戸田工業 Research Memo(1):酸化鉄で培った微粒子合成技術を深化させ、新素材、新製品を生み出し事業拡大
■要約
戸田工業<4100>は、磁器の絵付け、歴史的建造物などに欠かせない顔料である弁柄製造業として創業、2023年11月には創業200周年を迎える化学メーカーである。創業以来、酸化鉄トップ企業として酸化鉄で培った微粒子合成技術を深化させ、光学レンズ研磨剤用高純度酸化鉄、オーディオテープなどで使われる磁性酸化鉄、複写機・プリンター向けのトナー用材料、さらにはスマートフォンで多用される積層セラミックコンデンサ(以下、MLCC)向けに誘電体材料、電気自動車等で利用拡大が続くリチウムイオン電池(以下、LIB)用材料などで事業を拡大してきた。現在、機能性顔料事業(各種着色材料、環境関連材料)と電子素材事業(磁石材料、誘電体材料、軟磁性材料、LIB用材料等)の2事業で事業展開している。
1. 2023年3月期上期の業績概要
2023年3月期上期の連結業績は売上高18,760百万円(前年同期比17.4%増)、営業利益1,164百万円(同7.5%減)、経常利益2,286百万円(同22.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,554百万円(同0.2%増)となった。機能性顔料事業は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)からの回復で複写機・プリンター向けの材料、塗料向け材料、触媒向け材料が好調に推移、売上高は8,214百万円(同28.1%増)、セグメント利益は1,077百万円(同0.9%増)となった。電子素材事業は自動車市場の生産調整などの影響を受けたが、新規連結効果が大きく、売上高10,545百万円(同10.1%増)、セグメント利益1,550百万円(同0.8%増)を確保した。2事業でのセグメント利益は2,627百万円(同0.8%増)と微増益を確保したが、全社費用が1,462百万円(同8.6%増)と嵩み、減益となった。なお経常利益は持分法適用関連会社の収益が736百万円(同15.2%増)好調に推移、円安による為替差益319百万円(同344百万円増で差損から差益に改善)などもあり、営業外収支が大きく改善、経常利益は増益となり、親会社株主に帰属する四半期純利益は微増となった。
2. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期会社予想は売上高36,000百万円(期初計画比4,000百万円減額、前期比1.9%増)、営業利益1,800百万円(同200百万円増額、同28.5%減)、経常利益3,700百万円(同1,200百万円増額、同11.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,400百万円(同900百万円増額、同23.0%減)とした。売上高は市況に連動する分での下落が下期に見込まれるため大きく減額も、利益面では売上の減少影響は軽微で、上期の貯金もあり営業利益が多少増額、持分法利益、円安効果で営業外収益の大幅改善が見込まれ、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は増額修正を行った。
3. 中期事業計画の進捗
2022年3月期~2024年3月期の中期事業計画「Vision2023」について同社は営業利益で2022年3月期に最終年度の計画値を上回ったが、2023年3月期は原材料高騰、自動車生産の回復遅延、電子・情報機器の不振などで、一転、厳しい収益予想を余儀なくされた。足元2024年3月期上期までは厳しい環境が続くとみられるが、2023年に迎える創業200周年を超えて、次世代事業の拡大で2024年以降のビジョンとして「Go Beyond 200」の策定を行い、新たな飛躍を目指す。
■Key Points
・2023年3月期上期の連結業績は前年同期比17.4%増収、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比0.2%増益
・2023年3月期は1.9%増収予想。原材料高騰などで28.5%営業減益予想も、期初計画比で利益増額の見込み
・創業200周年以降のビジョン「Go Beyond 200」で新たな飛躍を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
《YI》
提供:フィスコ