【特集】大塚竜太氏【日経平均急反発、米大統領選で相場は変わるのか】 <相場観特集>
大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)
―トランプVSハリスで大接戦続く、国内政局も変化の兆し―
5日の東京株式市場は朝方からリスクオフの巻き戻しで日経平均株価は大きく切り返す展開。米大統領選の投開票を目前に思惑が錯綜しているが、前週末に先物主導で1000円超の下落をみせた反動できょうは自律反発狙いの買いが優勢となった。ただ、大統領選は結果判明までは時間がかかるとの見方も浮上している。一方、国内では先の総選挙で与党が大敗を喫し、国民民主党などの協力を得ることが予算案や法案を通すうえで必要条件となる。国内政局なども横にらみに東京市場はどう動くのか。ここからの相場展望について、東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏に話を聞いた。
●「ボラタイルな相場環境も押し目は買い」
大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)
東京市場は上下に変動の大きい地合いが続いているが、何はともあれ現地時間5日に投開票が行われる米大統領選の行方を見守る雰囲気となっている。最近まで共和党のトランプ候補の優勢が伝えられていたが、投開票直前の情勢ではハリス候補が再び盛り返しており、メディアを通じて大接戦の様相が伝えられている。大統領選の結果は相場動向にも少なからぬ影響を与えることは確かだが、大局的に見て米国株市場の大勢トレンドを揺るがすようなことには至らないと考える。
トランプ氏勝利の可能性を事前に織り込み、ここ最近の米株市場ではトランプトレードが再燃していたが、これをみても分かるようにマーケットの側からみて望まれているのは“トランプ大統領”の方であることは間違いない。しかし、ハリス氏が勝利した場合でも、短期的には米株市場は嫌気するかもしれないが、すぐに立ち直るであろう。トランプ、ハリスいずれも財政拡大に前向きであり、大統領選後は米経済にとっては追い風が強まる。また、11月のFOMC(米連邦公開市場委員会)でFRBは0.25%の利下げを行う可能性が濃厚とみられており、財政と金融両面で米経済が刺激されることで、株式市場も上昇気流に乗る公算が大きいとみている。
米株高となれば当然東京市場もそれに追随することになりそうだが、国内の政局不透明感が漂うなか、この行方を見極めたいとの思惑が上値を重くするケースも考えられる。石破新政権は国民民主党などとの連携を摸索しているが、国民民主党の立場で連立を組むことは考えにくいものの、政策によって協調するパーシャル連合の可能性は十分にある。したがって、国民民主党が掲げる「手取りを増やす」政策への期待が広がれば、消費関連株などを中心にポジティブに作用することも想定される。
向こう1ヵ月間の日経平均のレンジは下値が3万6000円前後、対して上値は4万500円程度とみている。ボラティリティは高いものの、基本は下がった時に買いを入れる方針で対処。例えば、3万8000円台を割れた水準は、断固買い下がっていく姿勢で臨みたい。物色対象としては、高島屋 <8233> [東証P]や三越伊勢丹ホールディングス <3099> [東証P]などの百貨店株やサンリオ <8136> [東証P]、東宝 <9602> [東証P]などのエンターテインメント関連。このほか、アドバンテスト <6857> [東証P]やディスコ <6146> [東証P]といった生成AI向けで商機をつかむ半導体製造装置関連などもマークしたい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(おおつか・りゅうた)
1986年岡三証券に入社(株式部)。88~98年日本投信で株式ファンドマネージャーを務める。2000年から東洋証券に入社し現在に至る。
株探ニュース