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【特集】プラチナ調整局面もLBMAは強気予想、カギを握る中国経済 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は、1月に昨年3月以来の高値1103ドル台をつけたのち、景気後退懸念などを背景に利食い売りが出て調整局面を迎え、1000ドルの節目を割り込んだ。米連邦準備理事会(FRB)の利上げペース減速見通しや今年のプラチナの供給不足見通しが支援要因となったが、中国経済の減速などを受けて景気後退懸念が出た。

 昨年の中国の国内総生産(GDP)成長率は3.0%と政府目標の5.5%前後を大幅に下回った。新型コロナウイルス規制が影響した。ただ、規制は解除されており、中国経済は第2四半期以降に急速に回復するとみられている。春節明けの上海市場でプラチナの出来高が急増する場面も見られ、中国勢の安値拾いの買い意欲が強いことは下支え要因である。ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)は中国がプラチナを大量に輸入していることを指摘しており、中国経済が回復すれば、プラチナの需給は引き締まるとみられる。

 一方、欧米が利上げを継続していることはプラチナの上値を抑える要因である。2月の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ、4.50~4.75%とした。予想以上の米雇用統計を受けて3月に続いて5月も利上げが継続される見通しであり、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)は5.00~5.25%になるとみられている。

 また、欧州中央銀行(ECB)理事会では政策金利を0.5%ポイント引き上げ、3.0%とした。ECB当局者は5月まで利上げを継続する見通しを示している。1月のユーロ圏の消費者物価指数(HICP)速報値は前年比8.5%上昇となり、前月の9.2%上昇から伸びが鈍化した。3ヵ月連続で伸びが鈍化し、インフレが抑制されつつあるが、目標となる2%を下回るのは来年になるとみられている。欧米の利上げが予想以上に続くようなら、株安に振れ、リスク回避の動きがプラチナの圧迫要因になるとみられる。

●LBMA調査はプラチナ強気

 ロンドン貴金属市場協会(LBMA)の調査によると、今年のプラチナ平均価格は1080.40ドル(昨年960.51ドル)に上昇、パラジウム平均価格は1809.80ドル(同2112.06ドル)に下落すると予想された。自動車部門でパラジウムからプラチナへの代替が進むとみられている。ただ、半導体不足で自動車生産が伸び悩むと、上値を抑える要因となる可能性がある。欧州の水素経済の拡大見通しはプラチナの支援要因であるが、長期の課題である。ウクライナ情勢とエネルギー価格の動向も確認したい。

 一方、上海プラチナの出来高は春節明けの1月30日に804枚、1000ドル割れの2月6日に1886枚に急増し、安値拾いの買い意欲が強い。ただ、中国勢は戻り場面の高値での買いは見送っており、引き続き上海プラチナの動向を確認したい。

●プラチナは投資資金流入も大口投機家は買い越し縮小

 プラチナETF(上場投信)残高は2月6日の米国で32.34トン(12月末33.09トン)、2日の英国で14.35トン(同13.92トン)、3日の南アフリカで10.31トン(同9.62トン)となった。合計で0.37トン増加し、投資資金が流入した。ただ、米国で手じまい動きが出ており、安値拾いの買いが入るかどうかを確認したい。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、1月24日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万0261枚(前週2万3544枚)に縮小した。2021年4月以来の高水準となった1月10日の3万0702枚から手じまい売り、新規売りが出て買い越しを縮小した。プラチナ強気の見方に変わりがなければ1000ドル割れでは買い戻す動きがあるとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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