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【特集】NY原油が90ドル突破、OECD在庫は年末にかけて減少へ <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 先週、ニューヨーク市場のウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物は節目の1バレル=90ドルを突破した。石油輸出国機構(OPEC)プラスの供給制限や、堅調な需要を背景に供給不足(需要超過)が続いており、世界的な石油在庫は引き締まる傾向にある。サウジアラビアとロシアによる日量130万バレルの自主的な供給制限は年内続く見通し。

●中国・インドの石油需要は堅調

 景気減速が懸念されている中国の需要下振れは見られず、上昇相場に歯止めをかける材料はあまり見当たらない。国際エネルギー機関(IEA)は中国の石油需要について、景気減速の影響を驚くほど受けていないとの認識を示した。

 共同石油統計イニシアチブ(JODI)によると、ゼロコロナ政策が解除された後の中国の石油需要は堅調である。最新の数値は7月までだが、3月以降の需要は過去5年のレンジ上限をほぼ上回って推移している。中国は米国に次ぐ石油の消費大国である。JODIの数値は多少強めに推移する傾向があり、割り引いて眺める必要があるものの、中国経済について過度に不安視する必要はなさそうだ。ただ、中国の輸出入は低調で、景気悪化の可能性は引き続き意識しておくべきだろう。

 世界第3位の石油消費国であるインドの需要も堅調である。JODIによると、今年の石油製品需要には日量500万バレルの節目を概ね上回って推移しており、これまでと同様に拡大傾向にある。世界で最も石油消費が伸びているのはインドであり、日量500万バレル程度の需要が中国や米国に迫っていくならば、産油国が期待するようにインドの伸びしろはかなり大きい。

●米国の需要にも陰りは見られず

 米エネルギー情報局(EIA)の週報で、米石油製品需要の4週間移動平均は日量2094万7000バレルで推移している。夏場の需要期が終わり、日量2100万バレルを上回る水準からやや失速したものの、石油消費は依然として旺盛だ。購買担当者景気指数(PMI)の総合指数が示すように米経済が減速している可能性はあるが、石油製品需要に今のところ陰りは見られない。ただ、石油製品の小売価格は再び上昇しており、経済全体の重しとなっている。

 OPECの月報によると、7月の経済協力開発機構(OECD)加盟国の商業在庫は前月比790万バレル減の27億7900万バレルとなった。商業在庫の取り崩しは3ヵ月連続で、過去5年間の最低水準に接近している。サウジアラビアやロシアが日量130万バレルの自主的な供給制限を年末まで続けることからすれば、商業在庫の減少トレンドはより鮮明となっていくだろう。商業在庫の減少は原油価格の上昇傾向が続くことを示唆する。来年の米大統領選に向けて、バイデン米政権はエネルギー高を放置するのだろうか。米戦略石油備蓄(SPR)の再放出報道の真偽を見定めたい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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