【特集】田部井美彦氏【新年度は強気優勢でスタート、4月相場の行方】(1) <相場観特集>
田部井美彦氏(内藤証券 投資調査部 リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト)
―金融システム懸念緩和とインフレ警戒感後退は本物か―
3日の東京株式市場は、新年度入りということもあって朝方から買いが優勢の展開となり、日経平均株価は2万8000円台前半で終始頑強な値動きを示した。金融システム不安が後退し、インフレに対する警戒感も緩んでいることから、前週末の欧米株市場はほぼ全面高に買われるなど投資家のリスク許容度が高まっている。4月相場で日経平均は上値期待の膨らみやすいところだが、実際はどうなのか。新年度相場の展望と物色の方向性について第一線で活躍する市場関係者2人に話を聞いた。
●「昨年8月高値2万9200円台を視野の展開も」
田部井美彦氏(内藤証券 投資調査部 リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト)
ゴールデンウイーク(GW)を前にした4月相場は、堅調な展開を見込んでいる。今週末7日には米雇用統計の発表があるなど、注目経済指標の結果は関心を集めそうだ。ただ、5月2~3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)まで、まだ少し時間があるため、経済指標の堅調な結果も景気拡大を前向きに評価するといった形で楽観的にとられやすい。5月のFOMCではインフレ懸念が指摘され、その後の株価が調整するといったことも起こるかもしれない。しかし、当面は政策金利のピークアウト期待が高まり年後半に向けて利下げも、といったシナリオが優勢となりそうだ。
米国を中心とする金融不安も、これ以上拡大しない、という見方が強まっている。米連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な資金供給も安心感を呼んでいる。先行き新たに経営が悪化した金融機関が判明するといったこともあるかもしれないが、当面の不安は後退したとみておいて良さそうだ。
こうしたなか、今後1ヵ月程度の日経平均株価は、昨年8月高値2万9200円台を意識する展開も期待できるとみている。今年3月上旬につけた2万8700円台の高値は通過点となることも予想される。日本株はバリュエーション面で割安感があり、金融システムなどの面で心配は少ない点も評価できる。低PBR是正に向けた動きも追い風だ。
個別銘柄では、原油価格が強含むなかINPEX <1605> [東証P]やENEOSホールディングス <5020> [東証P]などが見直されそうだ。両銘柄ともにPBRは0.5倍台の水準にある。また、インバウンド関連では百貨店などに出店しているアパレル関連のユナイテッドアローズ <7606> [東証P]やTOKYO BASE <3415> [東証P]なども注目できる。更に、半導体関連の信越化学工業 <4063> [東証P]やローム <6963> [東証P]などもマークしたい。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース