみられるが、預金増減額の規模や景気動向を踏まえての今後の融資姿勢などが関心を集めている。もし、米銀行に融資を厳格化する動きがあれば、それは景気後退への不安を高める要因ともなるからだ。

 特に、「米国の商業用不動産絡みの動向が市場では注視されている」(アナリスト)という。銀行の融資態度が厳しくなることで、商業用不動産向け貸付が不良債権化することが警戒されている。具体的には貸付のなかで商業用不動産ローン担保証券(CMBS)の比率の高い中堅・中小銀行を警戒視する動きが強い。前出のアナリストは「基本的には金融不安は一巡したとみられる。しかし、依然として米地銀を中心に破綻懸念は残るだけに、今回の決算内容は厳しく精査されるだろう」とみる。金融不安で株価が急落した米地銀のファースト・リパブリック・バンク<FRC>の決算は24日に予定されているが、今後、米地銀株の動向が再び関心を集めることが見込まれる。

●半導体関連企業は堅調期待も成長性で明暗も

 また、大手テック企業やハイテク企業の決算発表は、18日のネットフリックス<NFLX>を皮切りに本格化する。高PER企業が多いハイテク株の場合、米連邦公開市場委員会(FOMC)による米金融政策の結果がどうなるかに左右される面も大きい。いまのところ、5月FOMCの0.25%利上げで打ち止めとなり、年後半からは利下げに転じるとの観測が市場には根強くハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は、年初から底堅く推移している。

 そんななか、市況底打ち期待を背景に堅調な値動きを続けるのが半導体株だ。19日のオランダの半導体製造装置大手、ASMLホールディング<ASML>や20日に予定されている台湾の台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>、それに27日のインテル<INTC>や5月中下旬のアプライド・マテリアルズ<AMAT>やエヌビディア<NVDA>の業績発表が注目されている。

 半導体関連に関しては、新たに対話型の人工知能(AI)であるチャットGPTが登場するなか、AI絡みでの半導体需要の拡大も注目されている。それだけに「同じ半導体業界でも、AIなど成長分野に強い企業とパソコンなど伝統的分野を中心に事業展開する企業では成長力に差は出てくるだろう」(市場関係者)との見方がある。加えて、大手テック企業などでは19日のテスラ<TSLA>や26日のメタ・プラットフォームズ<META>、5月4日のアップル<AAPL>の決算内容などが注目されている。

●米景気後退懸念が台頭しディフェンシブ株に活躍期待

 更に、米景気に後退懸念が高まるなか、薬品やヘルスケア、通信などを含むディフェンシブ関連株に今後、物色のシフトが進むこともあり得る。14日のユナイテッドヘルス・グループ<UNH>や18日のジョンソン・エンド・ジョンソン<JNJ>、21日のプロクター・アンド・ギャンブル<PG>、25日のベライゾン・コミュニケーションズ<VZ>、27日のメルク<MRK>、5月2日のファイザー<PFE>の決算なども注目されそうだ。


■主な米国企業の決算スケジュール
4月 14日  JPモルガン、シティ、ウェルズファーゴ、ユナイテッドヘルス
  17日  チャールズシュワブ
  18日  バンクオブアメリカ、ネットフリックス、ジョンソン・エンド・ジョンソン
  19日  テスラ、ASML、ラムリサーチ、モルガンスタンレー、アルコア
  20日  台湾積体電路製造(TSMC)
  21日  プロクター・アンド・ギャンブル
  24日  コカ・コーラ、ファースト・リパブリック・バンク
  25日  マクドナルド、ビザ、スポティファイ、ベライゾン
  26日  メタ・プラットフォームズ、ボーイング
  27日  メルク、イーライリリー、インテル、スナップ
  28日  シェブロン
5月 2日  ファイザー、スターバックス
   3日  クアルコム
   4日  アップル
  10日  ディズニー、ファーストシチズンズバンク
  18日  アプライドマテリアルズ
  24日  エヌビディア
(注)予定は変更されることがあります。

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