ケアネット Research Memo(2):戦略的提携やM&Aにより事業のDXによるハイブリッドモデルを推進
■会社概要
1. 会社沿革
ケアネット<2150>は医師向けの医療情報の提供を目的に、1996年7月に現 代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)の大野元泰(おおのもとやす)氏らによって設立された。当初は衛星通信放送「スカパー!」にて「ケアネットTV・メディカルCh.」を放送していたが、2000年よりインターネットを使った医師(医療従事者含む)向けの無料会員制サイト「クラブ・ケアネット」(現「CareNet.com」)を開設し、同サイトの会員を基盤としてインターネットを活用した製薬企業向けサービスへと展開した。
2000年10月にはマーケティング調査サービスを、2001年11月には現在の主力サービスとなる医薬営業支援サービスを開始し、その後業績を拡大した。2014年以降は国内外企業との提携を活発に進めて既存サービスを強化するとともに、新規サービスの開発・育成にも注力している。なお、マーケティング調査サービスは2014年12月にマクロミル<3978>との合弁で設立した(株)マクロミルケアネット(2016年12月期に株式を一部売却し、非持分法適用関連会社となる)に事業移管した。
2017年3月には取締役で最高執行責任者(COO)であった藤井勝博(ふじいかつひろ)氏が代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)に就任した。経営体制としては従前と大きく変わらないが、代表取締役会長となった大野氏は主に海外案件やM&Aなどの対外折衝を担当する。2018年5月には(株)メディカルインキュベータジャパンとベンチャー企業投資に関する業務提携を締結し、両社が中心となって製薬・医療機器メーカーの臨床開発から販売までのプロセスをトータルで支援するコンソーシアム「SSI(Successful Support for Innovator)」を設立した。
2020年以降は、成長戦略として新規事業開発のための子会社を相次いで設立したほか、戦略的提携やM&Aを積極化している。M&Aでは2020年4月に(株)フェーズワンから手技動画メディア「がん@魅せ技」運営事業を取得したほか、2021年2月に病気・健康に関する相談ができる総合ヘルスケアメディア「Doctors Me」を運営する(株)アドメディカを子会社化した。また、ヘルスデータサイエンス事業の開発に向けて、産業医科大学ヘルスマネジメントシステムや東京海上ホールディングス、メディカル・データ・ビジョン<3902>と戦略的提携を2020年に締結した。2021年11月には、二松学舎大学国際政治経済学部の准教授である小久保欣哉氏との共同出資により、(株)ヘルスケアコンサルティングを設立した。ヘルスケア・ライフサイエンス領域のRWDやQOL・PRO、PHRデータなどのあらゆる医療ビッグデータを分析し、戦略的なエビデンスを創出することを目的として、新たに事業を開始した。2022年8月には、SMO※1企業であるYMGサポート(株)を子会社化することで合意し、同社が有する医師会員資産・インターネット情報提供技術等とYMGサポートが有する医療機関・専門医のマネジメントノウハウ等を融合することにより、SMO事業のDXを加速する。また、同年10月にはCSO※2事業(MR業務代行)において実績のあるコアヒューマン(株)の株式を取得し、子会社化することで合意した。現在展開しているインターネットによる医薬品情報の提供サービスモデルに加えて、人とインターネットを融合したハイブリッドな情報提供モデルの構築を進める。同年12月にはCRO※3企業である(株)クレイスの全株式を取得し子会社化した。クレイスが有する優秀なCRA※4人材と、同社が有する医師会員資産・インターネット情報提供技術等を融合することで、CRO事業のDXを進め、治験プロセスにおける新しいソリューションの開発に注力する。
※1 SMO:Site Management Organization(治験施設支援機関)の略で、新薬開発を行う製薬企業に代わり、治験実施医療機関から委託を受けて、医療機関の治験業務を支援する機関を指す。
※2 CSO:Contract Sales Organizationの略で、医薬品販売業務受託機関を指す。派遣MRが主なサービスである。
※3 CRO:Contract Research Organizationの略で、製薬会社が医薬品開発のために行う治験業務(臨床開発)を受託・代行する企業を指す。日本語では「開発業務受託機関」と表記する。
※4 CRA:Clinical Research Associateの略で、医薬品開発のための治験(臨床開発)が適切に行われているかを監視する業務を行う者を指す。日本語では「臨床開発モニター」や「モニター」と表記する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)
《SI》
提供:フィスコ