明日の株式相場に向けて=「グッバイ アベノミクス」
きょう(12日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比3円高の2万6449円とわずかながら高く引け5日続伸となった。
日本時間今晩10時30分に発表される12月の米消費者物価指数(CPI)を前に、日米ともに模様眺めムードの地合いが想定されたが、前日に米債券市場ではCPI発表に先立って米長期金利が3.5%台前半まで低下し、これを好感する形で米株市場ではハイテク株中心に買いが入り、NYダウが続伸、ナスダック総合株価指数は4連騰となった。インフレ懸念の後退と合わせてFRBの金融引き締め策に対する警戒感も霧散したような状態で、足もとの米国株は楽観に傾いているようにも見える。ショートポジションを積み上げていた売り方にすれば慌てるところだ。
機関投資家は“CPIショック”を恐れ、前倒し的に保有株を軽くしているという観測が出ていたが、一方で昨年12月以降、先物絡みでショートを積み上げていた海外ヘッジファンドなどが、ポジション調整の買い戻しを入れている可能性もある。CPIの前哨戦ともいえる前週末の12月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数の伸びがコンセンサスを上回ったものの、平均時給の伸び率鈍化にスポットが当たり、NYダウは700ドル高と急速な切り返しをみせた。いわゆる「いいとこ取り」の相場だが、これは水鳥の羽音に驚いた売り方がショートカバーを急いだというのが真相ではなかったか。雇用統計に遅れて同日発表されたISM非製造業景況感指数が想定外の落ち込みをみせたことも、これに追い打ちをかけた。マーケットは今回の米CPIを恐れてはいない。こうなると目先、逆に株式市場は足もとをすくわれる可能性を注意しなければいけないのだが、良くも悪くも米インフレ収束に向けたレールが既定路線のように引かれている印象が強い。2月1日までの日程で行われるFOMCでは政策金利の引き上げ幅については0.25%との見方が主流で、これは今回のCPI発表によってブレることはないとの見方が市場では優勢のようだ。
むしろ、インフレを警戒しなければならないのは日本の方で、前日の当欄でも触れたが東京都区部のCPIが4%の伸びを示したことで、にわかに騒がしくなった。2月以降は一段とインフレ圧力が強まることが目に見えている。黒田日銀総裁はイールドカーブ・コントロールの許容変動幅を0.5%まで拡大したことについて、政策変更では全くないと言い切り、実際その後の国債無制限買い入れの動きは発言を裏付けるものでもあったわけだが、これは当然ながら4月以降の日銀総裁Xの発言ではない。そして、きょうは読売新聞が朝方に「次回の金融政策決定会合で金融緩和策の副作用を点検する」と報道し、日銀の追加的修正を示唆した。この時点でムード的にはクロダノミクス終了をマーケットは読み込んだ。
この報道によって、東京株式市場の取引が始まる前から為替は急速にドル安・円高に進み、全体株価の上値を押さえる要因となった。バイデン米政権を他山の石にインフレだけは阻止したいというのが岸田首相の胸中と思われる。その首相が、次期日銀総裁には雨宮副総裁や中曽前副総裁ではなく白川総裁時代の副総裁であった山口広秀氏を推しているという。仮にその通りとなれば、クロダノミクス終了で円高の流れが形成される公算が大きい。言い換えれば真の意味で「さよならアベノミクス」ということになる。市場では「オセロではないが、日銀総裁が白から黒に変わった時、株式市場には風が吹いた。しかし再びひっくり返され、好まざる白へと変わりそうだ」(ネット証券アナリスト)という声も聞かれた。
きょうの相場では、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>などメガバンクを中心に銀行株が総蜂起状態に買われた一方、三井不動産<8801>をはじめ不動産株への売りが顕著であった。金利上昇をテーマに目ざとく「銀行株買い・不動産株売り」のロング・ショート戦略が発動された形跡がある。以前にも取り上げたが、銀行株については押し目買いを念頭に溜めこみ「買ったら売るな」が当面の基本戦略となる。
あすは株価指数オプション1月物の特別清算指数(オプションSQ)算出日にあたる。また、12月のマネーストック、11月の特定サービス産業動態統計なども発表される。海外では、韓国の金融通貨委員会の結果が開示されるほか、11月のユーロ圏鉱工業生産、11月のユーロ圏貿易収支、12月の米輸出入物価指数、1月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)などが注目される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
日本時間今晩10時30分に発表される12月の米消費者物価指数(CPI)を前に、日米ともに模様眺めムードの地合いが想定されたが、前日に米債券市場ではCPI発表に先立って米長期金利が3.5%台前半まで低下し、これを好感する形で米株市場ではハイテク株中心に買いが入り、NYダウが続伸、ナスダック総合株価指数は4連騰となった。インフレ懸念の後退と合わせてFRBの金融引き締め策に対する警戒感も霧散したような状態で、足もとの米国株は楽観に傾いているようにも見える。ショートポジションを積み上げていた売り方にすれば慌てるところだ。
機関投資家は“CPIショック”を恐れ、前倒し的に保有株を軽くしているという観測が出ていたが、一方で昨年12月以降、先物絡みでショートを積み上げていた海外ヘッジファンドなどが、ポジション調整の買い戻しを入れている可能性もある。CPIの前哨戦ともいえる前週末の12月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数の伸びがコンセンサスを上回ったものの、平均時給の伸び率鈍化にスポットが当たり、NYダウは700ドル高と急速な切り返しをみせた。いわゆる「いいとこ取り」の相場だが、これは水鳥の羽音に驚いた売り方がショートカバーを急いだというのが真相ではなかったか。雇用統計に遅れて同日発表されたISM非製造業景況感指数が想定外の落ち込みをみせたことも、これに追い打ちをかけた。マーケットは今回の米CPIを恐れてはいない。こうなると目先、逆に株式市場は足もとをすくわれる可能性を注意しなければいけないのだが、良くも悪くも米インフレ収束に向けたレールが既定路線のように引かれている印象が強い。2月1日までの日程で行われるFOMCでは政策金利の引き上げ幅については0.25%との見方が主流で、これは今回のCPI発表によってブレることはないとの見方が市場では優勢のようだ。
むしろ、インフレを警戒しなければならないのは日本の方で、前日の当欄でも触れたが東京都区部のCPIが4%の伸びを示したことで、にわかに騒がしくなった。2月以降は一段とインフレ圧力が強まることが目に見えている。黒田日銀総裁はイールドカーブ・コントロールの許容変動幅を0.5%まで拡大したことについて、政策変更では全くないと言い切り、実際その後の国債無制限買い入れの動きは発言を裏付けるものでもあったわけだが、これは当然ながら4月以降の日銀総裁Xの発言ではない。そして、きょうは読売新聞が朝方に「次回の金融政策決定会合で金融緩和策の副作用を点検する」と報道し、日銀の追加的修正を示唆した。この時点でムード的にはクロダノミクス終了をマーケットは読み込んだ。
この報道によって、東京株式市場の取引が始まる前から為替は急速にドル安・円高に進み、全体株価の上値を押さえる要因となった。バイデン米政権を他山の石にインフレだけは阻止したいというのが岸田首相の胸中と思われる。その首相が、次期日銀総裁には雨宮副総裁や中曽前副総裁ではなく白川総裁時代の副総裁であった山口広秀氏を推しているという。仮にその通りとなれば、クロダノミクス終了で円高の流れが形成される公算が大きい。言い換えれば真の意味で「さよならアベノミクス」ということになる。市場では「オセロではないが、日銀総裁が白から黒に変わった時、株式市場には風が吹いた。しかし再びひっくり返され、好まざる白へと変わりそうだ」(ネット証券アナリスト)という声も聞かれた。
きょうの相場では、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>などメガバンクを中心に銀行株が総蜂起状態に買われた一方、三井不動産<8801>をはじめ不動産株への売りが顕著であった。金利上昇をテーマに目ざとく「銀行株買い・不動産株売り」のロング・ショート戦略が発動された形跡がある。以前にも取り上げたが、銀行株については押し目買いを念頭に溜めこみ「買ったら売るな」が当面の基本戦略となる。
あすは株価指数オプション1月物の特別清算指数(オプションSQ)算出日にあたる。また、12月のマネーストック、11月の特定サービス産業動態統計なども発表される。海外では、韓国の金融通貨委員会の結果が開示されるほか、11月のユーロ圏鉱工業生産、11月のユーロ圏貿易収支、12月の米輸出入物価指数、1月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)などが注目される。(銀)
出所:MINKABU PRESS