【特集】プラチナはレンジ継続、米利下げ観測後退や中国不安が圧迫も買い戻される <コモディティ特集>
MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
米金融当局者の利下げ見通しを受けて米FRBの利下げ期待が高まったが、3月に利下げを開始し、年末までに150ベーシスポイント(bp)の利下げを織り込んだことは行き過ぎとみられた。
堅調な米経済指標が発表されると、早期利下げ観測は後退した。昨年12月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.4%上昇と前月の3.1%から伸びが加速し、事前予想の3.2%上昇を上回った。米小売売上高は前月比0.6%増と、事前予想の0.4%増を上回った。自動車の販売やオンライン売上高が好調だった。第4四半期の米国内総生産(GDP)速報値は前期比3.3%増と前四半期の4.9%増から伸びが鈍化したが、事前予想の2.0%増を上回った。1月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比35万3000人増加し、事前予想の18万人増を大幅に上回った。失業率は3.7%と前月から横ばい。
1月31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では金利据え置きが決定された。パウエル米FRB議長は会見で3月利下げを否定した。また、同議長は4日に放送されたCBSニュースの番組「60ミニッツ」で早期利下げに慎重な姿勢を示した。CMEのフェドウォッチで3月利下げ確率は16.0%(前月64.0%)に低下し、利下げ開始は5月か6月とみられている。
一方、地銀ショックに対する懸念が出ていることも当面の焦点である。米地銀ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)の第4四半期決算が予想外の赤字となり、配当を引き下げた。NYCBは昨年破綻した米地銀シグネチャー・バンクから一部を取得し、貸し出しリスクに対応するためにキャッシュを積み上げた。商業用不動産に対する懸念を受けて株価が急落した。ただ、シティグループのアナリストは、最近の銀行業界に対する懸念が「絶好の買い場」を生み出していると指摘し、楽観的な見方もある。
●中国恒大集団の清算命令と当局の株安対策
中国株が急落するなか、中国人民銀行が預金準備率を0.5%ポイント引き下げなど、当局は相次いで対策を発表した。一方、香港の高等法院は1月29日、中国不動産開発大手である中国恒大集団の清算を命じた。長期的には中国経済にプラスになるとみられているが、同社は3000億ドルの負債を抱えており、中国経済に打撃を与えることが懸念されている。清算は困難なプロセスとなる可能性が大きいとみられており、上海株の戻りは売られた。証券監督管理委員会(証監会)の王建軍副主席は、財政支出の適切なペースを維持する戦略を打ち出したが、上海株は引き続き売られ、5年ぶりの安値をつけた。中国市場は10日から17日まで春節で休場となる。個人消費の行方などを確認することになりそうだ。
●NY市場で大口投機家の買い越しは縮小
プラチナETF(上場投信)残高は6日の米国で31.57トン(昨年末31.04トン)、1月30日の英国で12.21トン(同12.18トン)、5日の南アフリカで11.79トン(同11.89トン)となった。米国と英国で安値拾いの買いが入った。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、1月2日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万9039枚をピークに縮小し、23日に8341枚となった。手じまい売り、新規売りが出た。ただ、900ドル割れで買い戻されると、30日に1万1549枚に拡大した。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース