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【特集】米利上げ長期化観測で軟調の金、地政学リスクが下支え <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
  金の現物相場は17日、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ長期化の見方を受けて軟調となり、昨年12月以来の安値1819ドルをつけた。1月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍化したが、事前予想を上回り、インフレ高止まりに対する懸念が残った。米小売売上高も強い内容となり、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)の見通しは5.25~5.50%に引き上げられた。また、米セントルイス地区連銀のブラード総裁が0.50%利上げの見方を示した。CMEのフェドウォッチでは0.25%利上げが3会合で続くとみられているが、インフレ抑制のため、利上げが加速する可能性もある。

 ユーロ圏の高インフレを受けて欧州中央銀行(ECB)も3月と5月に利上げするとみられている。ただ、利上げペース減速の見方もあり、今後発表される経済指標と景気見通しを確認したい。

 米国に中国のものとみられる気球が侵入し撃墜されたことによる米中関係の悪化や、北朝鮮のミサイル発射、イランがウランの濃縮度を84%に高めたことが伝えられたことは金価格の下支え要因である。

 また、ブリンケン米国務長官は中国がロシアに対して武器供与を検討しているとの懸念を示した。中国は同長官の警告に反発しており、地政学的リスクが高まるようなら金の下支え要因になるとみられる。金ETF(上場投信)に安値拾いの買いが入るかどうかも確認したい。

●JPX金は円安が下支え

 JPX金先限は円安が下支えとなり、7804円で下げ一服となった。日本政府が日銀の黒田総裁の後任に元日銀審議委員で経済学者の植田和男氏を起用するとし、円高に振れる場面も見られたが、米FRBの利上げ長期化の見方を受けて円安に振れた。

 ただ、2022年12月の消費者物価指数が前年同月比4.0%上昇と41年ぶりの上昇率となった。インフレが続くようなら4月会合で長期金利の上限を引き上げ、イールドカーブ・コントロール(YCC)政策を見直すとの見方も出ており、新総裁就任後の金融政策の行方を確認したい。

●金ETFの残高増加も手じまい売り

 世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は、2月21日に919.92トン(昨年12月末917.64トン)に増加した。米FRBの利上げペース減速を受けて921.10トンまで増加したが、利上げ長期化の見方が強まると、投資資金が流出した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは1月24日時点で15万7673枚(前週15万3240枚)に拡大し、昨年6月28日以来の高水準となった。2月に入ると、金価格が急落したが、サイバー攻撃の影響でデータがそろわず、発表が延期された。早ければ2月24日に発表が再開されるとしている。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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