明日の株式相場に向けて=「半導体」はバリュー系グロース株の宝庫
きょう(14日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比175円高の2万7602円と反発した。足もとのマーケットは模様眺めムードに支配されやすい時間帯にある。日本時間今晩10時半に発表される1月の米消費者物価指数(CPI)を控え、「売り買いともに一方向にポジションを傾けにくい」というのが前日の米国株市場、そしてきょうの東京市場に当てはまる共通フレーズともいえる。
だが、前日の米国株市場ではNYダウが370ドルあまりの上昇でほぼ高値引けとなり、模様眺めと言うには少々勢いが強かった。ダウがもう100ドルも上げ幅を広げれば、買い方の歓声が聞こえてきそうな強調地合いで、米CPI発表に際し概ねネガティブサプライズはないと事前に高を括っているようなフシがみられる。一方、東京市場の方は1月下旬に日経平均が連日マドを開けて上昇してからは上値が重く、2万7000円台半ばでのもみ合いが続いている。前週6日にはもみ合い上放れの兆しを見せたものの、チャートでいうところの三羽烏(小さめの陰線3本)を形成し気迷いムードを反映、その後も千鳥足で酔っ払ったような値運びだ。だが、きょうに限って言えば日経平均は伸び悩んだとはいえ、個別株の8割が上昇、更にストップ高銘柄も続出するなど物色意欲の強さが際立った。
市場関係者に聞くと「既に売りでエントリーしている投資家がかなり少ない。次期日銀総裁が山口氏、もしくは中曽氏のケースを想定してショートを積んでいた向きは、植田氏が政策修正にそれほど前向きではないという見方が強まるなか、しぶしぶ手仕舞いしたが、それがきょうの日経平均の上昇でほぼ出切った感じ」(中堅証券マーケットアナリスト)という。米CPI発表前でも緊迫感に若干乏しいのはそうした事情があるようだ。個別株の動きはともかく、きょうの日経平均の上昇は、植田氏を次期総裁に起用する人事案の国会提示に合わせたショートカバー、いうなれば“ご祝儀買い戻し”効果だった。
ところがこのタイミングで、米大手資産運用会社のブラックロックが、傘下の調査会社を通じ13日付で日本株の投資判断をアンダーウエートに引き下げたという。植田日銀新総裁の下での大規模緩和策修正に備えるという理由である。植田氏はかつて速水総裁時代に審議委員を務め、ゼロ金利政策を理論面で支えたという過去もあって、確かにタカ派というイメージはない。しかし、データ重視で政策を決めるというクールな政策スタイルは、今後日本でもインフレ圧力が強まった時には躊躇しない、というふうにもとれる。
振り返って、黒田日銀総裁は良くも悪くもアベノミクスに忖度した金融政策路線を貫いた。これが円安・株高の原動力となったことは間違いないが、ここにきてその弊害を指摘する声も強まりつつあった。したがって、次期総裁が“誰であっても”前方には政策修正の道筋しか見えてこない。極論すればポスト・クロダが仮に黒田東彦氏その人であったとしても、大規模金融緩和路線をこれからも十年一日のごとく続けることはほぼ不可能といえる。少なくとも歪みの根もととなっているイールドカーブ・コントロールは段階的に撤廃される方向となることは避けられない。これがブラックロックの日本株弱気の根拠となるのであれば仕方がない面もあるが、全体株価は個別企業の株価の集大成であるという観点に立てば、ミクロからのアプローチで覆すことは可能である。
その際、全体相場の牽引役となり得るのはやはり半導体セクターであろう。決算発表ラッシュはきょうで終了となるが、半導体セクターのフタを開いてみたら、個別ごとに跛行色は否めないものの、好業績銘柄の宝庫であることが確認された。しかもグロース(成長)株の範疇にありながらPERなど指標面でも割安感が強い銘柄がひしめいている。半導体業界向け直動案内機器を手掛ける日本トムソン<6480>、メモリー製品を手掛けるAKIBAホールディングス<6840>のほか、半導体商社系では東京エレクトロン デバイス<2760>、佐鳥電機<7420>、伯東<7433>などは要マークとなる。
あすのスケジュールでは、12月の第3次産業活動指数、1月の訪日外国人客数など。海外では1月の英消費者物価指数(CPI)、12月のユーロ圏鉱工業生産、12月のユーロ圏貿易収支、1月の米小売売上高、1月の米鉱工業生産・設備稼働率、12月の米企業在庫、2月のNY連銀製造業景況指数、2月のNAHB住宅市場指数、12月の対米証券投資のほか、米20年物国債の入札も予定される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年02月14日 20時19分
だが、前日の米国株市場ではNYダウが370ドルあまりの上昇でほぼ高値引けとなり、模様眺めと言うには少々勢いが強かった。ダウがもう100ドルも上げ幅を広げれば、買い方の歓声が聞こえてきそうな強調地合いで、米CPI発表に際し概ねネガティブサプライズはないと事前に高を括っているようなフシがみられる。一方、東京市場の方は1月下旬に日経平均が連日マドを開けて上昇してからは上値が重く、2万7000円台半ばでのもみ合いが続いている。前週6日にはもみ合い上放れの兆しを見せたものの、チャートでいうところの三羽烏(小さめの陰線3本)を形成し気迷いムードを反映、その後も千鳥足で酔っ払ったような値運びだ。だが、きょうに限って言えば日経平均は伸び悩んだとはいえ、個別株の8割が上昇、更にストップ高銘柄も続出するなど物色意欲の強さが際立った。
市場関係者に聞くと「既に売りでエントリーしている投資家がかなり少ない。次期日銀総裁が山口氏、もしくは中曽氏のケースを想定してショートを積んでいた向きは、植田氏が政策修正にそれほど前向きではないという見方が強まるなか、しぶしぶ手仕舞いしたが、それがきょうの日経平均の上昇でほぼ出切った感じ」(中堅証券マーケットアナリスト)という。米CPI発表前でも緊迫感に若干乏しいのはそうした事情があるようだ。個別株の動きはともかく、きょうの日経平均の上昇は、植田氏を次期総裁に起用する人事案の国会提示に合わせたショートカバー、いうなれば“ご祝儀買い戻し”効果だった。
ところがこのタイミングで、米大手資産運用会社のブラックロックが、傘下の調査会社を通じ13日付で日本株の投資判断をアンダーウエートに引き下げたという。植田日銀新総裁の下での大規模緩和策修正に備えるという理由である。植田氏はかつて速水総裁時代に審議委員を務め、ゼロ金利政策を理論面で支えたという過去もあって、確かにタカ派というイメージはない。しかし、データ重視で政策を決めるというクールな政策スタイルは、今後日本でもインフレ圧力が強まった時には躊躇しない、というふうにもとれる。
振り返って、黒田日銀総裁は良くも悪くもアベノミクスに忖度した金融政策路線を貫いた。これが円安・株高の原動力となったことは間違いないが、ここにきてその弊害を指摘する声も強まりつつあった。したがって、次期総裁が“誰であっても”前方には政策修正の道筋しか見えてこない。極論すればポスト・クロダが仮に黒田東彦氏その人であったとしても、大規模金融緩和路線をこれからも十年一日のごとく続けることはほぼ不可能といえる。少なくとも歪みの根もととなっているイールドカーブ・コントロールは段階的に撤廃される方向となることは避けられない。これがブラックロックの日本株弱気の根拠となるのであれば仕方がない面もあるが、全体株価は個別企業の株価の集大成であるという観点に立てば、ミクロからのアプローチで覆すことは可能である。
その際、全体相場の牽引役となり得るのはやはり半導体セクターであろう。決算発表ラッシュはきょうで終了となるが、半導体セクターのフタを開いてみたら、個別ごとに跛行色は否めないものの、好業績銘柄の宝庫であることが確認された。しかもグロース(成長)株の範疇にありながらPERなど指標面でも割安感が強い銘柄がひしめいている。半導体業界向け直動案内機器を手掛ける日本トムソン<6480>、メモリー製品を手掛けるAKIBAホールディングス<6840>のほか、半導体商社系では東京エレクトロン デバイス<2760>、佐鳥電機<7420>、伯東<7433>などは要マークとなる。
あすのスケジュールでは、12月の第3次産業活動指数、1月の訪日外国人客数など。海外では1月の英消費者物価指数(CPI)、12月のユーロ圏鉱工業生産、12月のユーロ圏貿易収支、1月の米小売売上高、1月の米鉱工業生産・設備稼働率、12月の米企業在庫、2月のNY連銀製造業景況指数、2月のNAHB住宅市場指数、12月の対米証券投資のほか、米20年物国債の入札も予定される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年02月14日 20時19分