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【特集】2025年コモディティ市場を展望する <新春特別企画>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行

「金は高値もみ合いが続く、トランプ氏の大統領就任とインフレ高止まりで」

 金(ゴールド)相場は2024年、地政学的リスクの高まりや米連邦準備理事会(FRB)による利下げ開始、接戦が予想された米大統領選を巡る不透明感などを背景に、10月に史上最高値を付けた。その後、共和党のトランプ前大統領が大統領選に勝利すると、インフレ高止まりが警戒されて為替がドル高に振れ、調整局面を迎えたが、ウクライナに侵攻したロシアによる核攻撃への懸念が下支え要因となった。ただ、ウクライナ戦争で停戦交渉に向けた動きが出ると、上値を抑えられた。

 2025年は、1月20日に米大統領に就任するトランプ氏の政策が焦点となる。リベラルの民主党から保守の共和党に政権が替わることで、政策は大きく変更される。同氏は米国第一主義を主張し、公約として不法移民の排除や麻薬撲滅、関税の引き上げ、減税、規制緩和を掲げていた。

不法移民の排除は労働力の減少、関税の引き上げはインフレにつながるとみられている。ただし、関税引き上げ圧力は交渉のきっかけであり、交渉次第では貿易摩擦の影響が緩和される可能性がある。インフレ高止まりの懸念でFRBの利下げ回数の見通しが半減したことは金相場の圧迫要因だが、インフレヘッジで買われると下値は限られるとみられる。

また、政府効率化省が新設され、イーロン・マスク氏と実業家のラマスワミ氏の主導で歳出を2兆ドル削減する見通しである。既得権益層の官僚の多くがリストラされるとともに、無駄な支出が削減され、連邦政府機関が再構築される。その取り組みが市場にショックをもたらす内容となると、金に逃避買いが入る可能性があろう。

 一方、ウクライナや中東の停戦に向けた動きも焦点である。ウクライナについては、マクロン仏大統領とウクライナのゼレンスキー大統領、トランプ氏が会談しており、ロシアのプーチン大統領も交渉に応じる姿勢を示している。ただ、ゼレンスキー大統領は北大西洋条約機構(NATO)加盟を主張しており、停戦が実現してもロシアが再侵攻する可能性が残る。また、イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦交渉と人質解放の行方も確認したい。

●プラチナは貿易摩擦が懸念材料も、供給不足見通しが下支えに

 プラチナ(白金)は、トランプ次期政権の関税引き上げがもたらす貿易摩擦への懸念が圧迫要因である。中国は不動産不況の長期化を受けて財政支出拡大と金融緩和方針を示しているが、米次期政権の政策次第では中国経済の先行き不透明感は強まるとみられる。欧州の当局者も貿易摩擦に対する懸念を示しているが、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は貿易戦争回避に向けてディール(取引)で米国の製品を購入することを薦めている。ただ、トランプ氏はウクライナ支援でNATO加盟国の国防費を国内総生産(GDP)比で5%に引き上げることを要求していると伝えられており、ウクライナ支援の交渉の行方も確認したい。

一方、ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)が3年連続の供給不足を見込んでいることは、プラチナ相場の下支え要因である。四半期報告で毎回、供給不足見通しが示されながら市場の反応は限定的で1100ドル付近で上値を抑えられてきたが、900ドル割れの水準は売られ過ぎ感から買い戻しが入りやすい。各国の中央銀行の利下げが進み、景気が刺激されるようなら、プラチナは見直されるとみられる。

●原油は供給過剰見通しが上値を抑える

  原油は供給過剰見通しが上値を抑える要因である。石油輸出国機構(OPEC)プラスは昨年12月の会合で、供給過剰を背景に減産縮小の開始を4月から3カ月先送りすることを決定した。

各国の中央銀行が利下げに転じたことは原油相場の下支え要因だが、FRBの利下げ回数見通しは半減しており、当面はトランプ次期政権の政策とその影響を確認することになるとみられる。

一方、ゼレンスキー大統領は、24年末に終了する同国経由の欧州向けロシア産ガス輸送契約の更新を拒否した。これに対しスロバキアのフィツォ首相は予告なしにロシアを訪問してプーチン大統領と会談し、ガス供給の継続に向けて協議した。ウクライナの停戦交渉と合わせてロシア産ガス供給の行方も確認したい。また停戦が実現した場合、ロシア産原油を輸入禁止した欧米の制裁が解除されるかどうかも焦点である。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行 2024年12月27日 記)


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