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【特集】米SPR追加放出取りやめで焦点は原油在庫へ <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 バイデン政権が決定した1億8000万バレルの米石油戦略備蓄(SPR)の放出は一巡した。昨年は主要国の景気悪化見通しや米国のSPRの大規模放出が相場を圧迫したものの、今年は国際エネルギー機関(IEA)加盟国による石油備蓄の放出はなくなりそうだ。

 今年は米国で2つの法律に基づき、合計2600万バレルのSPR放出が9月までに予定されていたが、調査会社エナジー・インテリジェンスの報道によると、この計画は見直されているという。また、昨年の時点で2024~2027会計年度に予定されていた合計1億4000万バレルの放出がすでに取りやめとなっている。今後数年間はSPR放出よりも補充のタイミングに焦点が当てられる可能性が高い。

 米エネルギー情報局(EIA)の週報によると、足元で米原油在庫は増加傾向にあり、2021年6月以来の高水準となっている。昨年末の大寒波で一部の製油所が凍結などの被害を受けたほか、ここ数年間で定期改修が不十分だった製油所が長期のメンテナンスに入ったことから稼働率が低下し、原油在庫が積み増されている。

●昨年は国内の原油需要が堅調、輸出も拡大

 米製油所稼働率が低水準で推移し、目先は原油在庫の増加が続く可能性があるが、目を向けなければならないのは稼働率が回復した後である。昨年は1億8000万バレルの過去最大のSPR放出が行われたにも関わらず、原油在庫の上振れは限定的だった。急激なガソリン小売価格の上昇が話題となった一年だったが、石油製品需要は減退せず、米国内の原油需要が堅調だったことや、米国の原油輸出が上向きであることが原油在庫の増加を妨げた。ロシアのウクライナ侵攻後、ロシア離れによって米国への依存を強める消費国が多く、米原油輸出の4週間移動平均は昨年12月に日量426万4000バレルまで増加し、過去最高水準を塗り替えた。

●米原油在庫の推移を例年以上に重要視

 物価高や金利高を背景に米経済は圧迫されており景気見通しは不透明である。そのため今年も石油需要の悪化見通しが相場を圧迫する可能性はある。主要国のインフレ率は十分に抑制されておらず、金融引き締めの終わりは見えていない。

 ただ、昨年のように世界最大の石油消費国である米国の需要が底堅く、原油輸出が拡大傾向を続けるならば、米国内の石油在庫は急速に減少していくだろう。SPRの追加放出がなく、バイデン政権が備蓄を補充しようとするならば、なおさらである。米原油在庫の推移を確認していくことに例年以上に重きをおくべきだ。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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