日産東HD Research Memo(10):重点戦略は電動化リーダー、安全・運転支援技術、モビリティ事業
■中期経営計画
3. 新中期経営計画の重点戦略
日産東京販売ホールディングス<8291>は成長戦略として「CASE」を前提に電動車とプロパイロット車を拡販し、事業を通じて社会のサステナビリティにも直接貢献していく考えである。そのための重点戦略として、電動化リーダー、安全・運転支援技術、モビリティ事業を掲げた。
(1) 電動化リーダー
電動化リーダーとは、EVなど電動車の先駆者としての強みを活かし、電動車を運転する感動を世の中に広げ、カーボンニュートラルの推進に直接的に貢献していくというものである。日本で日産自動車以外にほとんど本格参入していないにもかかわらず、EVに対する消費者の関心は上昇傾向にあり、EVの購入意向は11%※に達している。そこで同社は、EVの販売ノウハウ・体制や充実のラインナップ、整備体制・設備、インフラ(急速充電器100ヶ所)など10年以上に及ぶ蓄積を活かし、電動車比率90%以上、EVの年間販売台数10,000台の達成を目指すこととした。そのため同社はEVを積極的に販売していく方針だが、日産自動車も2030年までにグローバルで新型EVを15車種投入する計画になっており、EVのラインナップはますます充実し、販売実績が膨らんでいくことが予想される。また、EV販売によるCO2排出量1.6万トン削減、EV給電による災害対応や再生可能エネルギー利用の店舗網構築を目指すことで、環境や社会に対し直接的な貢献を強める考えである。
※日本自動車工業会2021年度乗用車市場動向調査。22年1月~6月のEVの販売実績(構成比)は0.9%。(決算説明資料より)
(2) 安全・運転支援技術
同社は、先進の運転支援技術による安心と安全をより多くの顧客に提供し、先進の運転支援技術を支える整備体制で日々の安心と安全をサポートする方針である。具体的には、店舗での試乗やVR体感試乗、「e-シェアモビ」などを活かして、顧客がプロパイロットなど先進運転支援システムを体験する機会を広げる。また、特定整備制度の認証取得に向けた整備機器導入やすでに一日の長のある整備士のさらなる技術力向上、安心・安全なカーライフに直結する「電子制御システム整備」の体制構築を進めていく考えである。
(3) モビリティ事業
個人リースの利用拡大とモビリティ事業の強化により、所有から共有へというトレンドに的確に対応していく方針である。1997年から展開している個人リースは、そのノウハウをベストプラクティスとして全社に活かし、顧客のベネフィットを訴求することで、利用率・定着率の向上と乗り換えの促進につなげていく考えである。前述したように、早期の買い替えを通じて同社の収益向上にも貢献する事業として、今後の成長が期待されている。また、レンタカーを全店に配備するとともに運用台数を増強、e-シェアモビ※の配備も拡大し、モビリティ事業を強化する方針である。これによりレンタカー事業や「e-シェアモビ」で顧客利便性の向上と収益化を図るとともに、試乗機会とタッチポイントの拡大によって電動車に対する理解を促進していく考えである。
※e-シェアモビ:EVサクラやオーラe-POWERなど日産自動車の先端技術が体験できるカーシェアリングサービス。
2027年3月期に営業利益65億円、配当性向30%以上を目指す
4. 新中期経営計画の目標
同社は、新中期経営計画で中期の財務目標と長期の非財務目標の両立を目指している。重点戦略により、新車販売台数をコロナ禍前の水準に戻し、本業であるディーラー事業で増収増益を目指す。また、ストックビジネスで収益を上積みし、コスト面では人財・デジタルへの投資を強化する一方で設備費・経費の最適化を図る。さらに、カーボンニュートラルへ向けた動きも推進する。これにより2027年3月期に、売上高1,550億円、営業利益65億円、配当性向30%以上などの中期財務目標と、乗用車の電動化比率90%以上、EV販売によるCO2排出量1.6万トン削減という長期非財務目標のマイルストーンを達成する計画である。
そのため、既存領域への投資に加え注力領域への投資も積極化し、4年間で総額300億円の投資を実行する計画である。内訳は、持続的成長のための既存ビジネス強化に向けた、ネットワーク刷新や環境対応、事業ポートフォリオ再構成に250億円、変革への推進力となる人財・DXに向け、ITによる効率/生産性向上や事業の多角化、ベストプラクティス強化に20億円、新規事業への参入や資本業務提携による事業領域拡大に向けて、モビリティ関連やEV周辺事業などに30億円を投資する考えである。また、ROE(自己資本当期純利益率)を、2022年3月期の4.6%から2027年3月期には7.0%へと向上させる方針である。そのため、強みの付加価値販売による安定収益に加え、ネットワーク刷新や新たな顧客接点の構築、効率化投資などにより営業利益率を3.2%から4.2%へと上昇、収益拡大に向けた投資と資産の有効活用(不要な資産圧縮)によりROA(総資産当期純利益率)を2.2%から3.4%へと改善、財務安全性を確保しつつ資本構成の最適化を目指すことでD/Eレシオを0.12倍から0.26倍に引き上げる計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《NS》
提供:フィスコ