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【特集】金は下げ止まりを意識、過度の米利下げ期待は後退 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 は2月、中東の緊張の高まりや米地銀ショックが下支えとなる場面も見られたが、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測後退を受けて戻りを売られると、米消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことなどを受けて昨年12月以来の安値1985ドルをつけた。

 1月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比35万3000人増と事前予想の18万人増を上回った。時間当たり平均賃金も同0.6%上昇と前月の0.4%上昇から伸びが加速した。また、1月の米CPIは前年比3.1%上昇と事前予想の2.9%上昇を上回った。家賃や宿泊費などを含む住居費の上昇が背景にある。

 米生産者物価指数(PPI)も前月比0.3%上昇と事前予想の0.1%上昇を上回った。米小売売上高は同0.8%減と10ヵ月ぶりの大幅な落ち込みとなったが、悪天候などが影響しており、米FRBの利下げ観測後退に変わりはなかった。

 パウエル米FRB議長が3月利下げを否定したことに加え、堅調な米経済指標を受けて米FRBの利下げ開始は6月になるとみられている。CMEのフェドウォッチで、年末のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準は4.25~4.50%となり、利下げ幅は年初の150ベーシスポイント(bp)から100bpに縮小した。米金融当局者の年3回、75bp予想と比べると、利下げ期待が残っているが、過度の利下げ期待からの調整は進むことになった。今後発表される経済指標と金融政策の見通しを引き続き確認したい。

●中東情勢の行方を注視

 イスラエルがパレスチナ自治区ガザ最南部ラファへの侵攻を準備し、中東の緊張が高まったことは金の下支え要因である。イスラム組織ハマスが休戦案を提示したが、イスラエルのネタニヤフ首相は、ガザでの完全勝利は手の届くところにあると述べ、休戦案を拒否した。ラファには100万人以上の避難民が集まっており、攻撃が開始されれば大惨事が懸念されている。

 イスラエルはハマスに対し、人質が3月第2週ごろに始まるラマダン(断食月)までに解放されない場合はラファを攻撃すると通告した。エジプトがイスラエルのラファ侵攻に備え、パレスチナ難民を収容できる施設をガザとの境界付近に構築していることも伝えられた。一方、欧州連合(EU)加盟国はイスラエルのラファ攻撃停止を求める共同声明を発表、米国はイスラエルのラファ攻撃に反対する決議案を国連安保理に提出した。中東情勢の行方も当面の焦点である。

●国内金は円安が下支え

 国内金は円安を受けて堅調となり、JPX金先限が昨年12月5日以来の高値9771円をつけた。円相場は1ドル=150円台後半まで円安に振れた。植田日銀総裁はマイナス金利解除などについて、春闘の動向や景気回復の持続性を確認したうえで判断すると述べた。また、マイナス金利を解除したとしても緩和的な金融環境が続く可能性が高いとの見方を示した。

 介入が警戒される水準まで円安に振れたが、日銀の緩和的な金融政策に加え、米FRBの利下げ観測後退から円安は当面、続くことになるとみられる。ただ、ファンド筋の円売り越しが再び拡大しており、どのタイミングで買い戻す動きが出るかも確認したい。

●米利下げ観測後退で金投資は縮小

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、2月20日に836.16トン(1月末851.15トン)となった。米FRBの利下げ観測後退を受けて投資資金が流出した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは2月13日に13万1168枚(前週16万1738枚)に縮小し、昨年10月17日以来の低水準となった。米FRBの利下げ期待を受けて昨年末に20万7718枚まで拡大したが、利下げ観測後退を受けて手じまい売り、新規売りが出た。ただ、利下げ期待の調整は進んでおり、2000ドル割れでは買い戻す動きが出るとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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