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【特集】馬渕治好氏【新春特別編 2025年の株式市場をズバリ予測! 年前半は試練の相場か】 <相場観特集>

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

―日経平均が史上最高値圏に再浮上するのはいつか、そしてリスクシナリオの現実味は―

 2025年相場の幕が開いた。昨年は日経平均株価が1989年の大納会につけた3万8915円を約34年ぶりに更新し、7月11日には終値ベースで4万2224円の史上最高値をつけた。ところがその直後から変調をきたした。8月初旬にはブラックマンデー時を上回る歴史的な大暴落に見舞われたことは記憶に新しい。その後は奇跡的ともいえるV字リバウンドに転じたが、最高値の更新は実現しておらず、4万円台を回復しても束の間でまた3万円台に押し戻されるという、どっちつかずの展開が年末まで続いた。俗に辰巳天井と言われるが、巳年となる今年、果たして日経平均はどういう波動を形成するのであろうか。実体経済及び株式マーケットの分析に定評のあるエコノミストでブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏に今年の相場展望を聞いた。

●2025年前半は調整色の強い地合い

 2025年の日米株式市場は、年前半が弱く後半に巻き返す流れを予想する。マーケットにとって年前半は試練となりそうで、米国発の悪材料が表面化し東京市場もその影響を受ける可能性が高いとみている。

 米国経済は今年春先までに調整に入る公算が大きく、これが株式市場にも影を落としそうだ。米国の雇用情勢の先行指標をみると、労働時間は前年比で減少が続き、派遣業雇用も22年3月から一貫して削減傾向にある。家計は借入審査で拒否される割合が高まっており、負債頼みの消費拡大も限界が近づいている。見た目よりも米国経済は脆弱である。しかし、そうした中も米国株式市場は楽観に傾いており、企業の予想PERから判断してもかなり割高な水準にあるといってよい。

●米株は割高に買われ過ぎた反動局面に

 トランプ次期米大統領の就任を前に活発化した「トランプ・トレード」も、思惑先行で過剰に買いが煽られた感は否めない。早晩この反動で全体指数は下値を試す展開に移行しそうだ。NYダウ は3~4月ごろには3万8000ドル前後、S&P500指数 で5200程度まで調整が入る余地がある。つれて日経平均も押し下げられ、外国為替市場では米経済の減速を反映してドル売りの動きが顕在化することも想定されるなか、最悪の場合は3万5000円程度まで下押すケースが考えられる。

 24年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に米国株市場はNYダウをはじめ主要株価3指数が波乱安の展開を余儀なくされた。この日でNYダウは50年ぶりとなる10営業日連続安を記録した。米連邦準備制度理事会(FRB)は市場の事前コンセンサス通り0.25%の利下げを決定したのだが、25年の利下げ見通しが年4回から2回に減じられたことで、メディアではおおむねこれが嫌気されたという見方がなされていた。

 しかし、これは売りの口実にされはしたが、後付け解釈の域を出ず、下げの本質は米国株が割高に買われ過ぎているということに尽きる。時価予想PERはS&P500指数ベースで22倍の水準(24年12月時点)であり、これはバリュエーション的に調整が必要であることを示唆している。

●深押ししても悲観は禁物、年後半には最高値へ

 もっとも、深押しをみせても過度な悲観は禁物であろう。米国では景気悪化が本格化しても、FRBは速やかに金融緩和を強化するなど十分に打つ手はあるからだ。したがって、米経済が変調をきたしてもFRBの舵取りによって世界景気全般に危機が及ぶようなことはなく、世界経済の落ち込みが限定的であれば、日本株は遅かれ早かれバランスを取り戻す。

 その場合は日経平均が3万5000円より浅い調整で済む可能性がある。為替は年前半にドル安・円高方向に振れるとしても1ドル=135円近辺までとそれほど過激な円高とはならない公算が大きく、それを背景に日経平均も底堅さを発揮しそうだ。

 その後は米国株主導で日本株に浮揚力が働き、日経平均は25年後半に24年7月につけた最高値4万2224円の奪回を果たすと考えている。25年末にかけて、世界景気持ち直しの動きに合わせ、日本経済に明るさが見え始め、それに沿って株価も緩やかに長期上昇トレンドへと向かうだろう。

●長期視野でリスク資産を積み上げることが大事

 ただし、地政学リスクや世界的な政治リスクを含め、内外で不透明要因は多い。したがって、日経平均の一時的な4万円大台回復は別として、4万円台で定着した動きをみせるのは年央以降が中心となる。また、短期的には上下にボラティリティの高い地合いが続くため、目先の値動きで一喜一憂せず、数年単位の長期的な展望をもって、着実にリスク資産を積み上げていく心構えで相場と対峙すべきだ。

 25年前半の物色対象としては小売りなど内需のディフェンシブセクターが優位と思われる。また、半導体関連や自動車関連は当面は厳しいが、需給調整を経て年後半に買い直される展開を想定する。

 総論として日本株が長期タームで上昇基調を強められるかどうかは、日本企業の経営改革にかかっている。24年7月上旬までの株高局面では、一部の海外投資家が「日本企業の経営改革は急速かつ全面的に進む」と過度の期待を抱いたことによるものだった。しかし、性急な期待は空振りし、現在の海外投資家は日本株に対し様子見姿勢にある。とはいえ企業による収益率向上や株主を意識した姿勢強化などの取り組みは、ゆっくりではあっても着実に進展していく方向にあり、それが日本株の支えになることを期待したい。

(聞き手 中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演や講演を行なっている。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。


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