【特集】ノムラシステム Research Memo(1):2025年12月期は中長期成長に備えるための踊り場に

■業績動向
ノムラシステムコーポレーション<3940>は1986年2月に設立以来、企業のオープン化コンサルティング業務、それに関連するソリューション提供業務などを展開し、発展を遂げてきた。ITが急速に進化する時代の流れに乗り、ソフトウェア設計・制作請負中心の事業構造から、ERP(Enterprise Resource Planning:基幹系統合システム)パッケージ導入におけるコンサルティング業務に経営資源をシフトしている。同社が注力している次世代戦略事業部では、ライセンス販売を積み重ねており、それをベースにシステム更新需要等で安定的に収益を上げるビジネスのストック化を目指す。ストックビジネスが増えれば、業績が着実に向上するシナリオが描けるためだ。国内ERP市場について堅調に推移すると見ており、クラウド市場やビッグデータ市場の拡大も見込んでいる。コンサルティング企業として同社の成長余地は大きいと弊社は考えている。
同社は、SAP導入コンサルティング、SAP保守サポートセンター運営、Webシステム開発コンサルティング、情報サイトコンサルティングなどを展開している。2001年にドイツのソフトウェア開発企業SAP<SAP>とサービスパートナー契約を結んだことが、同社が飛躍するきっかけとなった。2009年にはSAPのチャネル・パートナーとなり、SAP ERPのスペシャリスト集団として収益を伸ばした。2016年9月に東京証券取引所(以下、東証)JASDAQ市場への上場を果たし、2018年3月には同2部市場に上場した。同年6月には1部市場に指定替えとなり、2022年4月の東証市場再編では最上位のプライム市場に上場した。その後は国内ユーザーに寄り添ったビジネスを行うために2023年10月20日付でスタンダード市場に移行した。企業プレゼンスを上げたことにより、信頼度が高まり受注が拡大している。
2024年12月期決算は、売上高が3,275百万円(前期比11.2%増)、営業利益が515百万円(同10.8%増)、経常利益が515百万円(同10.5%増)、純利益が366百万円(同1.8%増)となった。当初の見通しは売上高3,203百万円(同8.7%増)、営業利益324百万円(同30.4%減)と営業減益予想で、売上高はほぼ予想通りの着地となったが、利益は上振れして営業2ケタ増益を確保した。
この主な要因は、元請け案件であるプライム※において、既存取引先の追加発注があったことで、全体に占めるプライム比率が向上したためである。以前は4割弱だったプライム比率は直近では約50%まで向上している。プライム案件は利益率が高いため、受注増大により利益率向上に寄与するのは言うまでもない。
※ クライアントから直接受注し、全工程を同社のコンサルタントが担当する案件のこと。
個別案件では、NHKエンタープライズから受注したSAP S/4HANA導入プロジェクトが、引き続き好業績に貢献した。2020年11月から開始したこのプロジェクトは、納入期限までに完了し、同社の強みであるプロジェクト成功率100%を具現したことで、グループ企業から追加受注を受けている。業界ではプロジェクトが納期どおりに完了するケースは稀で、通常は1~2年の遅れが生じることが多い。納入期限どおり完了させるスキルがある同社の信頼度は極めて高い。
このほかにも、大手自動車部品メーカー、公立大学、大手製薬会社などからの受注は順調。なかでも前期からの新規顧客、パートナー会社への積極的なアプローチ活動を継続したことにより、PMOサービスの案件獲得につながっている。
このところ同社では、プライム案件にシフトする一方、既存のFIS(Function Implement Service)が減少する傾向が続いている。FIS案件は外注コストがかかるため売上高全体は伸びが鈍化したものの、近年では利益率が改善傾向にある。前述した通り全体の売上高に占めるプライム比率は従来35%前後だったが、直近では50%前後まで上昇している。こうした直接的な受注の増加が顕著となったことで利益率が上昇し、想定数値からも上振れた。
一方、次世代戦略事業部のDX事業への先行投資にも注力しており、DX事業への投資によるコスト上昇が懸念要因ではあるが、今後の成長につながるため不安材料とはならない。とりわけ、この業界では人材育成及び確保が重要な課題であり、事業を拡充するための人材投資の活発化が目先の利益を圧迫する要因になるものの、これは中期的に成長する効果をもたらすことになると考えられる。
今後も利益率向上を図るために、プライム案件・準プライム案件の比重をさらに高める方針だ。従来型のFIS案件のように、プライムベンダーから依頼を受け、支援するという部分的な対応と比べて、売上総利益率で10ポイントほどの差が生じることから、当面はプライム案件の受注確保がさらなる成長に向け不可欠となる。
2025年12月期の業績予想は、売上高が3,472百万円(前期比6.0%増)と引き続き増収を見込むが、営業利益は417百万円(同18.9%減)、経常利益が417百万円(同18.9%減)、当期純利益が285百万円(同22.3%減)と、一転して2ケタ減益を予想している。
売上高に関しては。引き続き企業のIT投資が基幹システムの自社開発システムからERPパッケージへの切替需要やクラウド化ニーズの高まりを背景に堅調な拡大が予想されている。着実に受注が拡大する見通しだ。
他方、利益については、プライム案件の受注増をさらに鮮明にするため、自社ソリューションの開発、採用者数の拡大、人材育成等の成長投資に継続する方向で、それらは先行的なコストになることで、一時的に減益を余儀なくされるという。ただし、これはあくまでも短期的であり、こうした先行投資が一巡した後の利益は上昇カーブを描くとみられ、中長期な展望は明るい。
なお、同社は2024年12月期も最終的に利益が想定よりも大きく上振れし、減益見通しから終わってみれば、2ケタ営業増益になった経緯があるなど、業績予想を保守的に開示する傾向があることを付け加えておきたい。
当面も収益向上のカギとなるプライム案件は着実に積み上がりそうだ。「高付加価値ソリューションの提供」を目指し、1) 「SAP S/4HANA」のリプレイス需要を取り込むため、SAP認定コンサルタントの資格取得を推進し技術力を強化、2) 「SAP SuccessFactors」拡販のためのクラウドソリューション強化を重点施策とする。さらに、既存のシステムについてクラウドを導入していない企業が多いため、クラウドへの置き換えを進めるといったビジネスチャンスが広がると想定できよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
《HN》
提供:フィスコ