明日の株式相場に向けて=メジャーSQ週に錯綜する思惑
週明け5日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比42円高の2万7820円と反発。狭いゾーンで強弱が拮抗する地合いとなったが、前週末の急落を考えればリバウンドとしては物足りず、しかもTOPIXは続落で、プライム市場の値上がり銘柄数を値下がり数が大幅に上回った。ひとことで言えば冴えない地合いを前週から引き継いだ形だ。今週は週末9日にメジャーSQ算出日を控えており、需給思惑に左右されやすい。ちなみに日柄的にはあす6日が変化日にあたり、その翌日である7日は“SQ前の魔の水曜日”となる。
もっとも、あまり下げに身構えるような緊迫感はないようだ。強気を唱えるような目に見える好材料はない。しかし、疑似楽観ムードが漂っているのは確かである。その背景として外部環境的には米インフレ懸念が沈静化してきたことが挙げられる。注目された11月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が26万3000人の増加で市場の事前コンセンサス(予想の中央値)の20万人から大きく上振れたほか、平均賃金が前月比0.6%上昇でこちらも予想の0.3%を上回った。ただ、いささか証文の出し遅れで、今月13~14日に予定されるFOMCでの0.5%利上げのシナリオに変化はなさそうだ。問題となるのはターミナルレートだが、一部では5%台後半というタカ派的な読みを働かせる調査機関もあるが、アナリストやエコノミストの中には来年1月末に開催されるFOMCで0.25%もしくは0.5%利上げで打ち止めを示唆する声もあり、何とも言えない。11月の雇用統計は確かに強い内容であったが、インフレ警戒感が増幅されたとはいえないようだ。
一方、アジアでは中国リスクが俎上に載っているが、それも過度な悲観ムードは後退している。中国ゼロコロナ政策については本格的な解除にはまだ時間がかかるものの、漸次緩める方向が見えてきていることで、市場関係者の間でも最悪局面は過ぎ去ったと見る向きが増えている。インフレ警戒感とリセッション懸念が共存する現在の相場にあって、前者に対する恐怖感が薄れてきたことは間違いなくプラス材料といえる。ただ、今はまだおとなしい“後門の狼”、つまり景気後退がもたらす実態悪の方を相場がどう織り込むかが問題だ。
このままインフレがピークアウトするとしたら、その立役者は中央銀行ではない。皮肉な言い方になるが、消費者の購買意欲の低下や企業の設備投資意欲の減退という経済実勢の落ち込みがインフレ退治の最大の功労者となる。どこかで、経済の停滞がネガティブ材料としてクローズアップされる時期が来るはずだが、今はまだそこに至っていない。
株式市場が業績悪を嫌気するのは来年前半で、その後しばらくして再び緩和期待で浮上する動きへと変遷していくと思われる。そのトレンド転換の要衝となる株価の水準がどこなのかは推察できないが、時間軸的には来年後半まで本格上昇相場はお預けとなろう。猛スピードで醸成されたコロナバブルを目の当たりにして、泥縄的な財政出動や金融緩和策による経済混乱(=インフレ)は各国政府や中央銀行にとって厳しい教訓となったことは否めない。同じ轍を踏んで、万が一インフレを再燃させてしまえば政策当局の立つ瀬はない。
当欄では短期的には年末高路線を主張してきたが、東京市場では急速に進む円高が警戒されている。米長期金利の低下が想定以上に早く、一方で国内では来春に予定される日銀総裁交代で、「雨宮氏と中曽氏、どちらが引き継いだとしても、現在の大規模緩和策は踏襲されない可能性が高い」(中堅証券ストラテジスト)という。米金利が上昇せず、日本の長期金利も今のYCC(イールドカーブ・コントロール)が修正され、タガが外れるとするならば、今後は更に投機的な円買いの動きを誘発する可能性もある。円安悪玉論を唱え続けた経済メディアは“悪い円安”から“良い円高”にシフトチェンジした、と肯定的に書く義務があるが、株式市場の本音はそうはいかない可能性がある。1ドル=135円ラインは製造業の盟主トヨタ自動車<7203>をはじめ、ホンダ<7267>、日産自動車<7201>など大手自動車メーカーの今期想定為替レートでもあり、心理的にもここから一段の円高に振れる展開となった場合は年末高のシナリオが狂うケースも出てくる。
あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に10月の家計調査が総務省から、10月の毎月勤労統計が厚労省からそれぞれ発表される。また30年物国債の入札も予定される。このほか11月の輸入車販売、11月の車名別新車・軽自動車販売が開示される。海外では豪中銀が政策金利を発表するほか、10月の米貿易収支などにマーケットの関心が高い。(銀)
出所:MINKABU PRESS
もっとも、あまり下げに身構えるような緊迫感はないようだ。強気を唱えるような目に見える好材料はない。しかし、疑似楽観ムードが漂っているのは確かである。その背景として外部環境的には米インフレ懸念が沈静化してきたことが挙げられる。注目された11月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が26万3000人の増加で市場の事前コンセンサス(予想の中央値)の20万人から大きく上振れたほか、平均賃金が前月比0.6%上昇でこちらも予想の0.3%を上回った。ただ、いささか証文の出し遅れで、今月13~14日に予定されるFOMCでの0.5%利上げのシナリオに変化はなさそうだ。問題となるのはターミナルレートだが、一部では5%台後半というタカ派的な読みを働かせる調査機関もあるが、アナリストやエコノミストの中には来年1月末に開催されるFOMCで0.25%もしくは0.5%利上げで打ち止めを示唆する声もあり、何とも言えない。11月の雇用統計は確かに強い内容であったが、インフレ警戒感が増幅されたとはいえないようだ。
一方、アジアでは中国リスクが俎上に載っているが、それも過度な悲観ムードは後退している。中国ゼロコロナ政策については本格的な解除にはまだ時間がかかるものの、漸次緩める方向が見えてきていることで、市場関係者の間でも最悪局面は過ぎ去ったと見る向きが増えている。インフレ警戒感とリセッション懸念が共存する現在の相場にあって、前者に対する恐怖感が薄れてきたことは間違いなくプラス材料といえる。ただ、今はまだおとなしい“後門の狼”、つまり景気後退がもたらす実態悪の方を相場がどう織り込むかが問題だ。
このままインフレがピークアウトするとしたら、その立役者は中央銀行ではない。皮肉な言い方になるが、消費者の購買意欲の低下や企業の設備投資意欲の減退という経済実勢の落ち込みがインフレ退治の最大の功労者となる。どこかで、経済の停滞がネガティブ材料としてクローズアップされる時期が来るはずだが、今はまだそこに至っていない。
株式市場が業績悪を嫌気するのは来年前半で、その後しばらくして再び緩和期待で浮上する動きへと変遷していくと思われる。そのトレンド転換の要衝となる株価の水準がどこなのかは推察できないが、時間軸的には来年後半まで本格上昇相場はお預けとなろう。猛スピードで醸成されたコロナバブルを目の当たりにして、泥縄的な財政出動や金融緩和策による経済混乱(=インフレ)は各国政府や中央銀行にとって厳しい教訓となったことは否めない。同じ轍を踏んで、万が一インフレを再燃させてしまえば政策当局の立つ瀬はない。
当欄では短期的には年末高路線を主張してきたが、東京市場では急速に進む円高が警戒されている。米長期金利の低下が想定以上に早く、一方で国内では来春に予定される日銀総裁交代で、「雨宮氏と中曽氏、どちらが引き継いだとしても、現在の大規模緩和策は踏襲されない可能性が高い」(中堅証券ストラテジスト)という。米金利が上昇せず、日本の長期金利も今のYCC(イールドカーブ・コントロール)が修正され、タガが外れるとするならば、今後は更に投機的な円買いの動きを誘発する可能性もある。円安悪玉論を唱え続けた経済メディアは“悪い円安”から“良い円高”にシフトチェンジした、と肯定的に書く義務があるが、株式市場の本音はそうはいかない可能性がある。1ドル=135円ラインは製造業の盟主トヨタ自動車<7203>をはじめ、ホンダ<7267>、日産自動車<7201>など大手自動車メーカーの今期想定為替レートでもあり、心理的にもここから一段の円高に振れる展開となった場合は年末高のシナリオが狂うケースも出てくる。
あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に10月の家計調査が総務省から、10月の毎月勤労統計が厚労省からそれぞれ発表される。また30年物国債の入札も予定される。このほか11月の輸入車販売、11月の車名別新車・軽自動車販売が開示される。海外では豪中銀が政策金利を発表するほか、10月の米貿易収支などにマーケットの関心が高い。(銀)
出所:MINKABU PRESS