市場ニュース

戻る
 

【市況】S&P500 月例レポート ― マグニフィセント・セブンが牽引した2023年 (1) ―


S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●THE S&P 500 MARKET:2023年12月
個人的見解:見事な走りを見せ、2023年は24.23%上昇と、その上昇は上位銘柄に集中したものの、惨憺たる結果となった2022年の19.44%の下落分を取り戻し、2年間では0.08%上昇

 2023年のS&P500指数 は24.23%上昇し(配当込みのトータルリターンは26.44%)、2022年のマイナス19.44%(同マイナス18.11%)の下落分を取り戻し、過去2年間では0.08%の上昇(同3.42%)となりました(2021年末の米2年物国債の利回り0.73%を若干上回る水準)。しかし、年間の内訳を見ると、勝者と敗者の明暗がくっきり分かれており、2022年および過去2年間全体とはかなり様相が異なる結果となりました。

 2023年に特に好調だったのは情報技術とコミュニケーションサービスで、それぞれ56.39%、54.36%の上昇となりました。ただ、両セクターとも2022年には下落しており(それぞれ28.91%、40.42%の下落)、過去2年間の合計では情報技術が11.18%の上昇、コミュニケーションサービスが8.03%の下落となりました。エネルギーセクターは2023年に4.80%下落しましたが、2022年には59.05%の上昇と唯一上昇したセクターだったため、過去2年間の合計では51.41%の上昇となりました。2023年に最もパフォーマンスが悪かったのは10.20%の下落となった公益事業で(昨年は1.44%下落)、過去2年間では11.49%下落しました。

 セクター別では、2023年には8セクターが上昇し(2022年は1セクター)、過去2年間では3セクターが上昇しました。2023年には値上がり銘柄数が322銘柄、値下がり銘柄数が179銘柄となり、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回りましたが、2022年には値上がり銘柄数が139銘柄、値下がり銘柄数が363銘柄だったため、過去2年間では値上がり銘柄数が213銘柄(30%以上上昇した銘柄数は78銘柄)、値下がり銘柄数が286銘柄(30%以上下落した銘柄数は74銘柄)となり、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回りました。

 2023年はマグニフィセント・セブン銘柄 が好調で(トータルリターンは平均でプラス104.7%)、S&P500指数のトータルリターン(26.29%)の62.2%分を占め(これらの銘柄を除くと2023年の同指数のリターンはプラス9.94%となります)、マグニフィセント・セブンの全銘柄が下落した2022年(平均マイナス45.31%)の損失分を取り戻し、2021年末の水準を依然として下回っているのはアマゾン・ドット・コム<AMZN>とテスラ<TSLA>のみとなりました。過去2年間では、S&P500指数のトータルリターンは3.42%で、マグニフィセント・セブン銘柄はそのうち2.05%を占めました(これらの銘柄を除くと、過去2年間の同指数のトータルリターンはプラス1.37%となります)。

 2023年は9週連続の上昇(15.85%上昇)で年を終えました(10週連続で上昇したのは1994年1月が最後で[10.26%上昇]、その際には最終的に12週連騰しましたが、今回はそれ以来の最長記録です。また、1985年12月には10週間の連騰で14.47%上昇し、12週間の連騰で16.35%上昇しました)。S&P500指数は24.23%上昇して4769.83で年を終え、2022年1月3日に付けた終値での過去最高値(4796.56)まで0.56%に迫り、2020年2月19日に付けたコロナ禍前の高値(3386.15)から40.86%の上昇となりました。

 2024年1月には議会が再開し、ウクライナ、イスラエル、米国国境などの問題への対応を迫られ、また1月19日までに新予算(またはつなぎ予算法案)で合意に至らない場合は政府機関閉鎖の可能性が出てくるなど、材料が目白押しです。さらに、市場を盛り上げる決算発表シーズンが2024年1月12日の金曜日から大手銀行を皮切りに本格化します。

 2024年について「考察」すると、ソフトランディングという夢のようなシナリオが(完全ではないものの大方)実現したとの見方があり、米連邦準備制度理事会(FRB)は3月に利下げを開始すると予想されており(FF金利先物に基づくとその確率は88%)、FF金利先物は2024年に6回の利下げが実施されることを示しています(確率82%)。ただ、このデータはトレーディング(およびヘッジ目的の)ポジションも示しているとの見方もあり、大方は(筆者も含む)急ピッチで大幅な利下げ見通しは極めて楽観的とみています。

 リセッション予想はごく僅かであり、ボトムアップ分析では13.4%という楽観的な増益率予想が示される一方(2023年は8.6%増と予想され、そうなれば利益は過去最高水準になります)、トップダウン(エコノミストによる)分析では2024年の増益率はプラスとなるものの、1桁台にとどまることが示されています。雇用は第1四半期中は減少せず高水準にとどまると見られ(調査結果による)、賃金(および所得)のプラスの影響が経済(および利益)に波及することから、失業率は上昇するものの引き続き許容可能な水準にとどまるでしょう。

 インフレ抑制法(IRA)やCHIPS法による歳出が続く中(コロナ対策として導入された従業員雇用継続税額控除[ERC]プログラムにも依然として資金が使われるでしょう)、政府の赤字支出(「赤字」に「支出」を重ねる言い方は冗長だとの指摘もありますが)は続く見込みで、調達期間は長期(10年で利回りは3.85%)より短期(3ヵ月で利回りは5.38%とより割高)が多くなるととみられます ? そして景気悪化の兆候があれば、追加の政府支出につながることが予想されます(少なくとも選挙までは)。

●2023年の主なデータ

 ○米国10年国債利回りは4月に3.26%で2023年の最低水準を付け、9月に5.02%で最高水準を付け、3.88%で年を終えました(2022年末は3.88%、2021年末は1.51%)。

 ○VIX恐怖指数は12月に11.81で2023年の最低を付け、3月に30.81で最高を付け、12.45で年を終えました(同21.67、同17.22)。

 ○原油価格は5月に1バレル=63.57ドルで2023年の最安値を付け、9月に同95.03ドルで最高値を付け、同71.31ドルで年を終えました(同80.45ドル、同75.40ドル)。

 ○金価格は2月に1トロイオンス=1808ドルで2023年の最安値を付け、12月に同2130ドルで最高値を付け、同2073ドルで年を終えました(同1830ドル、同1902ドル)。

 ○ビットコインは1月に1万6521ドルで2023年の最安値を付け、12月に4万4706ドルで最高値を付け、4万1976ドルで年を終えました(同1万6548ドル、同4万6306ドル)。

 ○S&P500指数は1月に3794で2023年の最安値を付け、12月に4793で最高値を付け、4770で年を終えました(同3939.50、同4766.18)。

 ○ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は3月に3万1430ドルで2023年の最安値を付け、12月に3万7710ドルで終値での過去最高値を更新し、3万7690ドルで年を終えました(同3万3147.25ドル、同3万6338.30ドル)。

※「マグニフィセント・セブンが牽引した2023年 (2)」へ続く

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均