ウェーブロックHD Research Memo(10):既存事業の成長投資と新規事業探索により、成長基盤の構築に取り組む
■今後の見通し
2. 中期経営計画の進捗
ウェーブロックホールディングス<7940>は2021年6月に中期3か年計画を発表した。ビジョン、ミッション、バリューズを定義し、新生ウェーブロックホールディングスとしての再成長を目指し、グループ企業戦略と各事業の中長期成長戦略を策定した。
グループ企業戦略としては、安定的成長を前提とした長期利益の獲得を企図し、営業利益率だけでなく収益性(ROA、ROE、ROIC)、効率性を重視した経営を推進していく。財務戦略としては、クレアネイト株式の譲渡等により有利子負債を返済し財務体質の強化を図るとともに、手元キャッシュの活用と必要に応じた金融機関からの借入その他手段により、成長投資のために必要な資金を確保していくことにしている。
経営戦略としては、マテリアルソリューション事業、アドバンストテクノロジー事業それぞれの事業領域において、顧客の課題を解決するために既存領域分野の深化と新規領域分野の探索を進める。また、2事業以外の新規事業の探索についても、「樹脂の加工」分野に必ずしもこだわらず、環境問題解決など同社がミッションとして掲げている社会課題を解決するソリューションビジネスであれば、柔軟な外部提携やM&Aなども活用して事業を育成していく方針で、早期に営業利益を2021年3月期の水準(1,489百万円)に回帰させることを目指している。
中期経営計画の最終年度となる2024年3月期の業績目標は、売上高で24,500百万円、営業利益で1,260百万円を掲げている。2年目となる2023年3月期は原材料価格高騰の影響により、当初目標(売上高23,100百万円、営業利益940百万円)に対して営業利益を下方修正したが、現段階では2024年3月期の目標は据え置いている。原材料価格や為替の動向が流動的なためで、改めて目標値を見直すよりも都度、業績の差異について説明していくことが好ましいと考えたためだ。
投資額については約70億円を計画している。内訳としては、既存事業における収益基盤を強化するための投資として約10億円(製造ラインの保守改修、品質向上に対する投資)、成長基盤を構築するための投資として約25億円(地中熱ビジネス関連投資、金属調加飾フィルムの新規製造ライン投資等)、新規事業投資に約30~35億円となる。なお、新規事業投資については必須目標とはしておらず、結果的に予算を下回る可能性もある。
現状は収益基盤及び成長基盤への投資を実行しており、2022年3月期は約4.1億円、2023年3月期は約24.7億円と順調に進捗している。一方、新規事業投資については2023年3月期から取り組んでいる。専門組織として新規事業開発部を2022年4月に立ち上げ、3つの観点から新規投資案件の検討を進めている。
(1) 既存事業と接合する分野への投資
既存事業である樹脂加工に近い分野で、既存事業と接合する分野への投資を計画している。樹脂加工分野は裾野が広く、同社が進出していない領域も多くあることから、同社が進出していない分野を手掛ける同業他社との提携等を検討している。
(2) 既存事業に付加価値を付与する分野への投資
既存事業である樹脂加工の隣接分野で、既存事業に付加価値を付与する分野への投資を計画しており、2022年9月に出資したチームライクが該当する。2015年に設立されたチームライクは業務用ビニールカーテン・シートを専門とし、ECサイト「ビニプロ.Com」上で累計3万社以上の取引実績がある。ECサイト運営を通じた製品販売に留まらず、自社の製品加工工場を保有することで顧客からの個別リクエストに応えるオーダーメイド加工体制を構築し、短納期・小ロットで納品している。同社は従来、コスト競争力のあるロットの大きい生産体制を整えることで大口顧客の需要に応えてきたが、顧客嗜好の多様化に伴い様々なロットや納期の需要に応える体制を構築し、新たな商流を確立する必要があると考え、投資を実行した。チームライクが持つ強みを活用し、対応力の強化と商流チャネルの多様化を目指す。一方、チームライクが運営する「ビニプロ.Com」では、同社グループの各種製品も取り扱う予定だ。
(3) 新規分野への投資
同社の強みを生かすことができる新規分野を対象に投資を計画している。AIやIoTを活用して農業の生産性向上を支援するベンチャー企業、ICTプラットフォーム、環境関連製品事業など、樹脂加工にはこだわらない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《NS》
提供:フィスコ