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4506 住友ファーマ

東証P
609円
前日比
-2
-0.33%
PTS
601円
23:15 11/22
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
2.12 5.77
時価総額 2,423億円
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ファンペップ Research Memo(1):世界で初めてペプチドのみによる抗体産生を確認、乾癬治療薬の開発が一歩前進


■要約

ファンペップ<4881>は大阪大学大学院医学系研究科の機能性ペプチドの研究成果を実用化する目的で、2013年に設立されたバイオベンチャー。独自開発した機能性ペプチドをベースとした抗体誘導ペプチド技術により、高額な抗体医薬品の代替となる医薬品の開発に取り組んでいる。また、2022年10月にアンチエイジングペプタイド(株)(以下、AAP)を子会社化し、化粧品向けなど医薬以外の事業分野の収益化を目指す。2022年12月期より連結決算を開始した。

1. 抗体誘導ペプチドの特徴と優位性
同社独自の技術である抗体誘導ペプチドは、キャリア※1となる機能性ペプチド「AJP001」に標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープ※2を組み合わせることで、標的タンパク質の働きを阻害する抗体を体内で産生できることが特徴となっている。生物由来のキャリアを用いる他の競合技術は、反復投与時に効果が減弱する可能性があることや製造上の品質管理が難しく副作用を引き起こすリスクもあるが、同社の抗体誘導ペプチドはこれらの課題を解消できる優位性を持つ。また、抗体医薬品と比較すると製造コストが大幅に低減できる可能性があるほか、体内で抗体が自己生成されるため、薬効の持続性といった面でも優位性があると見られ、抗体医薬品の代替薬になり得る新たなモダリティ(創薬技術)として国内外から注目されている。

※1 キャリアは自己タンパク質に対して抗体を産生させる役割を果たす。
※2 エピトープは抗原決定基とも呼ばれ、免疫系、特に抗体、B細胞、T細胞によって認識される抗原の一部。抗原の表面にある1~6個の単糖、または5~8個のアミノ酸残基で構成される。


2. 主要開発パイプラインの動向
2023年2月に発表された尋常性乾癬を適応症とした抗体誘導ペプチド「FPP003」の第1/2a相臨床試験の速報結果によれば、高用量群の被験者9人中7人で抗体価の上昇が確認され、観察期間終了時点の120日までその効果が持続したこと、また安全性及び忍容性の問題もなかったことが確認された。有効性に関しては現在データ解析中であるものの、ヒトでペプチドのみ による抗体価が確認されたのは世界でも初めてであり、抗体誘導ペプチドによる創薬の可能性が広がったものとポジティブに評価される。今後の開発方針については北米で開発・商業化権に関するオプション契約を締結している住友ファーマ<4506>が詳細データを見て判断することになり、開発を進める場合はオプションを行使して住友ファーマにて臨床試験を進めていくことになる。一方、皮膚潰瘍(褥瘡、糖尿病性潰瘍)を適応症とした「SR-0379」の第3相臨床試験については、2022年11月に速報結果で主要評価項目である「簡単な外科的措置に至るまでの日数」を達成できなかったと発表した。ただ、KOL(Key Opinion Leader)の医師からは特定の被験者において効果を確認できるデータが出ているとの見解も得られていることから、今後は導出先の塩野義製薬<4507>※と協議して2023年内にも開発方針を決定する。そのほかのパイプラインでは、乾癬を適応症とした「FPP005」の第1相臨床試験を2023年12月期に、花粉症や片頭痛を対象とした新規開発化合物の前臨床試験を2023年後半に開始する予定にしている。

※塩野義製薬と全世界を対象としたライセンス契約を2015年に締結(契約総額は100億円)している。


3. 業績動向
2022年12月期の連結業績は、事業収益で1百万円(前期の単体実績は126百万円)、営業損失で1,169百万円(同745百万円の損失)となった。事業収益は、前期に計上した「SR-0379」のマイルストーン収入125百万円がなくなったことが減収要因となった。費用面では「SR-0379」の治験費用や抗体誘導ペプチドの開発費など研究開発費が同250百万円増加したほか、AAPの子会社化に伴う償却費の増加などにより販管費が同48百万円増加した。2023年12月期の業績見通しについては、同社グループの事業収益が研究開発の進捗状況や新規提携候補先等との交渉状況により大きく変動する可能性があるため、現時点では未定としている。なお、研究開発費は900百万円、販管費は300百万円を見込んでおり、事業収益がなければ前期並みの損失が続くことになる。2022年12月期末の現金及び預金は2,245百万円となっており、当面の事業活動資金は確保できている。

4. 今後の成長戦略
同社では、今後も独自技術である抗体誘導ペプチドの優位性を生かして、抗体医薬品が既に発売されている「炎症領域」を中心に、2年に1本のペースでパイプラインを拡充していく方針となっている。抗体誘導ペプチドの開発対象領域における抗体医薬品の市場規模は大きく、乾癬など炎症性疾患領域だけでも年間400億米ドルの規模に達していると見られる。このため、今後開発に成功すれば同社の企業価値は飛躍的に向上することになり、また、低コストで量産化できることから、患者負担や医療財政の軽減にも貢献することにもなる。まずは第1/2a相臨床試験で好結果の出た「FPP003」の動向に注目したい。

■Key Points
・大阪大学発のバイオベンチャーで、独自開発した抗体誘導ペプチド技術を用いて抗体医薬品の代替医薬品の開発に取り組む
・乾癬治療薬「FPP003」は臨床試験で世界初のペプチドのみ による抗体産生を確認
・対象市場規模が2兆円を超える「FPP005」は2023年12月期に第1相臨床試験を開始予定
・幅広い慢性疾患等を対象に抗体誘導ペプチドの開発を推進していくと同時に、子会社で創薬以外の事業の拡大を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SI》

 提供:フィスコ

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