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【市況】S&P500 月例レポート ― 利上げ終了を期待、前年下落分をほぼ埋める (4) ―


●企業業績

 ○現時点で、時価総額の98.3%に相当する490銘柄が2023年第3四半期の決算発表を終えました。そのうちの391銘柄(79.8%)で営業利益が予想を上回り、489銘柄中305銘柄(62.4%)で売上高が予想を上回りました。

  ⇒2023年第3四半期の1株当たり営業利益は、前期比4.5%減、前年同期比4.1%増と予想されます。売上高は前期(過去最高を記録した2023年第2四半期)比1.4%増、前年同期比5.0%増が見込まれ、過去最高を更新する見通しです。

  ⇒2023年第3四半期の営業利益率は、第2四半期の11.87%から低下して11.18%になると予想されます(1993年以降の平均は8.76%、最高は2021年第2四半期の13.54%)。

  ⇒2023年第3四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は13.3%となっています。この割合は、2023年第2四半期は16.3%、2022年第3四半期は21.2%でした。

 ○2023年通年の利益は前年比8.8%増となる見通しで、この予想に基づく2023年の予想株価収益率(PER)は21.2倍となっています。

 ○2024年の利益は同13.5%増が見込まれており、2024年予想PERは18.7倍となっています。

●個別銘柄

 ○娯楽大手ウォルト・ディズニー<DIS>は、ケーブルテレビ大手コムキャスト<CMCSA>から86億1000万ドルで、配信サービス企業Huluの未保有株33%を取得すると発表しました。

 ○ソーシャルメディア銘柄のメタ・プラットフォームズ<META>は、仮想現実ヘッドセットの中国での販売契約について、中国のビデオゲームメーカー、テンセント・ホールディングスと合意したことを明らかにしました。メタはフェイスブック部門が中国で閉鎖されて以来、14年ぶりに中国に戻ることになります。

●注目点

 ○かつて高水準の企業価値(470億ドル)を誇った新興企業で、シェアオフィス事業を展開するウィーワークが破産申請を行いました。

 ○ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、米政府の格付けを「Aaa」に据え置き、見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更しました。

 ○OpenAIは、コミュニケーションにおいて率直さを欠くことを理由に、最高経営責任者(CEO)のサム・アルトマン氏を突然解雇しました。OpenAIの49%を所有するソフトウエア企業のマイクロソフト<MSFT>は、その後、アルトマン氏とOpenAIの元社長兼共同創設者であるグレッグ・ブロックマン氏をマイクロソフのAI研究チームのリーダーに採用し、OpenAIの従業員でアルトマン氏と共に働きたい人なら誰でも雇用すると発表しました。その後、OpenAIの従業員770人のうち700人が、アルトマン氏が復帰せずOpenAIの取締役会メンバーが全員辞任しないかぎり、OpenAIを退社するという書簡に署名しました。

  ⇒数日後、取締役会メンバーが辞任したため、アルトマン氏はOpenAIのCEOに復帰しました。新たな取締役会には、クラウドサービス企業セールスフォース<CRM>の元共同CEOブレット・テイラー氏が会長として加わるほか、質問サイトのクオーラのアダム・ディアンジェロCEO、元財務長官のラリー・サマーズ氏が参加します。

 ○Adobe Analytics(アドビアナリティクス)によれば、ブラックフライデーのオンライン売上高は過去最高の98億ドル、前日の感謝祭当日も過去最高の56億ドル、サイバーマンデーも過去最高の120億ドルと推定されます。感謝祭期間全体の売上高(5日間のオンラインおよび実店舗)は380億ドルと推定されます。また、マスターカード<MA>のデータはオンライン売上が急増したことを示していますが、個人向け金融サービスサイトのバンクレート・ドット・コムによれば、実店舗での購入は低調だったようです。流通系のクレジットカードの平均金利は28.93%、それに対して全クレジットカードの平均金利は21.19%です。

 ○自動車メーカーのゼネラル・モーターズ<GM>は100億ドルの自社株買いプログラムの前倒しを発表し、「68億ドル相当の当社普通株式を、受け渡し完了次第、消却する」としています。この自社株買いにより、同社のEPSの算出に使用される株式数が第4四半期にはわずかに減少し、2024年第1四半期には大幅に減少します。アナリストは株式数の減少によるEPSの増加を見込む必要があります。

●配当金

 ○現金配当は2023年10月に前年同月比9.30%増加した後、2023年11月は同11.48%増となりました。年初来では5.96%の増加となりました。

  ⇒11月の配当支払い額は1株当たり8.82ドルで、2022年11月の7.92ドルから増加、支払総額は739億7000万ドルで、2022年11月の665億2000万ドルから増加しました。

  ⇒2023年11月までの12ヵ月間の配当支払い額は1株当たり70.58ドルで、2022年11月までの12ヵ月間の66.62ドルから増加し、2023年11月までの12ヵ月間の支払総額は5905億3000万ドルで、2022年11月までの12ヵ月間の5624億6000ドルから増加しました。

 ○2023年11月は増配が32件、配当開始が1件、減配が2件、配当停止が0件あったのに対して、2022年11月は増配が38件、配当開始が0件、減配が0件、配当停止が0件でした。

  ⇒年初来では増配が316件、配当開始が9件、減配が25件、配当停止が4件あったのに対して、2022年の11月末までの11ヵ月間では、増配が345件、配当開始が6件、減配が5件で、配当停止はありませんでした。

 ○増配率の中央値は最近の低下から一転して上昇し、11月は7.69%と、10月の5.56%(9月は6.06%)を上回りました。11月の平均増配率は9.41%と、10月の7.49%(同8.00%。いずれも2倍以上になった銘柄を除外しています)から上昇しました。年初来では、増配率の中央値は7.14%(10月末時点は6.99%、9月末時点は7.27%)、平均値は8.81%(同8.74%、同8.87%)となっています。

 ○注目すべき点として、今年は減配と配当停止が29件あり(昨年は5件)、これにより年間配当額は169億ドル分減少しています(対して、増配は325件で、2023年年初来で424億ドル分増加)。配当の減少は銘柄固有の要因によるものですが、エネルギー銘柄がこれら29件のうち12件、また減少額の44%(75億ドル)を占めています。一部の企業は配当方針を四半期の定額配当から変動配当に変更しています(その結果、過去の実績に基づく配当予想を提示)。

 ○娯楽大手のウォルト・ディズニー<DIS>は、2023年度下半期に1株当たり30セントの配当を実施すると発表しました。配当金は2024年1月に支払われます。ディズニーは2019年12月に1株当たり88セントの半期配当を停止していました。

 ○2023年の予想配当支払額の前年比での水準は、3月に5%増に下方修正されました。これは融資の伸び率低下に加えて、企業の需要減少と銀行の資本要件の引き上げの見通しに基づくもので、従来、シリコンバレー銀行による銀行問題の発生以前は、6?7.5%増のレンジ(当時の予想は7%弱)と推定されていました。現在は4%増が予想されています。

 ○2024年の配当に関して、当初予想は景気動向と配当パターンの変化が背景となり、僅かながらもプラス予想となっています。この予想ではFRBによる2024年第3四半期の利下げ開始に加えて、景気の大幅な減速は回避され、政府の財政政策の大きな調整はない(政策とインセンティブの継続を予想)と織り込んでおり、2024年の実際の現金支払額は、現在の筆者の2023年の予想値から4?5%程度増加して、6130億ドルになると予想しています。これにより2024年の現金支払額は、15年連続の増加と13年連続の過去最高の更新が見込まれます。

●インデックス・レビュー

◇S&P 500指数

 S&P500指数は11月に8.92%上昇して4567.80で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス9.13%)。10月は4193.80で終え、2.20%の下落(同マイナス2.10%)、9月は4288.05で月を終え、4.87%の下落(同マイナス4.77%)でした。過去3ヵ月では1.33%の上昇(同プラス1.74%)、年初来では18.97%の上昇(同プラス20.80%)、過去1年では11.95%の上昇(同プラス13.84%)でした。2022年は19.44%の下落で(同マイナス18.11%)、2022年年初から今年の11月30日まででは4.16%下落しています(同マイナス1.08%)。2021年は26.89%の上昇(同プラス28.71%)でした。2022年1月3日の終値での過去最高値からは4.77%の下落(同マイナス1.71%)、コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは34.90%の上昇(同プラス43.46%)でした。

 11月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は10月の1.28%から0.75%に低下し、年初来では1.06%となりました(2022年は1.83%)。11月の出来高は、10月の2%減少の後に4%増加しましたが(営業日数調整後)、前年同月比では17%の減少でした。2023年11月までの過去1年では前年比4%増加しました。

 9月と10月は1セクターのみが上昇したのに対して、11月は11セクター中10セクターが上昇しました。11月のパフォーマンスが最も良かったのは、12.73%上昇した情報技術です(年初来では50.68%の上昇で、指数内で最高、2021年末比では7.12%上昇)。騰落率最下位となったのはエネルギーで、11月は1.65%下落しました(年初来では4.62%下落、2021年末比では51.70%上昇で、同期間の指数内で最高)。

 11月は1%以上変動した日数は21営業日中4日(上昇が4日、下落が0日)でした。10月は1%以上変動した日数は22営業日中8日(上昇が3日、下落が5日)でした。年初来では、1%以上変動した日数は230営業日中60日(上昇が34日、下落が26日)、2%以上変動した日数は2日(上昇が1日、下落が1日)でした。2022年は1%以上変動した日数は122日(上昇が59日、下落が63日)、2%以上変動した日数は46日(上昇が23日、下落が23日)でした。

 11月は6日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動はありませんでした。年初来では、1%以上の変動が111日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が218日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日、4%以上の変動が4日ありました。

 11月は値上がり銘柄数が大幅に増加し、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を大きく上回りました。11月の値上がり銘柄数は441銘柄(平均上昇率は10.86%)で、10月の148銘柄(同3.66%)から増加しました。10%以上上昇した銘柄数は219銘柄(同15.82%)で、10月の7銘柄(同12.60%)から増加し、17銘柄が25%以上上昇しました(10月はゼロ)。一方、10月の値下がり銘柄数は62銘柄(平均下落率は4.13%)と、10月の355銘柄(同7.50%)から減少しました。11月は10%以上下落した銘柄数は2銘柄(同20.41%)で、10月の93銘柄(同15.67%)から減少し、1銘柄が25%以上下落しました(10月は8銘柄)。

 年初来では、値上がり銘柄数が増加し、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回りました。値上がり銘柄数は277銘柄(10末時点の年初来は211銘柄)で、値下がり銘柄数は224銘柄(同290銘柄)でした。10%以上上昇した銘柄数は190銘柄(同137銘柄)、10%以上下落した銘柄数は135銘柄(同189銘柄)でした。104銘柄(同58銘柄)が25%以上上昇し、39銘柄(同72銘柄)が25%以上下落しました。


[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト


※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。

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