【植木靖男の相場展望】 ─欧米の株安に怖じ気づくな!
「欧米の株安に怖じ気づくな!」
●いまなお金融相場に位置する日本株
日経平均株価は、米国株式市場の下げにつき合う格好で下落基調を強めている。9月28日には心理的な節目とされる2万6000円大台をザラバながら下回ってしまった。幸い、翌日には小反発したが、投資家が買い姿勢を整えるには数日の明白な上昇か、もしくは下値の固いもみ合いが必要であることは、誰しも経験で理解している。そのどちらも表れぬまま週末30日に終値で2万6000円を割ったことで、3月9日の年初来安値2万4717円(終値ベース)は維持できるだろうかと投資家は相場の先行きを不安視している。仮に、この安値を下回るとすれば、今後1~2年の先行きを左右しかねかない。
基本観として、なぜ米国株はずるずると下げているのか? 一言で言えば、高インフレを収束するべくFRB(米連邦準備制度理事会)が金利を引き上げているからだ。しかも、ここへきてイングランド銀行(中央銀行)がQT(量的金融引き締め)の実行を延期し、国債購入を決めたことで、英国市場は大混乱。米国金融市場にも動揺は波及したが、米国長期金利が瞬間的にせよ4%に到達したことで利食い売りとなり、長期金利上昇は止まったかにみえる。
いずれにしても、長期金利が上げ止まれば株価は反発する。では、米長期金利はピークをつけたのか。この問いに的確に答えられるアナリストはいない。
だが、いまが逆金融相場であれば、金利の動向からは目が離せない。はっきり言えることは、現状の米国株価の推移からみれば、逆金融相場、つまり株価の大天井からの第一波の下げがまだ続いていることは間違いなさそうだ。
こうした米国市場に比べ東京市場はどうか。状況は米国と全く異なる。そもそも力ずくで低金利を続けている。インフレ率は2%前後とインフレではない。少なくとも表向きは逆金融相場でなく、金融相場に位置している。
基本的には通貨が増えれば、モノの価値が上昇するが、今の政府はモノの価格を抑えるべく躍起であり、首相自ら対策本部長を務める。一方、物価の番人である日銀は相も変わらず資金を垂れ流し、結果的に物価上昇を煽っている。この不思議な構図のなか、ドル円相場は1ドル=145円を目前にして小休止している。
●ハードル上げて短期薄利の投資スタンスで
繰り返しとなるが、日本株はいま金融相場の立ち位置にある。つまり、株価は上昇するのが当然でなくてはならない。換言すれば、逆金融相場に移行した欧米市場に比べ一回りも二回りも遅れているのである。ならば、いつまでも欧米の株価にお付き合いしていることはないのではないか。
むしろ、ドル高・円安がまだ続くのであれば、円高を期待するのではなく、円安を活用する政策が必要であり、今後の物色対象はその関連株が適切と考える。期待したい。
なお、目先は短期薄利の投資スタンスで臨むことは変わらない。ただし、動意づいた銘柄に安易に飛びつく投資は改めるべきである。通常の相場展開と異なって、異常な昨今の相場展開ではハードルを相当程度あげてリスク回避に努めることが肝要だ。
今回は次のような銘柄に注目したい。ひとつはPER11倍、利回り3%の日本電信電話 <9432> [東証P]だ。傘下にNTTドコモを擁する。次いで大手不動産株の中から三菱地所 <8802> [東証P]だ。なぜ、不動産価格がいま上昇しているのか、じっくり考えたい。最後に味の素 <2802> [東証P]だ。調味料は世界トップクラスだが、層間絶縁材料など高採算の電子材料が好調だ。
2022年9月30日 記
株探ニュース