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【特集】再編機運高まる内需系で注目度大、「物流関連」好業績株にロックオン <株探トップ特集>

低温食品の輸送を手掛けるC&Fロジホールディングスを巡る買収合戦では、TOB価格が大きく吊り上がった。勝ち組企業による買収意欲は強く、事業拡大に向けたM&Aが今後も活発化しそうだ。

―輸送費の値上げ効果で企業間の優勝劣敗が鮮明、異彩高の潜在力持つ6銘柄を選抜―

 トランプ米政権の政策が世界景気に暗い影を落とすようになった。外需系セクターよりも、安定的な業績拡大が期待できる内需系セクターが相対的に選好されやすい地合いにあって、物流業界では再編の機運が一段と高まっており、TOB(株式公開買い付け)を通じた買収の発表も相次いでいる。輸送費の値上げ後もシェアを落とさず、収益力を高めた銘柄に関しては、全体相場に波乱の芽が残る局面で投資マネーの受け皿となる公算が大きく、異彩高のポテンシャルを持つ物流関連株への物色意欲が徐々に高まりつつある。

●物流企業で高まる「買収意欲」

 1月31日にニッコンホールディングス <9072> [東証P]が発表した中央紙器工業 <3952> [名証M]へのTOBが、金融市場で大きな話題となっている。ホンダ <7267> [東証P]系の自動車輸送大手のニッコンHDが、トヨタ自動車 <7203> [東証P]系の段ボール メーカーを傘下に収めるという、「ケイレツ」の垣根を越えた企業行動もさることながら、1株5034円のTOB価格は、発表直前の同日終値の3.7倍と、プレミアム幅は異例の大きさとなった。ニッコンHDは段ボールの内製化を通じてコスト競争力を高められるばかりでなく、トヨタ系企業の買収を通じて自動車最大手との関係性を強固にし、取引拡大につなげることも可能となる。

 物流会社同士の合従連衡の動きも後を絶たない。米投資ファンドのKKR<KKR>が買収したロジスティード(旧日立物流)は昨年、電子部品輸送で強みを持つアルプス物流をTOBにより買収。また、「佐川急便」を展開するSGホールディングス <9143> [東証P]は低温食品の輸送で競争力を持つC&Fロジホールディングスを子会社化した。C&Fロジに対しては同業のAZ-COM丸和ホールディングス <9090> [東証P]が1株3000円でTOBを実施していた。SGHDはこれを大きく上回る5740円を提示し、買収合戦の軍配はSGHDに上がることとなった。

 再編加速の背景として挙げられるのが、ドライバーの時間外労働の上限規制が導入されたことに伴う「2024年問題」である。物流会社は輸送量に制限が掛かるなかで収益を維持するために、値上げや合理化に迫られることとなった。一方でドライバー不足の問題が解消された状況というわけではない。値上げ後も規模のメリットを享受して競争力を維持する企業と、そうでない企業との二極化の様相が強まっている。

●NXHDは今期最終7割増益を計画

 もっとも労働力に起因した輸送量の低下は、懸念されたほどの極端なレベルには至らず、物流業全体でみれば、景況感自体は底堅い状況が続いているようだ。日銀の24年12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、「運輸・郵便」の業況判断DI(「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いたもの)は、大企業でプラス33と前回9月調査から6ポイント上昇。中堅・中小企業も業況判断DIはプラス幅を拡大させた。

 好業績を予想する上場企業も相次いでおり、総合物流最大手のNIPPON EXPRESS ホールディングス <9147> [東証P]の25年12月期最終利益は7割増を計画。PBR(株価純資産倍率)は1倍を下回るなど、資本効率性の更なる向上も期待される水準だ。路線トラック大手のセイノーホールディングス <9076> [東証P]の業績も底入れに向かう見通し。それでも足もとでPBRは0.9倍台にとどまっている。

 来期の業績を見据えた場合、値上げ効果とともに原油相場の動向も注目ポイントとなるだろう。ニューヨーク・マーカンタイル取引所においてWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近物は17日時点で1バレル=67ドル台で推移しており、トランプ氏の大統領就任前につけた高値の80ドル近辺から15%以上、水準を切り下げている。陸運会社にとっては原油安を背景にした燃料価格の下落は、利益を押し上げる要因となる。これらを踏まえて、投資妙味を感じさせる銘柄をピックアップしていく。

●好業績・配当妙味で注目の物流系6銘柄

◎SBSホールディングス <2384> [東証P]

 企業の物流業務を受託する3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)に加え、物流施設の自社開発を展開。リコー <7752> [東証P]や東芝、古河電気工業 <5801> [東証P]、日本精工 <6471> [東証P]の物流子会社の買収などM&Aを通じて急成長しており、物流業界の再編の流れが加速するなかで、次の一手に注目が集まる。EC分野も成長加速を図っており、昨年2月にEC事業者が相乗りで利用できる大規模物流センターを千葉県野田市に開設。25年12月期は大阪府八尾市において2ヵ所目となるEC物流拠点を本格的に稼働させる予定であるほか、低温物流やインフラ関連、家電、半導体領域などで輸送料金の適正化にも注力し、収益力の強化につなげる構えだ。

◎センコーグループホールディングス <9069> [東証P]

 3PL大手で、旭化成 <3407> [東証P]や積水化学工業 <4204> [東証P]、積水ハウス <1928> [東証P]を主要取引先としつつ、冷凍・冷蔵食品の保管、小口配送では国内トップクラス。25年3月期は前期に続き過去最高益の更新を計画。第3四半期時点での通期計画に対する経常利益の進捗率は81%と順調に推移する。27年3月期までに配当性向40%とする目標を掲げつつ、M&Aなどの戦略投資も継続して行う方針。来期も堅調に業績を拡大させるとの見方をもとに、1月30日の上場来高値1567円を上抜ければ、需給面でのしこりのない価格帯に突入することとなる。

◎ゼロ <9028> [東証S]

 日産自動車 <7201> [東証P]から独立して20年以上が経過し、M&Aを通じて事業規模を拡大。新規参入の難しい新車・中古車輸送で高いプレゼンスを維持しているが、売上高に占める日産自向けの割合は1割程度にとどまっている。25年6月期第2四半期累計(7-12月)の最終利益は前年同期比2.4倍の35億500万円と大幅増益で、通期計画に対する進捗率は約64%。自動車関連での輸送料金の引き上げ効果を引き出しており、最高益予想を上積みする形での増額修正に期待が膨らむ。配当利回りは3.8%近辺。SBSHDの持ち分法適用関連会社だ。

◎山九 <9065> [東証P]

 港湾荷役・運送をはじめ、プラントの建設やメンテナンス事業を展開。日本製鉄 <5401> [東証P]と密接なつながりを持ち、奨学金返還支援制度や帰省旅費補助、持ち家支援など福利厚生に手厚い会社としても知られる。1月31日に25年3月期の業績予想を増額修正し、売上高は前期比7.2%増の6040億円を予想。最終利益は同14.8%増の280億円となる見通しで、6期ぶりの最高益更新を見込む。中国経済の低迷が物流事業の足かせとなるなか、取引先の工場構内の物流業務で単価改定が進展した。18年10月の上場来高値6550円を上抜けられるか注目される。

◎丸運 <9067> [東証S]

 ENEOSホールディングス <5020> [東証P]の物流パートナーとして石油、潤滑油・化成品の輸送などを手掛けるほか、貨物輸送も展開。筆頭株主は3月19日に東証プライム市場に上場するJX金属 <5016> [東証P]で、非鉄金属関連の輸送も行う。2月13日に25年3月期の業績・配当予想を引き上げ、売上高で前期比2.2%増の460億円、最終利益で同2.2倍の9億2000万円を計画。国内の貨物輸送数量は前年を下回る水準で推移しながらも、運賃の改定効果が足もとの業績押し上げに寄与している。M&Aを通じた成長意欲も見せており、株主価値の拡大余地が意識される。

◎エーアイテイー <9381> [東証P]

 国際物流のフォワーダー(混載貨物)事業を中心に、通関サービスや3PL事業を展開。海上輸送運賃とともに、中国や台湾、ベトナムなどアジア圏との輸送量が業績を左右する構造にある。円安環境の長期化で日本の輸入業者の事業環境に厳しさが強まり、輸入貨物の荷動きに力を欠く状況となるなか、25年2月期第3四半期累計(3-11月)の経常利益は前年同期比3.2%減と低調な状況となったが、最終利益では微増益を確保した。昨年11月末時点の自己資本比率は71.7%で無借金経営と財務は盤石。更に、直近で4.8%台の配当利回りは下値抵抗力を発揮するための大きな力となるとみられ、高配当株としてマークしたい。ロジスティードが大株主に名を連ねている。

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