【市況】明日の株式相場に向けて=決算発表済みの銘柄に金剛石は眠る
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
個別株の物色の流れは決算プレーオンリーといってもいいような状態だ。テーマ買いの動きは鳴りを潜めている。例えば、最近では高市トレードのリバイバルで助川電気工業<7711>などが買われたが、単発的で横に広がらない。また、ひと頃は石破内閣発足を受け三菱重工業<7011>などが物色人気に沸いたが、これも頭打ちとなり、ほどなく人気前の水準まで往って来いとなった。防衛関連は何も石破政権だから買われるというわけではなく、グローバルな視点で今後の日本の方向性を示唆したものであるはずだが、そういう理屈では売り圧力を抑制できないようだ。結果として、政策テーマに乗る銘柄を中期投資で溜め込むような、実需買いをベースとした動きは後退を余儀なくされている。
今月中旬くらいまでしばらくの間は、決算発表後にボラティリティが極大化する銘柄をターゲットとした短期トレードがマーケットを席巻することになろう。とはいえ、決算跨ぎの買いは丁半博打に近い。仮に予想通り好決算を発表したとしても、事前のコンセンサスに届かないという理由で、理不尽なほど売りの砲火を浴びるケースもある。
当該銘柄の決算内容の良し悪しだけでなく、事前のマーケットの熱量も考慮しなければならず、ここまで読み切るのは至難の業だ。では、この時期に博打的トレードではなく、もう少し時間軸の長い投資を考えた場合、どういうスタンスをとるべきか。これは「好決算を発表済みの銘柄」の中から順張りで取れそうな銘柄を探すことが有効といえる。
候補を挙げると、工業炉トップシェアを誇る中外炉工業<1964>、製造・開発分野の技術者派遣を行うジェイテック<2479>、工具や補修部品などのネット通販を手掛けるMonotaRO<3064>、消防車のトップメーカーのモリタホールディングス<6455>などが強い動きで、順張りの流れに乗っている。カタログ通販を祖業にネット通販にも傾注し、インバウンド特需の取り込みも進むスクロール<8005>も面白いチャートを形成している。これらの銘柄はすべて10月末に好決算を発表済みである。
このほか番外編として、同じく10月末に決算発表を行った銘柄の中で愛知製鋼<5482>の強力な下値切り上げ波動も刮目に値する。トヨタ系の自動車向け特殊鋼大手だが、業績は原料コスト高騰に抗えず24年4~9月期は営業3割減益と厳しい状況にある。トップラインは堅調ながら利益は減速が顕著。しかし、株価は上値指向が鮮明だ。他社と一線を画す加工技術を持ちながらPBR0.3倍台と何と解散価値の3分の1の水準に放置。そこに目をつけたのが旧村上ファンド系のアクティビストで、共同保有で株式買い増しを続けている。決算通過で怖いものがなく、追随買いも誘導されやすくなっている。
あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の議事要旨(9月19~20日開催分)、11月の日銀当座預金増減要因見込みが朝方取引開始前に開示される。海外ではマレーシア中銀の政策金利発表、ブラジル中銀の政策金利発表のほか米国では30年物国債の入札が予定される。国内主要企業の決算発表ではJFEホールディングス<5411>、ダイキン工業<6367>、IHI<7013>、トヨタ自動車<7203>、日本郵船<9101>、NTTデータグループ<9613>、ニトリホールディングス<9843>などがある。海外主要企業ではクアルコム<QCOM>、アーム・ホールディングス<ARM>の決算に注目度が高い。(銀)
出所:MINKABU PRESS